女性の薄毛(女性型脱毛症)Female Pattern Hair Loss |仙台

分け目が広がる、地肌が透ける

「頭頂部が薄くなってきた気がします」。女性の薄毛のご相談で、多くうかがう言い方です。

ところが実際に頭皮を拡大して見ると、少し違うことが起きています。頭頂部だけが減っているのではなく、髪全体が細くなってきていて、その結果として分け目から地肌が見えやすくなっている。そういう方が多いのです。

このページでは、女性の薄毛で最も多い女性型脱毛症(FPHL)について、どういう変化なのか、なぜ起こるのか、そして何から始めればよいのかを順にご説明します。

このページの要点

  • 女性の薄毛で最も多いのが女性型脱毛症(FPHL)
  • 本数が減るより先に、一本一本が細くなる
  • 細くなるのは頭皮全体。分け目は地肌が見えやすいので、そこで最初に気づく
  • 生え際は多くの場合そのまま。男性の薄毛とはここが違う
  • 毛穴は失われない。だから育て直す余地が残っている

自分がどの段階かを知りたい方は3章、治療の選択肢は5章からお読みいただいても構いません。

1. 女性型脱毛症(FPHL)とは

髪が細くなって、分け目から見えてくる

女性の薄毛で最も多いのが、女性型脱毛症です。英語の頭文字をとってFPHLとも呼ばれます。

抜けるのではなく、細くなる

この脱毛で起きているのは、髪の一本一本が細くなっていくことです。抜ける本数が急に増えるわけではありません。

髪には生え変わりの周期があります。伸び続ける時期があり、成長が止まり、抜け落ちてまた生えてくる。女性型脱毛症では、この伸び続ける時期が少しずつ短くなり、太く育ちきる前に生え変わる毛が増えていきます。

生え変わりの周期を2本の帯で比べた図。女性型脱毛症では成長期が短くなり、太く育ちきる前に生え変わるが、長さは保たれる

生え変わりの周期を比べた模式図です。女性では、細くなっても長さは保たれることが多く、男性の薄毛のような産毛状の毛にはなりにくいと報告されています。期間の長さは考え方を示すためのもので、実際には個人差があります。

ただし、細くなっても長さは保たれることが多いのが女性の特徴です。男性の薄毛では産毛のような短い毛に変わっていきますが、女性ではそこまで進むことは多くありません。

細いけれども、それなりに伸びている毛という形になります。これも気づきにくさにつながっています。

本数がそれほど変わっていなくても、細い毛の割合が増えれば全体としては薄く見えます。髪を結んだときの毛束が細くなった、というご相談は、この変化を捉えておられることが多いです。

細くなるのは頭皮全体。ただし程度に差があります

細くなるのは、分け目のあたりだけではありません。女性型脱毛症の方261名と脱毛のない108名を比べた研究では、毛の密度や太さの低下が頭皮の全領域で観察されました(参考文献12)。

後頭部から組織を採って調べた別の研究でも、女性型脱毛症の40名中10名に後頭部の所見が認められています(参考文献15)。

ただし程度は一様ではなく、頭頂部で強く出ます。同じ研究で、頭頂部の毛の密度と太い毛の割合が、進み具合を最もよく表していました。

そこに、分け目は地肌が見えやすい場所だという事情が重なります。同じ変化でも、そこで最初に気づかれる。「頭頂部が薄くなってきた」という感じ方になるのは、このためです。

毛穴そのものは、失われません

女性型脱毛症では、毛穴がなくなるわけではありません。毛が細くなっているだけで、毛穴は残っています。

日本人女性159名を調べた研究でも、女性の薄毛では男性型のような産毛様の毛はほとんど増えておらず、変化の主体は毛の密度と太い毛の割合の低下でした(参考文献17)。軟毛にまで縮んでしまうところまでは進んでいないということになります。

毛穴が残っていれば、そこから生えてくる毛の育ち方が変わる余地があります。毛穴が瘢痕になって消えてしまう種類の脱毛症とは、ここが決定的に違います。

男性の薄毛との違い

男性型では生え際がM字に後退していきますが、女性型で生え際が後退することは多くありません参考文献3参考文献2)。前から見ると以前と変わらず、分け目を見ると広がっている、という形になります。

これが気づきにくさにつながっています。分け目は、自分では上から見られない場所です。

そして、周りの方もなかなか言いません。美容室でもはっきり指摘されることはまずないと思いますし、ご家族でも言いにくいものです。

ご主人やパートナーの方に言われて初めて気づいた、というお話をときどきうかがう程度で、多くの方はご自分で気づくまでに時間がかかります。

進み方もゆるやかです。何年もかけて少しずつ変わっていきます。数か月で急に抜けた、という場合は別のことを考えます(4章)。

呼び名がいくつもあります

調べていると、いくつもの言葉に行き当たると思います。ここで整理しておきます。

「びまん性脱毛」は病名ではありません

びまん性脱毛は、境目がはっきりせず広がって薄くなる、という見え方を指す言葉です。病名ではありません。この見え方をするものは複数あり、女性型脱毛症はそのうちの代表です(参考文献1)。何がどう分かれるのかはびまん性脱毛症のページにまとめました。女性型脱毛症と間違えやすいものは4章でも取り上げます。

FAGAとFPHLは、同じものです

FAGAは、女性型脱毛症の古い呼び名です。Female AndroGenetic Alopecia の略で、「アンドロゲン(男性ホルモン)による」という意味が名前に入っています。

ところが女性では、アンドロゲンの関与がはっきりしない方も少なくありません。皮膚科と内分泌の合同委員会の報告は、androgenetic alopecia という呼び方を避けてFPHLを使うべきだとしています(参考文献2)。

日本皮膚科学会のガイドラインも2017年版で名称を改めました(参考文献4)。

ですから、FAGAとFPHLは同じものを指しています。ただし呼び名が変わっただけではなく、指す範囲がわずかに広がりました。

FAGAはホルモンの関与を前提にした名前ですが、FPHLは前提にしません。文献によって別のものとして書き分けられていることがあるのは、このためです。

見るところ FAGA(旧称) FPHL(現在の呼び名)
日本語の呼び名 女性男性型脱毛症 女性型脱毛症
もとの英語 Female AndroGenetic Alopecia Female Pattern Hair Loss
名前が指しているもの アンドロゲンによる、という原因 女性に特有の広がり方、という
アンドロゲンの関与 前提にしている 前提にしない
指す範囲 ホルモンの関与が考えられるもの それを含み、わずかに広い
いまの扱い 日本ではいまも広く使われている 学術的にはこちらが使われる

名前の付け方が「原因」から「形」へ変わった、ということです。指しているのは同じ状態で、薄くなる場所も、進み方も、治療の考え方も変わりません。なお、産後の抜け毛のように休んでいる時期の毛がまとめて抜けるものは、FPHLの中に含まれるのではなく、別の診断として並びます(4章)。

2. なぜ起こるのか

加齢で、髪を作る力が落ちていく

年齢を重ねると、髪を作る力そのものが落ちていきます。毛を作る細胞の働きが弱まり、一本を太く長く育てきる前に生え変わりの周期が来てしまう。程度の差はあっても、この変化はどなたにも起こります。

ですから、年齢とともに薄毛が進むこと自体は止められません。20歳以上の男女5,000人へ郵送調査を行い、396人が実際に診察を受けた地域住民の調査では、前のほうの薄毛は年齢とともに増え、80歳以上では女性の57%に認められています(参考文献5)。

大事なのは、そのうえでどこまで保てるかです。進み方をゆるやかにすることはできますし、いま生えている毛を育てきる余地も残っています。ご一緒に考えるのは、そこです。

更年期のころ

閉経の前後は、ご相談が増える時期です。女性ホルモンの環境が変わることと、加齢による変化がちょうど重なってくることの両方によると考えられています。実際、閉経後の女性では、伸び続けている時期の毛の割合が減ることが報告されています(参考文献16)。

50〜65歳の閉経後の女性178名を、6方向からの標準化した写真と頭皮の拡大観察で評価した研究では、女性型脱毛症が52.2%に認められました(参考文献6)。

ただ、この研究で目を引くのは重症度の内訳のほうです。Ludwig分類で最も軽い段階が73.2%を占めていました。言い換えると、閉経後に女性型脱毛症のある方の7割強は、まだ軽い段階にいるということになります。

ここが手を打ちやすいところだと考えています。進んでからでは回復に時間も労力もかかりますが、軽い段階であれば、いまの状態を保つほうへ持っていきやすくなります。

産後の抜け毛は、少し性質が違います

出産のあとの抜け毛は、ここまでの話とは起きていることが違います。

何が起きているのか

妊娠中は、エストロゲンなどの女性ホルモンが多く分泌されます。この状態では、本来なら休みに入るはずの毛が抜けにくくなり、伸び続ける時期にとどまりやすくなると考えられています。

出産を境に、女性ホルモンは一気に元の値へ戻ります。すると、とどまっていた毛がまとめて休みに入ってしまう。休みに入った毛が抜け落ちるまでには3か月ほどかかりますので、産後3〜4か月ごろから抜け毛が増え、多くは半年から1年ほどで落ち着いていきます。

妊娠中から産後1年までの女性ホルモンと抜け毛の量の推移。産後3〜4か月ごろから抜け毛が増え、半年から1年で落ち着く

産後の抜け毛の経過を示した模式図です。時期や量の変わり方には個人差があります。

つまり、一時的に生え変わりの周期がそろってしまうことで起こる現象です。髪が細くなっていく女性型脱毛症とは、別のことが起きています。

とはいえ、ご相談は多くいただきます。日本の2施設で出産した女性331名に、産後10〜18か月の時点で回答していただいた研究では、抜け毛が多かった方ほど不安が強いという関連が示されています(参考文献7)。

戻ってこないときは

見ておきたいのは、戻ってこないときです。産後1年を過ぎても抜け毛が続く、分け目の広がり方が産前と明らかに違う。そういうときは、産後の一時的な変化とは別のことが起きている可能性があります。

妊娠中の体の変化が想定どおりに戻らない場合は背景を考えるべきだ、とする総説もあります(参考文献9)。一度、頭皮を見せていただければと思います。

3. いま、どこまで進んでいるか

ここからは、ご自身の状態がどのあたりにあるのかの見方です。見るところは2つあります。どこまで進んでいるか(程度)と、どんな形で広がっているか(形)です。

進み具合をはかる物差し(Ludwig分類)

女性型脱毛症の進み具合は、Ludwig分類という物差しで3段階に分けて表します(参考文献11)。分け目を中心に、地肌がどこまで見えるようになっているかで区切ります。

  • I度:分け目のあたりの毛が薄くなってくる段階
  • II度:同じ範囲の薄さがはっきりしてくる段階
  • III度:その範囲の地肌が広く見えるようになる段階

頭部を上から見た模式図。Ludwig分類のI度・II度・III度が並び、分け目を中心とした薄い範囲が段階的に広がる。いずれの段階でも生え際から1〜3cmほどの帯は残る

Ludwig分類の3段階を上から見た模式図です。分け目を中心とした範囲が段階的に広がります。破線より前が、どの段階でも残る帯です。進み方の段階を表したもので、治療の前後を比べたものではありません。見え方には個人差があります。

どの段階でも共通しているのは、生え際から1〜3cmほどの帯は残るという点です。1章でご説明した「生え際は後退しない」は、この分類の前提にもなっています。

この物差しは、女性型のためだけに作られたものです。原典の論文は、女性に例外的にみられる男性型の脱毛については別の分類を使うように、とわざわざ書き添えています。

1977年に書かれたその論文は、こんな一文から始まります。女性のこの脱毛は、一般に信じられているよりずっと多い。それにもかかわらず、いまだにまれなものと考えられている。男性の脱毛とは臨床像も、そこに至る経過も違うからである。

50年近く前の指摘ですが、いまも事情はあまり変わっていないように思います。

広がり方には、2つの形があります

程度とは別に、どちらの方向へ広がるかにも型があります。皮膚科と内分泌の合同委員会の報告は、典型的な形は2つだとしています(参考文献2)。

頭部を上から見た模式図。左は分け目から外へ楕円形に広がる形、右は前へ行くほど幅が広くなるクリスマスツリー型

広がり方の2つの形を上から見た模式図です。どちらも生え際の線そのものは保たれます。見え方には個人差があり、治療の前後を比べたものではありません。

① 分け目から、外へ広がっていく形

頭頂部の分け目を中心に、外へ向かって広がります。上から見ると、分け目を中心に楕円形に地肌が透けて見えます。Ludwig分類がそのまま当てはまるのがこの形です。

② 前のほうが、より強く出る形

同じく分け目が広がるのですが、後ろより前のほうで幅が広くなります。分け目の線をたどると、後頭部側では細く、前へ行くほど広がっていく。その形からクリスマスツリー型と呼ばれます。

この形では、生え際のすぐ内側まで薄さが届くことがあります。ただし生え際そのものの線は保たれます。ここが、次の章でご説明する「生え際が後退してくる場合」との分かれ目です。

ご自身で見分けきれなくても差し支えありません。分け目は自分では上から見られない場所ですし、程度の判定には拡大して見る必要があります。診察で確かめますので、当たりをつけていただく程度で十分です。

4. 女性型脱毛症ではないこともあります

ここまで女性型脱毛症についてご説明してきましたが、同じように「薄くなってきた」と感じても、別のことが起きている場合があります。見分けがつくと進め方が変わりますので、代表的な3つを挙げます。

見るところ 女性型脱毛症では 別のことを考えます
進み方の速さ 何年もかけて、ゆっくり 数か月のあいだに、急に増えた
生え際 線は保たれる 生え際そのものが下がってきた
毛の太さ 太い毛と細い毛が混じる 太さはそろっているのに、抜ける量が多い
眉毛・体毛 変わらない 眉毛や体毛も薄くなってきた
きっかけ はっきりしないことが多い 体調の変化・食事制限・新しいお薬など

右の列に心当たりがあるときは、この章をお読みください。あてはまるからといって女性型脱毛症ではない、と決まるわけではありません。重なっていることもあります。

数か月のあいだに、急に抜けた場合

女性型脱毛症は、何年もかけてゆっくり進みます。ですから数か月前から明らかに抜け毛が増えたというときは、別の脱毛が混じっている可能性を考えます。

きっかけを一緒に探します

強いストレス、大きな体調の変化、極端な食事制限、新しく飲み始めたお薬。こうしたことをきっかけに、休んでいる時期の毛がまとめて抜けていくタイプの脱毛があります(参考文献10)。2章でご説明した産後の抜け毛も、仕組みとしてはこの仲間です。

全体的に抜けるので見た目は似ていますが、別のものです。きっかけが取り除かれれば戻っていくことが多く、進め方も変わります。ですので診察では、いつごろから、どういう速さで変わってきたかを必ずうかがいます。

甲状腺の働きなど、全身に関わる要因が背景にあることもあります。当院は皮膚と毛髪を診る施設ですので、そうした可能性が考えられる場合には、内分泌の外来を受診されることをお勧めしています。

重なっていることもあります

なお、この2つは重なることもあります。もともと分け目が広がってきていた方が、体調を崩した時期に急な抜け毛を重ねる、ということは実際にあります。

その場合は急な抜け毛が落ち着くのを待ってから、もとの進み具合を判断します。順番を間違えると、効いているのかどうかが分からなくなるからです。

生え際が後退してくる場合

3章でご説明した2つの形は、どちらも生え際の線は保たれるものでした。これに対して、生え際そのものが下がってくることがあります。数としては多くありませんが、この場合は少し慎重に考えます。

理由は2つあります。

ホルモンの状態を確かめる場合

ひとつは、女性でありながら男性型のように後退してくる形です。この場合は、体毛の増加や月経の乱れなど、ホルモンに関わるほかのサインがないかをあわせて確認します。とくに閉経後に急に始まった場合は、背景を確かめる必要があります(参考文献13)。

別の脱毛症が隠れている場合

もうひとつは、まったく別の脱毛症が隠れている場合です。生え際が帯状に後退し、眉毛や体毛も薄くなってくるタイプの脱毛症があります(参考文献14)。

こちらは毛穴そのものが失われていきますので、1章でご説明した「毛穴は残る」という女性型脱毛症の性質とは、まったく違います。

生え際が下がってきた、しかも眉毛も薄くなってきた。この組み合わせに心当たりがあるときは、市販の育毛剤を続ける前に一度見せていただければと思います。

抜け毛が多いだけ、という場合

抜け毛を心配して来られる方のなかには、そもそも毛量が多くて、その結果として落ちている毛も多くなっている方がいらっしゃいます。

髪の本数が多ければ、生え変わりで抜ける本数も当然多くなります。毛が太ければ、落ちた毛は目につきます。排水口に溜まる量も、枕に残る量も増える。けれども頭皮の状態としては、何も減っていません。

画面を見ていただきます

言葉で「大丈夫ですよ」と申し上げても、なかなか安心はできないと思います。ですので、こういうときこそ拡大した画面をご一緒に見ていただきます。毛穴あたりの本数も、毛の太さも、ちゃんとありますよ、と。ご自分の目で見ていただくのが早いのです。

正直、悩ましいところです

正直に申し上げると、ここは悩ましいところでもあります。そもそも心配だからお越しになっているわけですから、「問題ありません」とお伝えしても、より強力な治療法を希望される場合があります。

ご不安をそのままお持ち帰りいただくのも本意ではありませんし、かといって必要のない治療をお勧めするわけにもいきません。

そういうときにどうするかは、次の章でお話しします。ただ、多くの場合は画面を見て安心され、そのままお帰りになります。それでよいと思っています。

5. 治療の進め方

女性型脱毛症としての進め方をご説明します。

なお、4章の「急に抜けた」「生え際が後退してきた」に当てはまる方は、治療より先に見分けが必要です。診察で確かめてから決めますので、ここは読み飛ばしていただいて構いません。

女性には使えない薬があります

男性の薄毛治療で中心になるフィナステリド・デュタステリドの内服は、女性には使えません。日本皮膚科学会の診療ガイドラインでも、女性型脱毛症に対して禁忌とされています(参考文献4)。

同じガイドラインは、ミノキシジルの内服についても行うべきではないとしています。当院でもミノキシジルの内服による治療は行っておりません。

そのぶん、女性で選べる手立ては男性より限られます。当院では、内側から材料を届ける内服、頭皮に働きかける外用、そして頭皮に直接届ける注入治療を、進み具合に応じて組み合わせています。

予防から入るという考え方

先に、いちばんお伝えしたいことを書きます。

薄毛の治療は、予防から入れたときが結果を出しやすいと考えています。正確には、効果が大きいというよりいまの状態を保ちやすいということです。

ですので、4章の「抜け毛が多いだけ」のように、拡大して見たら十分にあったという方にも、外用剤を予防的に少し使っていただくことをご提案する場合があります。理由は3つです。

  • 定期的にお薬をお出しできれば、そのつど頭皮を見る機会ができます
  • その間に進行が見られれば、早い段階で治療に移れます
  • 何より、ご自身の安心につながります

逆の言い方をすると、薄毛が進行してからでは、回復にかなりの労力が必要になります。先に手を打っておくほうが、結果として負担は軽く済みます。

もちろん、何もせずに様子を見ましょう、とお伝えすることもあります。押し売りをするつもりはありません。

分け目が広がってきたら、内服と外用から

標準的な進め方です。パントガール(内服)とパントスチン(外用)から始めることが多くなります。

髪はケラチンというたんぱく質でできています。内服は、その材料になるアミノ酸やビタミンB群を体の内側から補うという考え方の薬です。外用は頭皮に直接働きかけます。

いずれも、飲んですぐ、塗ってすぐ本数が増えるという性質のものではありません。髪は1か月に約1cmしか伸びませんから、変化を感じられるまでには時間がかかります。まずは3〜6か月続けていただくことをご提案しています。効果の現れ方には個人差があります。

進みが目立つときは、頭皮に直接届ける

内服・外用を土台にしたうえで、注入治療を組み合わせるかどうかを検討します。

乗り換えではありません

誤解のないように申し上げると、これは乗り換えではありません。飲み薬・塗り薬は土台で、やめれば時間をかけて元に戻っていきます。土台は土台として続けたうえで、足りない分を直接届けるという考え方です。

飲み薬は血流にのって全身をめぐった末に毛包へ届き、塗り薬が届くのは頭皮の浅いところまで。注入は、その中間にある毛包のまわりへまとめて届ける方法になります。

内服薬は血流を通って毛包に届き、注入治療は頭皮の表面から直接届くことを示した断面図

届き方の違いを示した模式図です。青=内服薬は血流にのって、いちばん深いところから毛包の根元へ。緑=注入治療は頭皮の表面から真皮まで届き、毛包のまわりに広がります。なお、塗り薬(外用剤)が届くのは、これよりもっと浅いところまでです。届く経路の違いを示したもので、効果の大きさを比べたものではありません。

当院の4つの注入治療

当院では、何を届けるかによって4つの方法を使い分けています。いずれも針を使わないミラジェットで頭皮に送り込むため、麻酔は要りません。

  • HARG+(ハーグプラス)療法高純化エクソソーム製剤を注入します。日本医療毛髪再生研究会の認定施設として、2009年から行っています。
  • エクソソーム療法M2Pエクソソームを頭皮へ送達します。
  • 毛髪再生ペプチド療法毛包に働きかけるペプチド製剤を用います。
  • PDRN療法頭皮の環境を整えることを目的とした治療です。

どれが合うかは、進み具合、通える頻度、ご予算によって変わります。費用を含めた全体像は薄毛治療(AGA)のページにまとめています。

シャンプーを変えれば、というお話について

洗髪の仕方を変える、髪をきつく結ばない、睡眠と食事を整える。こうしたことは、続けて悪いことはありません。ただ、シャンプーを変えたことで毛が太くなる、ということはありません。「良いシャンプーを探す」という方向に答えはない、とお考えください。

一方で、逆向きのことは起こります。洗いすぎて頭皮が荒れてしまい、その結果として毛の育ち方に影響が出ている方は、診察をしていると少なからずいらっしゃいます。

ですので、見ているのは「何で洗っているか」ではなく「洗いすぎていないか」のほうです。頭皮の赤みやフケも、診察のときにあわせて確認します。

6. 当院の診かた

ここまでの見分けは、どれも鏡や写真では確かめられません。分け目は自分では上から見られませんし、毛が細くなっているかどうかは肉眼では分かりません。ですので、拡大して見ます。

当院では診察のときに、マイクロスコープ(医学的にはトリコスコピーと呼ばれる方法です)で頭皮を拡大した画像をディスプレイに映し、ご自身にも一緒に見ていただきながらご説明しています。見ているのは次の4つです。

  • 毛穴の分布
  • ひとつの毛穴から生えている毛の本数
  • 頭皮の炎症・赤み・皮脂・フケ
  • 髪の毛の太さ

一緒に見ていただくのには理由があります。「薄くなってきた気がする」という感覚と、実際に頭皮で起きていることは、必ずしも一致しません。思っていたより進んでいないこともあれば、ご本人が気にしていない部位のほうが変わっていることもあります。

言葉だけでお伝えしてもなかなか腑に落ちないところですので、同じ画面を見ながらお話しするほうが早いのです。

頭皮を拡大したときの模式図。左は1つの毛穴から2〜3本が生えて太さがそろっている状態、右は1つの毛穴から1本のことが多く、太い毛と細い毛が混じっている状態

頭皮を拡大したときの模式図です。左は1つの毛穴から2〜3本が生えて太さがそろっている状態、右は1本のことが多く、太い毛と細い毛が混じっている状態。治療の前後を比べたものではありません。

手がかりは、毛の太さのばらつきです

1章でご説明したとおり、この脱毛の本体は「抜けること」ではなく「細くなること」でした。ですから拡大して見るときも、太い毛ばかりが並んでいるのか、太い毛と細い毛が混じっているのかが最大の手がかりになります。

ひとつの毛穴から何本生えているか、というのも同じことを別の角度から見ています。健康な頭皮では、ひとつの毛穴から2〜3本まとまって生えていることが珍しくありません。変化が進んでいる部位では、これが1本だけになっていきます。

拡大して見ることのもうひとつの利点は、見た目に薄くなるより前の段階で、毛の細さの変化を捉えられるところにあります。鏡の前で「気のせいかもしれない」と迷っている段階こそ、確かめる意味があります。

女性は、基準になる場所が置きにくい

男性の薄毛では、この見比べが比較的はっきりしています。後頭部と側頭部の毛は影響を受けにくくあとまで残るので、後頭部を「変わっていないときの基準」として使えるからです。後頭部と頭頂部を並べれば、同じ方の頭の中で比べる物差しができます。

女性は、頭全体を見渡します

ところが女性では、この基準が置きにくいのです。1章でご説明したとおり、女性型脱毛症では頭皮の全領域で毛が細く、密度が下がっていくためです。

ですので女性の方には、頭頂部と前頭部だけでなく後頭部・側頭部も一緒に見ていただき、全体として細くなってきていないかを確かめます。1か所を基準にするのではなく、頭全体を見渡して、その方にとってどこが最も変わっているかを探す、という見方になります。

正直に申し上げると、男性より手間のかかるやり方です。それでも省かないのは、省くと進み具合を軽く見積もってしまうからです。

分け目だけを見て「まだそれほどでもない」と判断したものの、後頭部まで含めて見ると全体が細くなっていた、ということが実際に起こりえます。

一度見せていただきたいサイン

次のいずれかに当てはまる場合は、迷っている時間がもったいないので、一度頭皮を見せていただくことをお勧めします。

  • 分け目の地肌が、以前より広く見えるようになった
  • 結んだときの毛束が、はっきり細くなった
  • 数か月のあいだに、抜け毛が急に増えた
  • 産後1年を過ぎても、抜け毛が戻ってこない
  • 境界のはっきりした丸い脱毛がある
  • 頭皮に赤み・かゆみ・強いフケがある
  • 生え際が後退してきた。とくに眉毛も薄くなってきた
  • 閉経後に急に始まった

初診では、頭皮を拡大して見ながら、これまでの経過と、これからの進め方をご相談します。初診料は3,300円で、カウンセリングを含めて1時間ほどお時間をいただいています。

その日に治療を決めていただく必要はありません。何から始めるかを決めずにお越しいただいて構いませんし、治療名がわからなくてもご心配はいりません。画面を見ながら、どこがどう変わってきているかを一緒に確かめて、そのうえでご提案します。

なお、女性型脱毛症(FPHL)や男性型脱毛症(AGA)の治療は国内では公的医療保険の対象外とされており、どの医療機関でも自費診療になります。当院の治療もすべて自由診療(保険適用外)で、保険診療は行っておりません。

一方で、円形脱毛症のように保険診療の対象となる脱毛症もあります。保険での治療をご希望の場合は、保険診療に対応している医療機関の受診をお勧めしています。

よくあるご質問

診察で実際によくいただくご質問をまとめました。ここに載っていないことも、どうぞ遠慮なくお尋ねください。

受診について

女性の薄毛は何科を受診すればよいですか?

髪と頭皮は皮膚の一部ですので、皮膚科または美容皮膚科が窓口になります。当院は美容皮膚科として、頭皮を拡大して確かめたうえで進め方をご提案しています。

なお、甲状腺の働きなど全身に関わる要因が疑われる場合には、内分泌の外来をお勧めしています。当院は薄毛の診療で採血を行っておりませんので、そうした検査が必要な場合は該当する診療科をご案内します。

まだ受けるか決めていないのですが、相談だけでもよいですか?

はい。初診はこれからどう進めるかを決めていただく場です。頭皮を拡大して確かめ、いま何が起きているかをご説明したうえで、選択肢をお示しします。その日に治療を決めていただく必要はありません。

初診料は3,300円(税込)、カウンセリングを含めて約1時間です。

経過と期間について

産後の抜け毛は、そのうち戻りますか?

産後に抜け毛が増えたと感じる方は多く、時間とともに落ち着いていくことが一般的です。ただ、その頻度や実態については専門家のあいだでも見解が一致していません(参考文献8)。

目安としては、産後1年を過ぎても戻ってこない場合、あるいは分け目の広がり方が産前と明らかに違う場合には、一度頭皮を見せていただくことをお勧めしています。妊娠中の体の変化が想定どおり戻らないときは、背景に別の要因がないかを検討すべきだとする総説もあります(参考文献9)。

治療を始めたら、どのくらいで変化が分かりますか?

髪は1か月に約1cmずつしか伸びません。また、いま抜けている毛とこれから生えてくる毛は別のものですので、目に見える長さの髪になるまでには数か月かかります。

まずは3〜6か月続けたうえで判断することをご提案しています。効果の現れ方には個人差があり、進み具合や年齢によっても違います。

急に抜け毛が増えたのですが、女性型脱毛症でしょうか?

女性型脱毛症は、何年もかけて少しずつ進んでいく変化です。数か月のあいだに急に抜け毛が増えた場合は、別の脱毛が混じっている可能性を考えます。

強いストレス、大きな体調の変化、極端な食事制限、お薬の影響などをきっかけに、休んでいる時期の毛がまとめて抜けるタイプの脱毛があります(参考文献10)。きっかけが取り除かれれば戻っていくことが多く、進め方も変わりますので、診察ではいつごろからどういう速さで変わってきたかを必ずうかがいます。

治療について

男性用の育毛剤や内服薬を使ってはいけないのですか?

フィナステリド・デュタステリドの内服は、女性には使えません。日本皮膚科学会の診療ガイドラインでも、女性型脱毛症に対して禁忌とされています(参考文献4)。同じガイドラインは、ミノキシジルの内服についても行うべきではないとしています。

当院でもミノキシジルの内服による治療は行っておりません。女性の場合は、内服・外用と注入治療を、進み具合とタイプに応じて組み合わせます。

「びまん性脱毛症」と言われたのですが、女性型脱毛症とは違うのですか?

別のものではありません。「びまん性」は病名ではなく、「境目がはっきりせず、広がって薄くなる」という見え方を指す言葉です。女性型脱毛症は、そのびまん性の脱毛のうちのひとつにあたります。

同じ見え方をするものが、ほかにもあります。日本語で「びまん性脱毛症」が女性型脱毛症とは別物のように使われるとき、実際に指しているのは休止期脱毛症であることが多いです。何がどう分かれるのかはびまん性脱毛症のページにまとめました。

つまり、言葉だけでは中身が決まりません。いつからどう変わってきたかと、頭皮を拡大して毛が細くなっているかの両方で考えます。

FAGAとFPHLは違うものですか?

同じものを指しています。かつてFAGA(女性男性型脱毛症)と呼ばれていたものが、国際的にFPHL(女性型脱毛症)という呼び方へ移りました。

名前に「アンドロゲン(男性ホルモン)が原因である」という意味が含まれていたためで、女性ではその関与がはっきりしない方も少なくないことが理由です。日本皮膚科学会のガイドラインも2017年版で名称を改めています(参考文献4)。いまもFAGAという語は広く使われています。

不安なまま治療に進んでいただきたくはありません。小さな疑問でも、そのままにせずお持ちください。

参考文献

このページの説明は、当院での経験だけでなく、国内外の研究をもとにしています。根拠にした論文を下にまとめました。タイトルをタップすると、どんな研究なのか、このページのどこを支えているのかをご覧いただけます。

用語と、どう位置づけられるか

1女性のびまん性・非瘢痕性の脱毛にどう向き合うか

原題: Approach to the adult female patient with diffuse nonscarring alopecia

著者: Chartier MB, Hoss DM, Grant-Kels JM

出典: J Am Acad Dermatol. 47(6):809-818 (2002)

DOI: 10.1067/mjd.2002.128771

要約:

脱毛は伝統的に、瘢痕を伴うかどうかと、広がって起こるか一部に限られるかで分類されてきました。本論文は、そのうち「女性が、広がるかたちの、瘢痕を伴わない脱毛を訴えて受診したとき」という、日常でよく出会う場面を取り上げた総説です。

著者らは、この訴えの背景にある診断を4つに整理しています。①女性型脱毛症 ②急性および慢性の休止期脱毛症 ③びまん性の円形脱毛症 ④成長期の毛が抜けやすくなる体質によるもの。そのうえで、問診・診察・必要な検査の進め方を示しています。

本ページでは、1章の「『びまん性』は見え方を指す言葉であって病名ではなく、その背景にある診断はいくつかある」という記述の根拠として参照しています。女性型脱毛症は、びまん性の脱毛の外にあるのではなく、その中のひとつです。

2女性型脱毛症とアンドロゲン過剰 ── 合同委員会報告

原題: Female Pattern Hair Loss and Androgen Excess: A Report From the Multidisciplinary Androgen Excess and PCOS Committee

著者: Carmina E, Azziz R, Bergfeld W, et al.(Olsen E を含む)

出典: J Clin Endocrinol Metab. 104(7):2875-2891 (2019)

DOI: 10.1210/jc.2018-02548

要約:

皮膚科・内分泌・生殖内分泌の専門家からなる合同の作業部会が、2017年12月までの査読論文を検討してまとめた報告です。各項目に根拠の強さがA〜Dで示されています。女性型脱毛症を「頭皮の中央部の毛の密度が減り、生え際はおおむね保たれる脱毛」と定義しています。

勧告のうち本ページに関わるのは3つです。①「androgenetic alopecia」という呼び方を避け、「female pattern hair loss」を用いるべきである。②典型的な広がり方は2つあり、分け目から外へ広がる形と、前方がより強く出るクリスマスツリー型である。③女性型脱毛症だけがあってアンドロゲンの値が正常であれば、それをホルモン異常のサインとみなすべきではない。

本ページでは、1章のFAGA・FPHLの呼び方と範囲の説明、および3章の「典型的な2つの広がり方」の根拠として参照しています。

女性型脱毛症とは何か

3女性型脱毛症(総説)

原題: Female pattern hair loss

著者: Ioannides D, Lazaridou E

出典: Curr Probl Dermatol. 47:45-54 (2015)

DOI: 10.1159/000369404

要約:

女性型脱毛症について、病態・診断・治療を整理した総説です。原因は多因子で、閉経後の女性に多くみられ、頭頂部から前頭部にかけて毛の密度が減っていく非瘢痕性の脱毛と位置づけられています。

臨床像については、「前頭部中央のびまん性の粗になりと、おおむね保たれた生え際、炎症や瘢痕を伴わないこと」という記述があります。命に関わる病気ではないものの慢性に経過し、精神面への影響が小さくない点にも著者らは触れました。

本ページでは、1章の「多くの場合、生え際は保たれたまま分け目から広がる」という記述の根拠として参照しています。原著が「おおむね(more-or-less)」と書いているとおり、例外があることも同時に示しています。

4日本皮膚科学会 男性型・女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版

原題: Guidelines for the diagnosis and treatment of male-pattern and female-pattern hair loss, 2017 version

著者: Manabe M, Tsuboi R, Itami S, et al.

出典: J Dermatol. 45(9):1031-1043 (2018)

DOI: 10.1111/1346-8138.14470

要約:

日本皮膚科学会が2010年版を改訂し、男性型脱毛症に加えて女性型脱毛症も対象としたガイドラインです。改訂にあたり、「female-pattern hair loss(FPHL)」という用語が国際的に一般的になりつつあることが理由のひとつとして挙げられています。

女性型脱毛症については、フィナステリド・デュタステリドの内服は禁忌とされています。またミノキシジルの内服は行うべきではないとされています。

本ページでは、1章のFAGA→FPHLの名称に関する記述と、5章の「女性には使えない薬がある」という記述の根拠として参照しています。

どのくらいの方にみられるか

5地域住民における男性型・女性型脱毛症の有病率

原題: Prevalence of male and female pattern hair loss in Maryborough

著者: Gan DCC, Sinclair RD

出典: J Investig Dermatol Symp Proc. 10(3):184-189 (2005)

DOI: 10.1111/j.1087-0024.2005.10102.x

要約:

オーストラリア・ビクトリア州の人口約8,000人の地域で、20歳以上の男女5,000人に郵送調査を行い(回答1,456人)、そのうち396人が実際に診察を受けた地域住民調査です。国勢調査データと人口構成がよく一致する地域が選ばれています。

前頭部中央の薄毛は年齢とともに増え、80歳以上では女性の57%、男性の73.5%に認められました。また、5〜9歳の子ども140人は全員が薄毛なし(stage 1)と判定されています。

本ページでは、2章の「加齢とともに増えていく、珍しいことではない変化である」という記述の根拠として参照しています。

6閉経後の女性における女性型脱毛症の有病率 ── 横断研究

原題: Prevalence of female pattern hair loss in postmenopausal women: a cross-sectional study

著者: Chaikittisilpa S, Rattanasirisin N, Panchaprateep R, et al.

出典: Menopause. 29(4):415-420 (2022)

DOI: 10.1097/GME.0000000000001927

要約:

50〜65歳の健康な閉経後女性200名を募り、Ludwig分類にもとづき6方向からの標準化した写真と頭皮の拡大観察で評価した横断研究です。すべての画像を皮膚科医3名が判定し直しています。最終的に178名が解析されました。

女性型脱毛症の有病率は52.2%(95%信頼区間 44.6-59.8)でした。重症度の内訳は、もっとも軽いLudwig I度が73.2%、II度が22.6%、III度は4.3%です。年齢・閉経からの年数・BMIが関連し、年齢と家族歴で調整するとBMI 25以上のみが有意に残りました(調整オッズ比2.65)。

本ページでは、2章の「更年期以降は半数以上にみられるが、その多くは軽い段階である」という記述の根拠として参照しています。

産後の抜け毛について

7産後の抜け毛は不安と関連する(日本の研究)

原題: Postpartum hair loss is associated with anxiety

著者: Hirose A, Terauchi M, Odai T, et al.

出典: J Obstet Gynaecol Res. 50(12):2239-2245 (2024)

DOI: 10.1111/jog.16130

要約:

日本の2施設で出産した女性を対象に、産後10〜18か月の時点で質問票を郵送し回答を得た横断研究です。331件が解析されました。不安と抑うつの評価には、GAD-2、Whooley質問、エジンバラ産後うつ病質問票が用いられています。

産後の抜け毛が「とても多い」と答えた方は、「なかった」方に比べて不安が強いという関連が示されました(調整オッズ比4.58、95%信頼区間 1.18-17.74)。初めての出産であること、抜け毛の量が多いこと、不眠スコアが高いことが、不安の予測因子でした。

本ページでは、2章の「産後の抜け毛を気にされるのは、気にしすぎではない」という記述の根拠として参照しています。因果関係を示す研究ではありません。

8【異なる見方】産後休止期脱毛という概念への疑問

原題: The Postpartum Telogen Effluvium Fallacy

著者: Mirallas O, Grimalt R

出典: Skin Appendage Disord. 1(4):198-201 (2016)

DOI: 10.1159/000445385

要約:

産後の休止期脱毛(PPTE)について、これまでに公表された客観的データを後ろ向きにレビューし、実際の頻度がどの程度なのかを検討した論文です。

著者らは、妊娠中の女性と産後の女性で抜け毛の量が異なることを支持する統計学的に有意なデータは、レビューしたどの論文にも見いだせなかったと報告しています。そのうえで「産後休止期脱毛は明確に定義された病態ではなく、正確な頻度も分かっていない。その頻度はきわめて低く不明確で、存在しないと言ってよいほどである」と結論しています。

この論文は、本ページの立場とは異なる見方を示すものです。当院は産後の抜け毛を「多くの方が経験として訴えること」として扱っていますが、その頻度や実態については専門家のあいだで見解が一致していません。都合のよい文献だけを並べることはしたくありませんので、もっとも懐疑的な立場をとった論文として、あえて掲げています。

9産後に戻らない皮膚の変化をどう考えるか

原題: Considerations for cutaneous physiologic changes of pregnancy that fail to resolve postpartum

著者: Anzelc MJ, Bechtel MA

出典: Int J Dermatol. 62(2):190-196 (2022)

DOI: 10.1111/ijd.16105

要約:

妊娠中に起こる皮膚の生理的な変化のうち、産後に想定どおり戻らないものについて整理した総説です。休止期脱毛、強い多毛、手掌紅斑、妊娠線の4つが取り上げられています。

著者らは、これらが「戻るのに時間がかかっているだけの正常な変化」なのか、「もともと別の診断だったもの」なのか、「妊娠による変化と誤って解釈されている別の要因」なのかを区別する必要があると述べ、想定より長く続く場合には背景の検討を勧めています。

本ページでは、2章の「産後1年を過ぎても戻ってこないときは一度みてもらってほしい」という記述の根拠として参照しています。

タイプの見分けについて

10休止期脱毛症(総説)

原題: Telogen Effluvium: A Review of the Literature

著者: Asghar F, Shamim N, Farooque U, et al.

出典: Cureus. 12(5):e8320 (2020)

DOI: 10.7759/cureus.8320

要約:

休止期脱毛症について、成り立ち・診断・治療をまとめた総説です。休止期脱毛症は脱毛のもっとも多い原因のひとつで、髪が過剰に抜けることを特徴とします。

お薬、外傷、精神的・身体的なストレスなど、さまざまな要因が引き金になりうると整理されています。急性のものと慢性のものがあり、治療ではまず引き金になった要因を見つけて取り除くことが基本とされています。

本ページでは、4章の「数か月前から急に抜け毛が増えた場合は、女性型脱毛症とは別の脱毛を考える」という記述の根拠として参照しています。

11Ludwig分類の原典 ── 女性に生じる脱毛の分類

原題: Classification of the types of androgenetic alopecia (common baldness) occurring in the female sex

著者: Ludwig E

出典: Br J Dermatol. 97(3):247-254 (1977)

DOI: 10.1111/j.1365-2133.1977.tb15179.x

要約:

いまも使われている「Ludwig分類」を最初に示した論文です。著者は冒頭で、女性の脱毛は一般に信じられているよりずっと多いにもかかわらず、男性の脱毛とは臨床像も経過も異なるために「まれなもの」とみなされ続けている、と述べています。早期に診断できるようにすることが、この分類を作った目的だと書かれています。

重要なのは適用範囲です。この分類は女性に生じる「女性型」のためのもので、著者は女性に例外的に観察される「男性型」については、Hamiltonの分類(またはその改変)を用いるようにと明記しています。

本ページでは、4章のLudwig分類の説明と、「この分類は女性型専用の物差しである」という記述の根拠として参照しています。

12頭皮の部位ごとの毛密度・毛径と重症度の関係

原題: The Predictive Value of Midscalp Hair Density and Terminal Hair Percentage in the Severity Evaluation of FPHL Assessed by Trichoscan in a Sample of Chinese Population

著者: Yang X, Yu W, Qiao R, et al.

出典: Clin Cosmet Investig Dermatol. 15:2675-2684 (2022)

DOI: 10.2147/CCID.S390148

要約:

女性型脱毛症の261名をLudwig分類で3群に分け、健康な108名と合わせて、コンピュータ解析つきの頭皮拡大観察で評価した研究です。前頭部・頭頂部・つむじ・側頭部・後頭部それぞれについて、毛の密度、太く育った毛の割合、毛の太さなどを解析しています。

毛の密度、太く育った毛の割合、毛穴あたりの本数、毛の太さの低下が、頭皮の全領域で観察されました。そのうえで、頭頂部の毛の密度と太く育った毛の割合の2つが、Ludwig分類の段階をもっともよく反映していました(正診率85.12%)。

本ページでは、4章の「頭頂部全体が薄く見えるタイプ」と、7章の「女性では全体を見る必要がある」という記述の根拠として参照しています。

13生え際が後退する女性型脱毛症とホルモンの状態

原題: Female Androgenetic Alopecia with Male Pattern Caused by an Androgen-Producing Tumor

著者: Dueñas AR, Sánchez Dueñas LE, Sánchez VT, García Rico ID

出典: Int J Trichology. 12(3):121-123 (2020)

DOI: 10.4103/ijt.ijt_93_20

要約:

女性型脱毛症は通常、生え際が保たれたまま側頭部と頭頂部の毛量が減る形をとりますが、生え際の後退を伴う形(FAGA-M)で現れることもある、という整理から始まる報告です。

著者らは、この形をみたときには高アンドロゲン血症の状態を考え、体毛の増加・ざ瘡・月経の乱れといった他のサインをあわせて確認すべきだとしています。とくに閉経後の女性に急に生じた場合は慎重に考える必要があると述べ、実際にその背景に卵巣の腫瘍が見つかり、手術で解決した2例を報告しています。

本ページでは、4章の「生え際が後退してくるタイプでは、ホルモンに関わる他のサインをあわせて確認する」という記述の根拠として参照しています。2例の症例報告であり、生え際が後退する方に必ず腫瘍があるという意味ではありません。

14生え際が帯状に後退するもうひとつの脱毛症

原題: Frontal fibrosing alopecia part I – Diagnosis and clinical presentation

著者: Alenezi S, Ezzat RZ, Miteva M

出典: J Am Acad Dermatol. 94(4):1059-1072 (2025)

DOI: 10.1016/j.jaad.2024.10.126

要約:

前額線維性脱毛症(FFA)について、歴史・疫学・臨床像・頭皮拡大観察の所見・診断基準を整理した総説です。閉経後の女性に多くみられる脱毛症で、前頭部から側頭部にかけて生え際が帯状に後退し、眉毛や体毛の脱毛を伴うことが多いことが特徴とされています。

原因はまだ分かっておらず、遺伝的な素因、ホルモン、化学物質への曝露などが候補に挙がりました。進行はゆるやかで特徴的であり、この点が他の脱毛との区別に役立つといいます。近年は世界的に診断される方が増えているという報告もありました。

本ページでは、4章の「生え際の後退には、まったく別の脱毛症が隠れていることもある」という記述の根拠として参照しています。毛穴そのものが失われていく点で、女性型脱毛症とは進み方が大きく異なります。

当院の診かたについて

15女性型脱毛症では後頭部にも所見が及ぶことがある

原題: Occipital involvement in female pattern hair loss: histopathological evidences

著者: Ekmekci TR, Sakiz D, Koslu A

出典: J Eur Acad Dermatol Venereol. 24(3):299-301 (2010)

DOI: 10.1111/j.1468-3083.2009.03411.x

要約:

1年以上の脱毛を訴え、Ludwig分類にもとづき女性型脱毛症と診断された40名を対象に、頭頂部と後頭部の2か所から組織を採り、水平方向に切って顕微鏡で比べた研究です。太く育った毛と細く縮んだ毛(軟毛)の比率を数えて判定しています。

女性型脱毛症では後頭部は保たれるものと考えられてきましたが、40名中10名(25%)で後頭部にも同様の所見が認められました。方によっては見た目にも分かる程度で、そうでない方でも細くなる形で現れていた、と報告されています。

本ページでは、7章の「女性では後頭部を『変わっていない基準』として扱えないことがある」という記述の根拠として参照しています。当院が女性の場合に全体を見比べている理由にあたります。

更年期と髪

16更年期と皮膚・毛髪 ── 第1部 毛髪の疾患

原題: Menopause, skin and common dermatoses. Part 1: hair disorders

著者: Kamp E, Ashraf M, Musbahi E, DeGiovanni C

出典: Clin Exp Dermatol. 47(12):2110-2116 (2022)

DOI: 10.1111/ced.15327

要約:

更年期が皮膚と毛髪に与える影響を扱った4部構成の総説の第1部で、毛髪を取り上げています。更年期は卵巣の機能が落ちることでエストロゲンが減少する時期であり、心血管系や骨密度への影響はよく知られている一方、皮膚と毛髪への影響については研究が足りないと述べています。

アンドロゲンとエストロゲンはいずれも毛の生え変わりの周期に関わっており、閉経後の女性では、伸び続けている時期にある毛の割合が減ることが観察されています。また、女性型脱毛症と前額線維性脱毛症のいずれも、閉経前後および閉経後の状態と関連が指摘されています。

本ページでは、2章の「更年期のころにご相談が増える」という記述の根拠として参照しています。著者らは、ホルモン療法の役割も含めてさらなる研究が必要だとしています。

日本人女性のデータ

17加齢および脱毛の進行にともなう日本人女性の毛髪の特徴

原題: Characteristic features of Japanese women’s hair with aging and with progressing hair loss

著者: Tajima M, Hamada C, Arai T, Miyazawa M, Shibata R, Ishino A

出典: J Dermatol Sci. 45(2):93-103 (2007) ※オンライン先行公開 2006年12月

DOI: 10.1016/j.jdermsci.2006.10.011

要約:

14〜68歳の日本人女性159名(脱毛のある方46名、ない方または軽い方113名)を対象に、毛髪の密度・伸びる速さ・太さをフォトトリコグラムで、毛穴あたりの本数を頭皮画像の解析で調べた研究です。日本人女性を対象にした毛髪の研究は数が少なく、その中で基礎的なデータを示したものにあたります。

40代以降に毛髪密度が下がり、その内訳は1本しか生えていない毛穴が増え、3本以上の毛穴が減るという形でした。毛の太さと太い毛の割合は10代から40歳ごろまで増加し、脱毛の進行とともに低下していました。

とりわけ重要なのは、脱毛のある女性では、男性型脱毛症と比べて産毛様の毛がほとんど見られなかったという点です。著者らは、女性の薄毛の主な原因は毛髪密度と太い毛の割合の低下であって、産毛様の毛の増加ではないと結論しています。

本ページでは、1章の「細くなっても長さは保たれることが多い」「軟毛にまで縮んでしまうところまでは進んでいない」という記述の根拠として参照しています。男性の薄毛との違いを説明する土台にあたります。

※掲載した文献は、いずれも治療の一般的な考え方を示すものであり、お一人おひとりの結果を保証するものではありません。効果やリスクの現れ方には個人差があります。

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監修者情報(医師紹介)

監修医師 佐藤雅樹(仙台 ソララクリニック院長)

監修医師:佐藤 雅樹 (さとう まさき)

ソララクリニック 院長

専門分野:美容皮膚科

2000年 順天堂大学医学部卒。順天堂大学医学部形成外科入局。 大学医学部付属病院等を経て、都内美容皮膚科クリニックにてレーザー治療の研鑽を積む。2011年3月 ソララクリニック開院 院長就任。2022年 医療法人 松柴会 理事長就任。日本美容皮膚科学会 日本形成外科学会 日本抗加齢医学会 日本レーザー医学会 点滴療法研究会 日本医療毛髪再生研究会他所属。 
様々な医療レーザー機器に精通し、2011年ルビーフラクショナル搭載機器を日本初導入。各種エネルギーベースの医療機器を併用する複合治療に積極的に取り組む.

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※当院の治療はすべて自由診療(保険適用外)です。標準的な費用は各ページの料金表または料金表ページをご覧ください。治療に伴うリスク・副作用は診察時にもご説明します。

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薄毛治療の全体像・料金・リスク・副作用・禁忌、および未承認の医薬品・医療機器に関する情報(国内の承認医薬品の有無・諸外国における安全性情報など)は薄毛治療(AGA)のページにまとめています。当院の治療はすべて自由診療(保険適用外)で、保険診療は行っておりません。

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