ルビーレーザーとYAGレーザー、 シミ治療にはどちらが向いていますか?
レーザーの「性能の高さ」と「シミへの効果」は別物です。
Q.「ルビーレーザーはYAGレーザーより性能が劣るからシミが取れるわけない」というブログを読みました。当院では両方使っているようですが、どのようにお考えですか?
A.レーザー光源としての「出力性能」はYAGレーザーが上ですが、シミ(メラニン色素)の治療効果は波長の特性によって決まります。一般的な表在性のシミには、メラニン吸収率の高いルビーレーザーの方が効果的です。ただし、シミの種類や深さによって最適なレーザーは異なるため、当院では使い分けています。
シミの種類と治療法の全体像は、シミ治療総合ページを参照ください。
この記事の目次
「レーザーの性能」と 「シミへの効果」は別物
「性能が高い=シミがよく取れる」という誤解が生じやすいですが、これは機械の出力と医療効果を混同しています。
なぜYAGレーザーは「高性能」と言われるのか
Nd:YAGレーザー(ヤグレーザー)は4準位レーザーという発振方式を採用しており、ルビーレーザー(3準位系)より効率よく高出力を引き出せます。そのため工業・研究分野で広く使われており、「性能が高い」と表現されることがあります。
また、YAGレーザーは1秒間に10発以上の高速連射が可能ですが、ルビーレーザーは2〜3発程度と照射スピードがやや遅くなります。とはいえシミ治療では一点一点丁寧に照射するため、連射速度は治療効果にほとんど影響しません。
シミ治療では「出力」より「波長」が重要
肌のシミ(老人性色素斑・そばかすなど)はメラニン色素の集まりです。レーザー治療では「選択的光熱分解」という原理に基づき、メラニンだけに光エネルギーを吸収させ、周囲組織へのダメージを最小限にします。
この原理において重要なのは、メラニンへの反応が高く、血液(酸化ヘモグロビン)への反応が低い波長を選ぶことです。シミ治療で要求される出力は決して大きくなく、一般的な医療用Qスイッチルビーレーザーで十分対応できます。
下のグラフは、波長とメラニン・酸化ヘモグロビンの吸収率の関係を示しています。
ルビーレーザーが表在性シミに 向いている理由
694nmという波長の優位性
ルビーレーザーの波長は694nmです。この波長はメラニン色素への吸収率が非常に高い一方で、酸化ヘモグロビン(血液の赤い色素)への吸収が低いという特性があります。
つまりメラニンだけを選んで加熱・破壊し、周囲の血管やコラーゲンにはほとんど反応しないため、日光性色素斑(老人性色素斑)やそばかすといった表在性のシミに対して高い選択性を発揮します。実際、少ない施術回数でシミが除去できるケースが多いことが報告されています。
昔から「シミならルビー」と言われるほど実績のある波長であり、表在性シミ治療のゴールドスタンダードとして長年使用されてきました。
1064nm(Nd:YAG基本波)はシミに不向き
Nd:YAGレーザーの基本波である1064nmは、メラニンへの吸収率が694nmに比べて弱くなります。その代わり皮膚深部(3〜5mm)まで到達する深達性があるため、真皮の血管病変やコラーゲン再生(リフトアップ)などには有効です。
また1064nmを利用した「レーザートーニング」は、低出力で均一に照射することで肝斑のコントロールに用いられますが、これはメラニンを直接破壊するというよりメラニン産生を抑制する目的で使用します。表在性の通常シミへのアプローチとは作用が異なります。
532nm(KTP変換Nd:YAG)の注意点
Nd:YAGレーザーの周波数を2倍に変換した532nm(KTPレーザー)は、メラニン選択性が高く表在性の色素斑に反応します。しかし同時に、酸化ヘモグロビンへの吸収も強いため、血管への刺激が大きく赤みが生じやすいという特性があります。口唇のメラノーシスなど特定の部位や症状には有効なケースがありますが、顔全体のシミ治療での使用は限定的です。
YAGレーザーが活躍するケース
YAGレーザーがルビーより適している場面も存在します。
- 深いシミ・真皮性色素斑:1064nmの深達性を活かし、ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)など真皮深部のメラニンにアプローチする
- 肝斑のコントロール:低出力1064nmトーニングでメラニン産生を穏やかに抑制する
- 盛り上がったシミ(脂漏性角化症など):Er:YAGレーザーで物理的に組織を蒸散させる
- 赤ら顔・毛細血管拡張:Nd:YAGの血管への作用を利用する
このように、YAGレーザーは「多機能プラットフォーム」として幅広い悩みに対応できるのが強みです。シミ以外の悩みと組み合わせて治療する場合に選択肢となります。
当院での使い分け
当院では複数のレーザーを導入しており、シミの種類・深さ・状態に応じて使い分けています。
- ルビーフラクショナル:日光性色素斑・そばかす・ADMなど表在〜真皮浅層の色素病変に対する第一選択。ダウンタイムを最小限に保ちながら高い色素選択性を発揮します。複数回の治療が必要な理由についてはこちら。
- Helios 785(785nmピコレーザー):785nmという波長はメラニン吸収率が694nmに比べやや下がりますが、酸化ヘモグロビンへの吸収は極めて低く、ピコ秒パルスの光音響効果(光機械的破壊)がその差を補います。従来のナノ秒レーザーと比べてPIH(炎症後色素沈着)リスクが大幅に低く、特にシミの多い方や肌の弱い方に向いています。当院ではルビーフラクショナルと併用しながら症状に応じて選択しています。
- PQXピコレーザー(532nm/1064nm):濃いシミのスポット照射や、肝斑のトーニング治療に使用。
- Er:YAGレーザー:盛り上がった脂漏性角化症などの物理的な蒸散除去に使用。
「ルビーとYAG、どちらが優れているか」という問いより、「そのシミにはどの波長が最適か」という発想が正確です。初診時にVISIA・VECTRA等による肌診断でシミの種類と深さを確認し、最適な治療プランをご提案しています。
監修者情報(医師紹介)

監修医師:佐藤 雅樹 (さとう まさき)
ソララクリニック 院長
専門分野:美容皮膚科
2000年 順天堂大学医学部卒。順天堂大学医学部形成外科入局。 大学医学部付属病院等を経て、都内美容皮膚科クリニックにてレーザー治療の研鑽を積む。2011年3月 ソララクリニック開院 院長就任。2022年 医療法人 松柴会 理事長就任。日本美容皮膚科学会 日本形成外科学会 日本抗加齢医学会 日本レーザー医学会 点滴療法研究会 日本医療毛髪再生研究会他所属。
様々な医療レーザー機器に精通し、2011年ルビーフラクショナル搭載機器を日本初導入。各種エネルギーベースの医療機器を併用する複合治療に積極的に取り組む.
最終更新日