光治療(光フェイシャル,IPL)とQスイッチレーザーの関係
シミの治療は大きく分けて 光治療(IPL,光フェイシャル)と Qスイッチレーザーに別れます。
それぞれに長所短所がありますから、この点を十分理解していただくことで、当院での時間は 更に有意義なものとなると考えています。
ネット上には情報が散乱し 「シミはレーザーで1回で完全に取れる!!」と書いてあることがあるため トラブルの原因となることがあります。
シミには、々な種類があるものですから、Qスイッチレーザーが良い適応となるものもありますが、全てが1回で気軽に取れるという訳にはいかないのが 本当のところです。
この記事の目次
しみ治療 Qスイッチレーザーと光治療(光フェイシャル)の違い
シミの治療に使用される代表的な機種は、光フェイシャルとして有名になった光治療器(IPL) と Qスイッチレーザー(YAG Ruby Alex)の2種にわかれます。それぞれ長所短所があります。その点を十分に理解することで、当院の治療方針も理解していただけると思います。
Qスイッチレーザーは「最後の砦」
1983年にHarvard大学のRox R Andersonらによって提唱された 選択的光熱融解理論Selective Photothermolysisというものがあります。 生体内の色素顆粒のみに レーザー光を吸収させることで 色素顆粒のみ加熱させて その部位のみ光融解させる と言う理論です。目標細胞のみを加熱し周囲の組織への影響を最小限度に抑える と言う理論に合致した機器が Qスイッチレーザーです。
Qスイッチとは、光を増幅し 非常に短い時間(ns)に放出させることで、エネルギーの高い(ジャイアントパルス)レーザー光を得ることが出来る技術です。非常に短い時間のみ発振しますので、周囲組織へ熱が伝わる前に 目標細胞のみ気化・破壊されてしまいます。
Qスイッチレーザーは、周囲組織へのダメージを最小限度としながら、目標のシミ(色素)のみを選択的に治療することができる治療機です。
このように Qスイッチレーザーは、シミの治療では無くてはならない機器です。後述する光治療器で取れないシミ(アザ)も Qスイッチレーザーの適応です。
ところが 回復の際に 欧米人と比べて炎症後色素沈着(PIH) が比較的多く出現しやすいことが 治療を組み立てる上で問題となります。数ヶ月経てPIHが引き 治療効果が見えてくるので、十分理解していただければ全く問題ないのですが、「治療したのに濃くなった」と言われてしまう原因となります。
このような 言わば弱点があるため、最近は第一選択となることは 現実的には無くなって来ました。
(最近は、フラクショナルQスイッチルビーレーザーが出現したことで、PIHの可能性が格段に減少し、選択しやすくなって来ました。後述)
光治療では難しいシミ・アザに対しては Qスイッチレーザーで治療しなければいけません。言わば「最後の砦」です。
光治療器(光フェイシャル)を主力に
光治療器は、単一波長のレーザー光と異なり、様々な波長を含む光です。不要な波長をフィルターで除外することで、しみの治療のみならず、肌質改善,ニキビの治療など、様々な効果を得ることができます。一つ一つの効果は、レーザーと比較すると減弱するかもしれませんが、現在は技術の進歩によって フィルターを選択することで、実は大部分のしみに対して 効果を得ることが可能です。
光治療の弱点は、定期的に治療を行うことで、少しずつ改善させていくということ。その代わり 炎症後色素沈着のリスクは、レーザーと比べるまでもなくかなり少ないため、安心して行なっていくことができます。
また、光治療器は、大部分のしみに対して効果を得ることが可能ですが、一部のしみ(アザ)には、効果は限定的です。そのようなしみは、Qスイッチルビーレーザーの良い適応だったりします。
しみの治療 レーザーを光治療に組み込む
しみの治療では、Qスイッチレーザー,光治療器双方の長所短所を理解していただくことで、効果的な治療を行うことができると考えております。
シミの治療では、光治療をベースとしながら、Qスイッチレーザーを部分的に使用することで、炎症後色素沈着のリスクを軽減させつつ 単体では困難であった治療効果の拡大へとつながります。
光治療器も進化してきました。
光治療器は、少しずつ進歩してきました。以前は数台の光治療器が必要であった治療さえも、最新機器はフィルター交換のみで可能となっています。また、パルス幅を調整することで、レーザーに準じた効果を得ることができるものまで出てきています。
当院で導入した光治療器「 BBL 」は、7種類のフィルターを装備し 且つ パルス幅調整をリニアに行うことができる最新機種です。通常の機種と異なり フラッシュランプを2個装備することで、安定した発光と スクエアパルス照射を可能としています。詳細はこちらのページを参照ください。
更に、BBLでは、フィネスアダプターを使用することで、しみをピンポイントで治療することができます。ピンポイントでより反応を高める設定の照射を行うことで、治療効率を高めていくことができます。また、肝斑など、照射したくない部位に照射してしまうリスクを軽減することにもつながります。
シミの治療では、最適な波長帯を選択し、適切な出力で照射をすることが必要であり、且つ照射に伴う反応を その場で確認する必要があります。そのため、当院では医師が顔への光,レーザー照射を行なっています。安全性の確保と、より高い効果を得るためには、医師が行うという責任が必要であると考えています。
Qスイッチレーザーも フラクショナル化することで、新たな進歩を遂げています
最近のトピックの一つ フラクショナルQスイッチルビーレーザー を導入しています。このレーザーは、通常のQスイッチレーザーを 細かいドットに分けて しみの部位に分割照射を行うことが出来る機器です。
コンベンショナルなQスイッチレーザーは、面で反応させるため、炎症後色素沈着のリスクがありましたが、分割照射(フラクショナル化)とすることで 炎症後色素沈着のリスクをかなりの確率で軽減しています。
更に健常皮膚を残すことで、絆創膏等の被覆材を使用しなくても良い、見た目の反応が少し(カサブタ様の変化が目立たない) 等 Qスイッチレーザーの治療に いまいち踏みきれなかった方にも 受けやすいものとなっています。
分割照射(フラクショナル化)されていますから、1回の照射でシミが取れてしまうというものではありませんので、立ち位置としては、光治療と Qスイッチレーザーの間 と言えますが、後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)の様に Qスイッチレーザーでの治療を複数回必要なしみ(アザ)の治療の際には、継続のしやすさと、回復期間の短縮による 治療期間短縮にもつながるので、良い適応となっていくでしょう。