びまん性 脱毛症Diffuse Hair Loss |仙台
全体が薄くなる、
「びまん性脱毛症」は、頭全体が同じように薄くなっていく見え方を指す言葉です。「びまん」は、境目をつくらずに広がる、という意味です。
分け目が広がってきた、地肌が透けるようになった。そうした変化を調べていくうちに、この言葉に行き当たった方が多いと思います。診察でそう言われたまま、意味がよく分からずにお帰りになった方もいらっしゃいます。
ただ、この言葉を手がかりに次の一歩を決めようとすると、少し困ったことが起こります。びまん性脱毛症は、ひとつの病気の名前ではありません。同じ見え方をするものが、いくつかあるからです。
何であるかによって、これから起こることも、進め方も変わります。このページでは、その中身が何に分かれるのか、ご自身がどれに近いのかを順にご説明します。
このページの要点
- 「びまん性」は見え方を指す言葉で、病名ではありません。そう言われただけでは、まだ中身は決まっていません
- 女性がこの見え方で受診されたときの主な診断は、4種類に整理されています。女性型脱毛症/休止期脱毛症/びまん性の円形脱毛症/成長期の毛が抜けやすい体質です
- 手がかりになるのは、毛の太さです。細い毛が混じってきたなら女性型脱毛症を、太さが変わらず量だけ増えたなら休止期脱毛を、まず疑います
- 2〜3か月前に心当たりがあるかも、大きな手がかりになります
- 見通しも中身で変わります。休止期脱毛は自然に収まっていく傾向、女性型脱毛症は続けていく治療になります
中身の4種類は2章、見分け方は3章、きっかけは4章、当院での進め方は5章、見通しは6章からお読みいただいても構いません。
先に、3点だけ確かめてください
- 抜けた毛の太さは、以前と変わりませんか
- 2〜3か月前に、体調や生活の変化はありませんでしたか
- 薄くなってきたのは何年もかけてですか。それともこの数か月ですか
この3点で、多くは方向が見えてきます。何を分けているのかは、3章でご説明します。
びまん性脱毛症とは
頭のどこか一部ではなく、頭全体が同じように薄くなっていく状態を指します。境目がはっきりしないのが特徴で、「ここから薄い」と線を引くことができません。
病名ではなく、見え方の呼び名です
円形脱毛症のように「ここが抜けた」と境界を示せるものとは、対になる言葉だとお考えください。びまん性は、その反対で、境目を作らずに広がります。
ここが大切なところです。びまん性脱毛症は、それ自体がひとつの病気を指す名前ではありません。その見え方をするものをまとめて呼んでいる言葉です(参考文献1)。
ですから「びまん性脱毛症ですね」と言われた時点では、まだ絞り込めていません。そこから何が起きているのかを確かめていくことになります。

びまん性は、境目を作らずに広がる見え方を指します。円形脱毛症のように輪郭を示せるものとは、対になる言葉です。
日本語では、少しややこしい使われ方をします
本来、女性型脱毛症もびまん性の脱毛のうちのひとつです。ところが日本語の記事などでは、「びまん性脱毛症」が女性型脱毛症とは別のもののように書かれていることがあります。
そのとき実際に指しているのは、休止期脱毛症であることが多いです。「女性型脱毛症ではないほうの、全体的に抜けるもの」という意味で使われているわけです。
言葉の使われ方が一定していないので、記事によって書いてあることが違って見えます。混乱しやすいのは、そのためです。
日本人女性では、40歳ごろからの変化が中央部に出ます
日本人女性を対象にした研究があります。14歳から68歳までの159名(脱毛のある方46名、ない方または軽い方113名)の毛髪を、密度・伸びる速さ・太さの面から調べたものです(参考文献7)。
それによると、日本人女性に脱毛が現れる場合、40歳ごろから頭の中央部にびまん性に起こる形が多いとされています。毛髪の密度が下がり、太い毛の割合が減っていく、という変化です。
この研究では、脱毛の自覚がない方でも40代以降に毛髪の密度が下がっていくことが観察されています。年齢とともに変わっていくこと自体は、珍しいことではありません。
男性のように、産毛まで縮むわけではありません
薄毛は男性の話として語られることが多いのですが、女性の変化は少し違います。
この研究では、脱毛のある女性に産毛のような毛はほとんど見られませんでした。著者らは、これは男性型脱毛症で知られている変化とは異なると述べています(男性は同じ研究の対象に含まれていません)。
男性のように毛が産毛まで縮んでいくのではなく、太い毛の割合が減っていくのが女性の変化ではないか、というのが著者らの見かたです。
ですから男性向けの説明をそのまま当てはめると、実際より重く受け取ってしまうことがあります。
中身は4種類に分かれます
女性が「全体的に薄くなった」と訴えて受診されたとき、その背景にある診断を4種類に整理した総説があります(参考文献1)。当院でも、この4種類を念頭に確かめていきます。

呼び名の関係を整理した図です。「びまん性脱毛」は見え方を指す言葉で、女性型脱毛症はその中のひとつにあたります。なお①は以前「FAGA」とも呼ばれました。
① 女性型脱毛症(FPHL)
女性の薄毛のご相談で、よくお会いするものです。何年もかけてゆっくりと、髪の一本一本が細くなっていきます。抜ける本数が急に増えるわけではありません。
細くなるのは頭皮の一部ではなく全体ですが、分け目は地肌が見えやすいので、そこで最初に気づきます。生え際の線は、多くの場合そのまま保たれます。
毛穴そのものは失われないため、育て直す余地が残っています。進み具合の見かたや治療の選択肢は、女性の薄毛(女性型脱毛症)のページにまとめています。
② 休止期脱毛症
髪には生え変わりの周期があり、伸び続ける時期のあとに、休む時期が来て抜け落ちます。この休む時期に入る毛が、いちどきに増えてしまうのが休止期脱毛症です。以下では、状態そのものを指すときは「休止期脱毛」と書きます。
きっかけがあってから、2〜3か月ほど遅れて抜けてきます。ご本人にとっては「急に増えた」と感じられますが、体の中では少し前から始まっています。
毛の太さは、保たれます
一本一本は以前と同じ太さのままで、抜ける量だけが増えます。女性型脱毛症とは、ここが決定的に違います。
急に始まるものと、長く続くもの
急に始まって数か月で収まるもの(急性)と、数年にわたって強くなったり弱まったりを繰り返すもの(慢性)とがあります。このページで「慢性の休止期脱毛」と書いているのは、後者のことです。
見通しについて
長く続くほうについては、はっきりしたことが言えます。慢性の休止期脱毛を扱った総説は、「抜けているのであって、失っているのではない」と繰り返し説明する必要があると述べています。完全な脱毛には至らず、長い目で見れば自然に収まっていく傾向がある、というのが同論文の記述です(参考文献3)。
きっかけや抜け毛の本数については、抜け毛の原因のページで詳しくご説明しています。
③ びまん性の円形脱毛症
円形脱毛症は通常、境目のはっきりした円形に抜けます。ただしまれに、境目を作らずに頭全体へ広がる形をとることがあり、そのときは見た目で区別がつきにくくなります。境目のはっきりした円形に抜けている場合については、抜け毛の原因のページで触れています。
④ 成長期の毛が抜けやすい体質
髪が抜けやすく、伸びにくい体質によるものです(医学の言葉では「ルーズアナゲン症候群」といいます)。軽く引くだけで痛みなく抜けてしまう、という形で気づかれます。
お子さんに多いのですが、大人になってから現れることもあり、そのときは休止期脱毛と間違われやすいと報告されています(参考文献9)。診察では、抜けた毛の根元を見て確かめます。
この章の結論
4種類はどれも「全体に薄くなる」という同じ見え方をします。ですから見た目だけでは絞り切れません。毛の太さと、いつからどう変わってきたか。この2点で分けていきます。
実際にご相談が多いのは①と②です。次の章では、この2つの見分けを詳しくご説明します。③と④は見た目が似ていても進み方が違いますので、当てはまりそうだと感じたら診察でお確かめください。
なお抜け毛の原因のページでは、抜け方の広がりと時間から4つに分けています。あちらは抜け方、こちらは診断名で分けたもので、数が同じなのは偶然です。一対一で対応するわけではありませんが、指しているものは重なります。
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自分はどれに近いか
手がかりになるのは、毛の太さです
まず、落ちている毛をご覧ください。女性型脱毛症では、太い毛と細い毛が混ざってきます。全部が均一に細くなるのではなく、太さがばらついてくるのが特徴です。
いっぽう休止期脱毛では、太さは以前のままで、抜ける量だけが増えます。落ちている毛をご覧になって「前と同じ太さの毛が、たくさん抜けている」と感じるなら、こちらに近い形です。
数字で見ると
これには数字の裏づけがあります。頭皮から採った組織で、太い毛と産毛のような細い毛の本数を数え、その比を群ごとに比べた研究です(参考文献2)。
慢性の休止期脱毛では9対1、男性型・女性型脱毛症では1.9対1、脱毛のない対照では7対1でした。休止期脱毛では太い毛の割合が対照と同じかそれ以上に保たれているのに対し、男性型・女性型脱毛症の群では大きく下がっています(この群には男性も含まれています)。
太い毛と、産毛のような細い毛の比を群ごとに比べた図です(数値は参考文献2より)。この研究は男女を含みます。日本人女性だけを見た研究(参考文献7)では産毛のような毛はほとんど見られなかったと報告されており、数字の出かたは違いますが、太い毛の割合が減るという向きは共通しています。対照が7対1と低めに出ているのは22名と人数が少ないためで、休止期脱毛のほうが健康な状態より良い、という意味ではありません。3つの数字を細かく比べるよりも、この向きをご覧ください。
慢性の休止期脱毛は、30〜60歳の女性にみられることが多いとされています。調べられた群の内訳は参考文献2に載せています。
2〜3か月前に、心当たりがあるか
休止期脱毛は、きっかけから遅れて現れます。ですから診察では「いつごろから増えましたか」とうかがい、その2〜3か月前に何があったかを一緒にさかのぼります。
ただし、心当たりが見つからないことも珍しくありません。上の研究でも、きっかけがはっきりする場合としない場合の両方があったと記されています(参考文献2)。
そもそも、休んでいる時期の毛が抜けているという観察だけでは原因は分からない、と明確に述べた総説もあります(参考文献5)。抜け方が同じでも、背景はいくつも考えられるということです。
ですから、思い当たることがないからといって「では女性型脱毛症だ」とはなりません。逆もまた同じです。
進み方の速さ
何年もかけて少しずつなら、女性型脱毛症。数か月のあいだに明らかに増えたのなら、休止期脱毛です。
そして、両方が重なることもあります。もともと分け目が広がってきていた方が、体調を崩した時期に急な抜け毛を重ねる、ということは実際にあります。慢性の休止期脱毛と女性型脱毛症はしばしば重なる、という指摘は文献にもあります(参考文献6)。
重なっているときは、急な抜け毛が落ち着いてから見たほうが、もとの進み具合がはっきりします。急な波が乗っているあいだは、どちらの分がどれだけなのかが見えにくいためです。
男性でも起こります
びまん性の脱毛は、女性に限った話ではありません。男性でも、お薬や大きな体調の変化をきっかけに、頭全体から抜けてくることがあります。毛の太さを調べた研究(参考文献2)にも、男性が含まれています。
ただし男性の場合、頭全体が薄くなったように見えても、男性型脱毛症が頭頂部から広がってきている形であることが少なくありません。見分けの考え方は薄毛治療のページにまとめています。
この章の結論
- 細い毛が混じり、何年もかけてゆっくりなら、女性型脱毛症を考えます(→女性の薄毛のページ)
- 太さは変わらず、数か月で急に増えたなら、休止期脱毛を考えます(→抜け毛の原因のページ)
- この2種類は重なることがあります。どちらかに決めきらないことも大切です
- 男性でも起こりますが、その場合は男性型脱毛症が広がってきている形のことが少なくありません
きっかけには、何があるか

いま抜けている毛は、2〜3か月前に休む時期へ入ったものです。注がれたのはずいぶん前で、湯気が立っているのは今、という形になります。
原因(きっかけ)として挙げられるものは、ある程度決まっています。
- 出産のあと
- 急な体重の減少、極端な食事制限
- 高い熱の出る病気、大きな手術
- 新しく飲み始めたお薬
- 甲状腺の働きの変化
- 強いストレス、大きな生活の変化
お薬が思い当たる場合は、自己判断で中止せず、処方した先生にご相談ください。甲状腺のはたらきの変化は、だるさや体重の変化をともなうことがあります。
このうち出産後の抜け毛は、女性ではとくに多いものです。仕組みとしては休止期脱毛の仲間で、時期や見通しには一定の傾向があります。抜け毛の原因のページと女性の薄毛のページで、それぞれ詳しくご説明しています。
「鉄が足りないから」と言われることについて
抜け毛の原因として、鉄不足はよく挙げられます。ご自身でそう考えて来られる方も、少なくありません。
対照群を置いて比べた研究では
ただ、鉄を補えば抜け毛が止まる、とは言えません。米国の大学病院で、女性型脱毛症または慢性の休止期脱毛のある女性381名と、脱毛のない女性76名の鉄の状態を比べた研究があります(参考文献4)。
体に貯えられている鉄の量を示すフェリチンという値が15(ng/mL)以下を鉄欠乏としたとき、閉経前ではその割合が女性型脱毛症で12.4%、慢性の休止期脱毛で12.1%、脱毛のない対照で29.8%でした。
閉経後は数値の並びが変わりますが、いずれの比較でも統計学的な差は認められず、著者らは脱毛のある群で鉄欠乏が増えているとは言えないと結論しています。
ただし、この研究の対象は白人女性です。日本人にそのまま当てはめるのは慎重であるべきですし、著者自身も「鉄を補ったときに脱毛がどうなるかは分かっていない」と限界を書いています。
では、鉄は関係ないのか
「鉄は関係ありません」と申し上げているのではありません。貧血そのものは、見つかれば治療が必要です。申し上げたいのは、「抜け毛の原因は鉄不足」と決めてかかると、ほかの手がかりを見落とすということです。
当院では、薄毛の診療で採血を行っておりません。当院は皮膚と毛髪を診る施設ですので、鉄や甲状腺のはたらきなど全身に関わることを調べる必要がある場合には、内科・内分泌の外来をお勧めしています。
この章の結論
きっかけは決まったものが多く、たいてい2〜3か月前にさかのぼります。ただし見つからないことも珍しくありません。ひとつの原因に決めてかかるより、毛の太さと経過を合わせて考えるほうが確かです。
当院の診かた
「びまん性脱毛」という言葉は、調べてこられる方もいらっしゃいますが、当院では診察のなかで、こちらからお伝えすることのほうが多いです。「頭全体が薄くなってきていますね」という見え方の説明として使い、そのうえで中身を一緒に確かめていきます。
まずうかがうのは、いつからと、その前に何があったか
最初に確かめるのは、経過です。いつごろから変わってきたか。その2〜3か月前に、出産や体調の変化がなかったか。どのくらいの期間で今の状態になったか。
拡大した画面を見るのは、そのあとです。順番が逆ではないか、と思われるかもしれません。ただ画面は、その瞬間の姿しか写しません。どういう速さでそこに至ったかは、うかがわないと分からないのです。

一枚の絵からは、回っているのか止まっているのかが分かりません。拡大した画面も同じで、その瞬間の姿しか写しません。
画面で分かること、分からないこと
拡大して毛の太さのばらつきを見る方法(トリコスコピー)は、女性型脱毛症の手がかりになります。ただし、これだけで決めきれるものではありません。
毛の太さに20%以上のばらつきがあることを基準にすると、まだ見た目では薄毛が分からない段階の女性型脱毛症に対して、感度75%・特異度61.5%だったと報告されています(参考文献8)。そしてこの特異度は、同じように生検で確かめた慢性の休止期脱毛との見分けについての数字です。
つまりばらつきが無ければ女性型脱毛症ではない可能性が高い、とは言えます。けれどもばらつきがあるから女性型脱毛症だ、とまでは決めきれません。同論文の著者も、そのように述べています。
生検で数えた数字とは、別のものです
3章でご紹介した9対1・1.9対1という比も、頭皮から組織を採って数えた数字で、画面で見えるものではありません。画面だけで見分けようとすると、そこまでの精度は出ません。
ですから、うかがった経過と画面を合わせて考えます。
実際に多いのは
「全体的に薄くなってきた」というご相談で画面を見ると、明らかに毛が細くなっている方が多いという印象です。女性型脱毛症を疑う所見で、ここにうかがった経過を重ねて判断します。
まったく逆のこともあります。もともと毛量が多く、その結果として落ちている毛も多くなっている方です。髪の本数が多ければ、生え変わりで抜ける本数も当然多くなります。
こういう方に、言葉で「大丈夫ですよ」と申し上げても、なかなか安心はできないと思います。ですので、こういうときこそ拡大した画面をご一緒に見ていただきます。毛穴あたりの本数も、毛の太さも、ちゃんとありますよ、と。
一度見せていただきたいとき
- 生え際そのものが下がってきた。とくに眉毛や体毛も薄くなってきた
- 半年以上、抜ける勢いが変わらない
- 年々、戻りが悪くなっている
- 境目のはっきりした円形に抜けているところがある(保険診療の対象になることがあります。当院は自由診療のみですので、その場合は保険医療機関をご案内します)
いずれも、市販の育毛剤を続ける前に、一度ご相談いただきたい形です。何を手がかりに、どこまで続けて、どこで切り替えるか。その見当をつけるところからご一緒します。
この章の結論
経過を先に、画面はあとです。画面だけでは決めません。
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治療の考え方
中身によって、進め方は変わります。
きっかけが取り除かれれば、戻っていきます
休止期脱毛では、きっかけが過ぎれば毛は戻っていきます。抜けているのであって、失っているのではありません。
長く続くタイプについても、完全な脱毛には至らず、長い目で見れば自然に収まっていく傾向があるとされています(参考文献3)。
ただし、戻ってくるまでには時間がかかります。髪は1か月に1センチほどしか伸びませんので、抜けた分が目に見える長さになるには、それなりの月数が要ります。抜けなくなった時点と、見た目が戻る時点は同じではありません。
診察で見えるのは、その瞬間だけです
診察でお会いできるのは、その一日です。そこから先がどう動くかは、その場では分かりません。ですので当院では、経過を見るというよりも、予防的に内服薬や外用剤をお使いいただくことを考えます。
分かれ目は、心当たりと勢いです。産後のようにきっかけがはっきりしていて、勢いも落ち着いてきているなら、戻っていくのを待ちます。心当たりがない場合や、半年たっても勢いが変わらない場合には、待たずに始めることを考えます。
始めたら、半年から1年は続けて見ます
内服薬や外用剤を始めていただいた場合、半年以上、できれば1年ほどは続けて様子を見ることをお勧めしています。

短針が動いているところは、見ていても分かりません。髪が伸びるのも1か月に1センチほどで、抜けなくなった時点と見た目が戻る時点は、同じではありません。
理由があります。とくに女性の場合、ある程度の毛量まで戻ってこないと、ご本人の実感としては変化を感じにくいのです。3か月で「変わらない」と判断してしまうと、そこで止まってしまいます。
戻らないときは、別のことを考えます
収まったはずなのに元の量に戻らない、あるいは年々戻りが悪くなっている。そういうときは、女性型脱毛症が背景にあることを考えます。こちらは自然に元へ戻るものではなく、続けていく治療になります。
治療の選択肢と進め方は女性の薄毛(女性型脱毛症)のページに、当院で行っている治療の全体像は薄毛治療のページにまとめています。
この章の結論
思い当たるきっかけがあって、勢いも落ち着いてきているなら、数か月ようすを見ていただいて構いません。
心当たりがない。あるいは半年たっても勢いが変わらない。そのときは、待たずに一度お見せください。
始めた場合は、半年から1年です。ここだけは、先にお伝えしておきます。
よくあるご質問
診察で実際によくいただくご質問をまとめました。ここに載っていないことも、どうぞ遠慮なくお尋ねください。
言葉について
「びまん性脱毛症」と言われました。女性型脱毛症とは違うのですか?
別のものとは限りません。「びまん性」は病名ではなく、境目がはっきりせず全体に薄くなるという見え方を指す言葉です。女性型脱毛症も、そのびまん性の脱毛のうちのひとつにあたります。
ただし日本語では、「女性型脱毛症ではないほうの、全体的に抜けるもの」という意味で使われることがあり、そのとき指しているのは休止期脱毛症であることが多いです。どちらの意味で言われたのかは、言葉だけでは決まりません。
確かめるには、毛の太さと、いつからどう変わってきたかを見ます。
見通しについて
びまん性脱毛症は治りますか?
中身によって答えが変わります。びまん性脱毛症という一つの病気があるわけではないので、まとめてお答えすることができません。
休止期脱毛であれば、きっかけが過ぎれば戻っていくことが多いとされています。長く続くタイプについても、完全な脱毛には至らず、長い目で見れば自然に収まっていく傾向があるとされています(参考文献3)。
いっぽう女性型脱毛症であれば、自然に元へ戻るものではありません。続けていく治療になります。ただし毛穴そのものは失われませんので、育て直す余地は残っています。
ですから最初にすることは、どちらに近いかを確かめることです。
初期にはどんなふうに気づくことが多いですか?
気づき方は2通りに分かれます。
ひとつは抜け毛の量です。排水口やブラシに残る毛が急に増えた、というかたちで気づきます。休止期脱毛ではこちらが多く、抜けた毛の太さは以前と変わりません。
もうひとつは見た目です。分け目が広がってきた、地肌が透けるようになった、髪をまとめたときに束が細くなった。女性型脱毛症ではこちらが先に来ることが多く、抜け毛が急に増えるわけではありません。
どちらで気づいたかを、診察でも必ずうかがいます。
なりやすいのは、どういう方ですか?
30〜60歳の女性に多い、という数字はあります。ただし何を指すかで変わります。
女性型脱毛症は、年齢とともにご相談が増えます。日本人女性を対象にした研究では、脱毛が現れる場合、40歳ごろから頭の中央部にびまん性に起こる形が多いと報告されています(参考文献7)。
慢性の休止期脱毛は、30〜60歳の女性にみられることが多いとされています(参考文献2)。急に始まるタイプは、出産後・急な減量・高熱の出る病気・新しいお薬などのあとに起こります。
なお、鉄不足がなりやすさに関わるとはよく言われますが、白人女性を対象に正面から比べた研究では、脱毛のある群で鉄欠乏が増えているとは言えないという結果でした(参考文献4)。
治療と受診について
どんな治療法がありますか?
休止期脱毛なら、まず待つことがあります。
休止期脱毛で、きっかけがはっきりしていて勢いも落ち着いてきているなら、戻っていくのを待ちます。
ただし、診察でお会いできるのはその一日です。心当たりがない場合や、半年たっても勢いが変わらない場合には、待たずに内服薬や外用剤をお使いいただくことを考えます。
女性型脱毛症では、進み具合に応じて治療を組み合わせます。内容は女性の薄毛のページにまとめています。
なお当院では、薄毛の診療で採血を行っておりません。全身に関わることが背景として考えられる場合には、該当する診療科の受診をお勧めしています。
男性でも、びまん性の脱毛になりますか?
なります。お薬や大きな体調の変化をきっかけに、男性でも頭全体から抜けてくることがあります。
ただし男性の場合、頭全体が薄くなったように見えても、男性型脱毛症が頭頂部から広がってきている形であることが少なくありません。生え際の後退を伴うかどうかが、ひとつの手がかりになります。
男性の薄毛については薄毛治療のページをご覧ください。
何科を受診すればよいですか?
髪と頭皮は皮膚の一部ですので、皮膚科または美容皮膚科が窓口になります。当院は美容皮膚科として、頭皮を拡大して確かめたうえで進め方をご提案しています。
ただし、甲状腺の働きなど全身に関わることが背景として考えられる場合には、内分泌の外来など該当する診療科の受診をお勧めしています。
参考文献
このページの説明は、当院での経験だけでなく、国内外の研究をもとにしています。根拠にした論文を下にまとめました。タイトルをタップすると、どんな研究なのか、このページのどこを支えているのかをご覧いただけます。
用語と、どう位置づけられるか
1女性のびまん性・非瘢痕性の脱毛にどう向き合うか
要約:
脱毛は伝統的に、瘢痕を伴うかどうかと、広がって起こるか一部に限られるかで分類されてきました。本論文は、そのうち「女性が、広がるかたちの、瘢痕を伴わない脱毛を訴えて受診したとき」という、日常でよく出会う場面を取り上げた総説です。
著者らは、この訴えの背景にある診断を4種類に整理しています。①女性型脱毛症 ②急性および慢性の休止期脱毛症 ③びまん性の円形脱毛症 ④成長期の毛が抜けやすくなる体質によるもの。そのうえで、問診・診察・必要な検査の進め方を示しています。
本ページでは、「びまん性は見え方を指す言葉であって病名ではない」という記述と、2章の4種類の分け方の根拠として参照しています。
毛の太さで見分ける
2慢性休止期脱毛症 ── 中年女性における頭髪の抜け毛の増加
要約:
原因のはっきりしない、頭全体のびまん性の薄毛を訴えた355名(女性346名・男性9名)を慢性休止期脱毛症として、頭皮から4mmの組織を採って調べた研究です。比較のため、男性型・女性型脱毛症412名(男性193名・女性219名)と、脱毛のない対照22名(男性13名・女性9名)にも同じ検査が行われました。
組織を水平に切って数えたところ、太い毛と産毛のような毛の比は、慢性休止期脱毛症で9対1、男性型・女性型脱毛症で1.9対1、対照で7対1でした。慢性休止期脱毛症は30〜60歳の女性にみられることが多く、急に始まって長く変動しながら続くこと、その点で急性のものとも男性型・女性型脱毛症とも区別できることが述べられています。
本ページでは、3章の「休止期脱毛では毛の太さが保たれ、女性型脱毛症では細い毛が混じる」「きっかけがはっきりする場合としない場合がある」という記述、およびFAQ「なりやすいのは」の根拠として参照しています。調べられた群には男性も含まれており、女性だけを対象にした研究ではありません。
見通しについて
3慢性休止期脱毛症(総説)
要約:
頭全体に広がる抜け毛で、はっきりした原因が見つからないものについての総説です。30〜60歳の女性に多く、それまでは毛量が十分にあった方に、急に始まることが多いとされています。初期は抜ける量が多く、手にごっそり残ることもあると書かれています。
著者は、「抜けているのであって、実際に髪を失っているのではない」「完全な脱毛には至らない」と繰り返し説明することの必要性を強調しています。また、長い目で見れば自然に収まっていく傾向があるとも述べています。
本ページでは、2章と6章、およびFAQの「治りますか」の見通しについての根拠として参照しています。
通説を確かめる
4女性型脱毛症・慢性休止期脱毛症・対照群における鉄欠乏
要約:
鉄不足が女性の脱毛に関わるという説を、対照群を置いて確かめた研究です。デューク大学の毛髪外来を受診した白人女性381名(女性型脱毛症または慢性休止期脱毛症)と、脱毛のない白人女性76名で、フェリチンとヘモグロビンを比べています。
フェリチン15以下を鉄欠乏とすると、閉経前では女性型脱毛症12.4%・慢性休止期脱毛症12.1%・対照29.8%。閉経後では1.7%・10.5%・6.9%でした。著者らは、脱毛のある群で鉄欠乏が統計学的に増えているとは言えないと結論しています。
本ページでは、4章の「原因を鉄不足と決めてかからない」という記述、およびFAQ「なりやすいのは」の根拠として参照しています。対象は白人女性であり、日本人にそのまま当てはめるには注意が要ります。著者自身も、鉄を補正した場合に脱毛がどうなるかは分かっていないと限界を明記しています。
原因の特定は簡単ではない
5休止期脱毛(総説)
要約:
休止期脱毛という用語の成り立ちから説き起こした総説です。毛包は原因が何であれ似た反応をする、つまり伸び続ける時期が早く終わって休む時期へ移る、という仮説が紹介されています。
そこから著者らは、「休止期の毛が抜けているという観察だけでは、原因は分からない」と述べています。原因を突き止めるには、きっかけを探る問診と、必要に応じた検査が要るとしています。
本ページでは、3章の「心当たりが見つからないことも珍しくない」「抜け方が同じでも背景はいくつも考えられる」という記述の根拠として参照しています。
重なって起こること
6休止期脱毛(総説)
要約:
急性および慢性の休止期脱毛を、臨床像と組織像の両面から整理した総説です。冒頭で著者は、抜け毛を訴えて受診する方の多くは、男性型・女性型脱毛症の診断には当てはまらないと述べています。
また、慢性の休止期脱毛は男性型・女性型脱毛症としばしば重なるため、これを区別して認識することが臨床上きわめて重要だとしています。
本ページでは、3章の「両方が重なることがある」という記述の根拠として参照しています。
日本人女性のデータ
7加齢および脱毛の進行にともなう日本人女性の毛髪の特徴
要約:
14〜68歳の日本人女性159名(脱毛のある方46名、ない方または軽い方113名)を対象に、毛髪の密度・伸びる速さ・太さをフォトトリコグラムで、毛穴あたりの本数を頭皮画像の解析で調べた研究です。日本人女性を対象にした毛髪の研究は数が少なく、その中で基礎的なデータを示したものにあたります。
日本人女性の脱毛は、40歳ごろから頭の中央部にびまん性に起こる形が多いとされています。40代以降に毛髪密度が下がり、その内訳は1本しか生えていない毛穴が増え、3本以上の毛穴が減るという形でした。
とりわけ重要なのは、脱毛のある女性に産毛様の毛がほとんど見られなかったという点です。著者らは、これは男性型脱毛症で知られている変化とは異なるとしたうえで、女性の薄毛の主な原因は毛髪密度と太い毛の割合の低下であって、産毛様の毛の増加ではないのではないかと述べています。男性はこの研究の対象に含まれていませんので、同一研究内で男女を比べたものではありません。
本ページでは、1章の「日本人女性では、脱毛が現れる場合40歳ごろから中央部にびまん性に起こる」「男性のように産毛まで縮むのではない」という記述、および3章の図のキャプション、FAQ「なりやすいのは」の根拠として参照しています。
画面で見分けることの限界
8トリコスコピーは早期の女性型脱毛症の診断に信頼できる手段か
要約:
見た目には薄毛が分からない段階の女性型脱毛症を、拡大した画面だけで診断できるかを調べた研究です。インドの単一施設で、半年以上抜け毛が続いているものの分け目の広がりが目立たない女性35名に頭皮の生検を行い、20名が女性型脱毛症、13名が慢性休止期脱毛症、2名が判定不能と診断されました。あわせて脱毛のない対照63名と、分け目の広がりが分かる段階の女性29名(生検は行われていません)を比べています。症例の平均年齢は約29歳です。
毛の太さに20%以上のばらつきがあることを基準としたとき、生検で確定した早期例の75%にばらつきが認められ、感度は75%、特異度は61.5%でした。この特異度は、同じ生検を受けた慢性休止期脱毛症13名との見分けについての数字です。著者らは、陰性であれば病気がない可能性が高いと言えるが、陽性であっても病気があるとは限らないと述べています。
本ページでは、5章の「画面で分かること、分からないこと」の根拠として参照しています。
成長期の毛が抜けやすい体質について
9成長期の毛が抜けやすい体質(ルーズアナゲン症候群)
要約:
成長期の毛が抜けやすい状態について、大学病院で診断された19名(お子さん14名・成人5名、生後8か月から47歳)の経過を追った報告です。毛を引いて調べると、根元の鞘のない成長期の毛が80〜100%を占めるという共通の所見がありました。
著者らは、この状態は小児期にだけ起こるものではなく、後年に現れることもあると述べています。成人で発症したものは決して例外的とは言えず、休止期脱毛と誤診されやすいという指摘もあります。
本ページでは、2章④の「大人になってから現れることもあり、そのときは休止期脱毛と間違われやすい」という記述の根拠として参照しています。
なお当院の治療はすべて自由診療(保険適用外)で、保険診療は行っておりません。円形脱毛症のように保険適用となる脱毛症もありますので、保険での治療をご希望の場合は、保険診療に対応している医療機関の受診をお勧めしています。
薄毛治療の内容・費用・リスク・副作用・禁忌については、薄毛治療のページにまとめています。
未承認医薬品等に関する情報(国内の承認医薬品の有無・諸外国における安全性情報など)も、同じページでご案内しています。
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監修者情報(医師紹介)

監修医師:佐藤 雅樹 (さとう まさき)
ソララクリニック 院長
専門分野:美容皮膚科
2000年 順天堂大学医学部卒。順天堂大学医学部形成外科入局。 大学医学部付属病院等を経て、都内美容皮膚科クリニックにてレーザー治療の研鑽を積む。2011年3月 ソララクリニック開院 院長就任。2022年 医療法人 松柴会 理事長就任。日本美容皮膚科学会 日本形成外科学会 日本抗加齢医学会 日本レーザー医学会 点滴療法研究会 日本医療毛髪再生研究会他所属。
様々な医療レーザー機器に精通し、2011年ルビーフラクショナル搭載機器を日本初導入。各種エネルギーベースの医療機器を併用する複合治療に積極的に取り組む.
※当院の治療はすべて自由診療(保険適用外)です。標準的な費用は各ページの料金表または料金表ページをご覧ください。治療に伴うリスク・副作用は診察時にもご説明します。
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