酒さの治療・酒さ様皮膚炎の改善

酒さ

酒さは、顔の頬や鼻などに赤み・毛細血管拡張・ニキビ様の症状 顔のほてりを伴います。びまん性発赤と血管拡張が数ヶ月以上持続する慢性炎症性疾患とされています。

難治性の疾患で治療法が確立しているとは言えませんが、当院では海外での知見を踏まえ 酒さに効果的と言われる様々な治療法を導入し 治療を行なっております。

「酒さ」とは

  • 冬に暖房が入るようになって顔がほてる
  • 日光を浴びると顔が赤くなって困る

このような症状があるとき「酒さ」(しゅさ)かもしれません。

中年以降に主として顔面に生じる原因不明の慢性炎症性疾患で、紅斑性酒さ(こうはんせいしゅさ)、酒さ性ざ瘡(しゅさせいざそう)は女性に多く、鼻瘤(びりゅう)は男性に多くみられるとされています。しかしながら、20~30代の方でも多く見られます。

最近は酒さの方が増加しているような印象を受けます。

赤ら顔の多くが、 酒さ  ではないかと言われていたりしますが 不明です。

お酒とは特に関係がないようです。その上女性に多い疾患です。酒飲みの男性に多いと思っている方も多いと思います。

また、ステロイドを長期間にわたって使用したことに起因する 酒さ様皮膚炎については 後述します。

1度酒さ 紅斑性酒さ

皮脂腺の増殖によって、毛細血管が拡張することで、赤ら顔となっている状況。
皮脂の分泌が多くみられます。

紅斑性酒さ

2度酒さ 酒さ性ざ瘡

赤みに加えて、ニキビ様湿疹ができてくる状態。

ほてりの症状が継続的に生じ、紅斑やにきびに類似した丘疹・膿疱、肌の乾燥などがみられます。

ニキビに似た丘疹・膿疱が出ますが、この場合コメド 皮脂づまりに伴うニキビではありません。

酒さ性ざ瘡

3度酒さ 腫瘤型

皮脂腺の増殖によって、毛穴が広がり、鼻の変形がみられている状態

男性に多く見られます。

眼型

眼周りの腫れや結膜炎、角膜炎を生じます。

酒さの中では最も少ないタイプです。

酒さの原因

酒さの原因は、不明とされています。
ニキビダニ[Demodex folliculorum]が原因と言われたり、ビタミンだったり、香辛料だったり、食生活だったり。 色々言われます。

臨床的には、寒暖差,日光,刺激物,微生物等 複数の外的因子が増悪因子として認識されています。

酒さの肌では,自然免疫機構の亢進,自然免疫受容体TLR2の発現亢進が起きて 外的因子に対する感受性が高まります。敏感肌の状態です。

これによって、カセリサイディン(cathelicidin)抗菌ペプチドの過剰な発現にカリクレイン5によるLL37を主とする活性ペプチドの産生亢進が起き、血管拡張や炎症反応が惹起されているとされています。

何らかの原因で「自然免疫」機構の亢進によって 慢性炎症が引き起こされている

肌に備わるセンサーが過敏になり、熱や紫外線などの外的因子に対しての感受性が高まることで 炎症反応が惹起され 毛細血管の拡張など血管の異常が引き起こされ 赤みやほてりが続くなどの酒さの症状となると考えられています。

いずれにせよ
(何らかの原因によって)自然免疫機構が亢進し 慢性炎症が引き起こされている状態で有ることを踏まえて 治療法を選択していきます。

治療法

酒さに対して 様々な治療法 薬剤が使用されています。

症状に応じて選択する治療法は異なります。詳細についてはカウンセリングの際に 肌状態を診察させていただいた上で ご説明させていただきたいと思います。

窒素プラズマ

窒素プラズマ治療窒素プラズマはその効果に比較し肌への刺激性が少なく 肌の再構築を促し 皮脂腺抑制 殺菌効果など 酒さに対して使用しやすい機器と言えます。

最近はプラズマを主として選択することが多くなってきました。

更に 窒素プラズマ特有の作用として 特に薬剤浸透性を高める効果があります。

窒素プラズマ照射後に 血管透過性の抑制 炎症緩和などの目的に薬剤を浸透させ、効果をさらに高めることが期待できます。

窒素プラズマは レーザーと異なりメラニンに反応しないため 酒さやアトピー性皮膚炎の方 日焼け後の肌の方など肌が敏感になっている方にも比較的使用しやすい治療法です。

エクソソーム療法

エクソソーム療法

幹細胞を培養した際に抽出される成分の一つ『エクソソーム』。組織の修復力を高めるだけでなく、組織の炎症を鎮め 機能回復を促す効果が期待できます。

M2Pエクソソーム™は、M1マクロファージ(炎症性)からM2マクロファージ( 抗炎症性)への分極化を促進します。

組織の抗炎症性を高め、炎症性疾患としての酒さの症状軽減に強力な効果が期待できるのです。

 

エクソソーム療法

ACRS療法

ACRS療法ACRS療法は、酒さのような炎症性疾患の抑制に効果が高いとされています。

抗炎症サイトカイン(炎症を治める体内物質)を通常の数倍に増幅させた血清を患部に注入又は、導入します。

赤みの改善に効果的な場合も多く、皮膚自身の疲弊によって、再生が阻害されていることも踏まえると、より積極的に使用することも検討できるでしょう。

Nd-YAGレーザー

皮脂腺の発達による毛細血管拡張が見られます。そこで皮脂腺の発達抑制,毛細血管の縮小をレーザーで促します。
あまり毛細血管のみを主体に治療してしまうと、酒さのコントロールに結びつかない傾向がありますので、バランスを見ながら治療計画を立てていきます。

外用剤

海外で標準的とされている薬剤を使用しています。残念ながら 日本国内では「酒さ」に対する保険適応になっていない薬がほとんどです。

メトロニダゾール

世界的には標準的な酒さ治療薬です。

ニキビダニや寄生虫といった「菌」が原因の酒さや赤ら顔、ニキビなどにも効果があります。他にも抗原虫作用、抗菌作用、抗炎症作用、免疫抑制作用等があります。

イベルメクチン

イベルメクチンは、酒さの原因とされるニキビダニを駆虫作用によって死滅させる効果があります。また、炎症性サイトカインの生成を阻害して炎症を抑え、症状を改善します。

イベルメクチンは比較的早期に効果が得られると言われています。しかし効果が得られるまでの期間は様々です。いずれにせよ忍耐が必要です。

ブリモニジン

皮膚内の毛細血管に作用し血流を低下させ 赤みを低減させる効果があります。赤みの低減には強力な効果を発揮してくれる外用剤ではあります。しかし塗り方やその反応に慣れが必要です。

トラネキサム酸

酒さやニキビ等 慢性炎症性疾患では、皮膚内の炎症に伴い 血管透過性が高まり赤みが強く見えてきます。トラネキサム酸は炎症を鎮め血管透過性を軽減してくれる効果が期待できます。

内服外用剤 各種導入に使用します。

まとめ

酒さは、明確で確実な治療法はできていません。地道に行なっていくことが必要となります。
当院では、酒さの治療は皮脂腺の抑制を主体に考え、毛細血管拡張については、比較的マイルドな形でアプローチする。
この形が良いと考えています。

各種外用剤と共にプラズマ、各種レーザーを使用した治療法で開始していきます。
必要に応じて、エクソソーム・ACRS療法等を検討していきます。

エクソソーム・ACRS療法は 炎症性疾患の抑制に効果が高い治療法の一つです。炎症によって疲弊した肌の回復に大きく寄与することが期待されます。

また、ボツリヌス毒素が、酒さの赤み(+ほてり炎症)を軽減する効果が期待できる等 新たな選択肢になってきています。

酒さ様皮膚炎

酒さ様皮膚炎は 「ステロイドを長期使用していた」ことに起因して “酒さ”と同じような症状を呈する皮膚疾患とされています。

酒さ様皮膚炎は 酒さのように びまん性紅斑やニキビ様のぶつぶつ(丘疹、膿疱)が出てきます。

また、使用薬剤を中止した際に増悪するリバウンド現象が起きることが特徴です。

酒さ様皮膚炎の治療法

酒さ様皮膚炎の治療法では、まず ステロイドを中止することです。

リバウンドによる増悪が一過性に起き その後改善していくとされていますが、その間、皮膚症状が激しく悪化しやすい、治療が長期にわたりやすい等から、精神的に辛い状態になってしまうことも少なくありません。

酒さに準じた治療が主としつつ、リバウンドが出てきた場合には その症状を低減させる処置を行ないます。

リバウンド

ステロイドの使用を中止した後はリバウンド(反張現象)が起こる可能性があります。数週間から数か月程 赤みが増したり、ただれや顔のむくみなどの症状が続きます。このような一過性の増悪ののち 症状が改善していくとされています。

ステロイド使用を中止して しばらく経ってから リバウンドが出ることもあります。この時に症状を抑えるためステロイド等を使用すれば 離脱が遠のき治療期間が延びてしまいます。治療を困難にさせる要因であり、悩みどころです。

酒さと酒さ様皮膚炎

皮膚疾患で ステロイドやタクロリムス軟膏を使用する事はよくある事です。

しかし 全ての方に酒さ様皮膚炎が起きるわけではありません。

また、酒さと酒さ様皮膚炎は別の疾患とされています。

酒さ様皮膚炎の方は、元々(軽度の)「酒さ」を持っており 湿疹などで上記の外用剤を使用することで 修飾されて 酒さ様皮膚炎となっている可能性も示唆されています。