マリオネットラインの治療ガイド(仙台)

口角の両側から顎にかけて降りる溝を、解剖学的にひもとき、タイプ別に治療を選びます。

マリオネットラインは、口角の両側から下顎に向かって縦に降りる溝のことです。お顔のタルミの中でも特に「老けた印象」につながりやすい部位ですが、原因は人によって大きく異なります。

当院では、頬の脂肪・支持靭帯・SMAS層・骨格・表情筋の使い方など複数の層をひとつずつ評価し、その方に合った治療を順番に組み立てます。

本ページでは、まずマリオネットラインがなぜ・どのようにできるのかを解剖学から解きほぐし、続いて「あなたはどのタイプか」を5つに分類して、最初に検討すべき治療を整理します。

※ 効果には個人差があります。すべての方に同等の結果が出るとは限りません。最終的な治療方針は診察・肌診断機器による評価のうえご提案します。

この記事の目次

  1. 1. マリオネットラインとは
    1. 1-1. ほうれい線・ゴルゴ線との違い
    2. 1-2. 何歳から出やすいか・進行のスピード
    3. 1-3. 「シワ」と「たるみ」の違い ── 陥凹型と重力型
  2. 2. なぜ口角の脇に縦の線が降りるのか ── 解剖学から読み解く
    1. 2-1. DAO(口角下制筋)の過活動とエイジング
    2. 2-2. 頬脂肪コンパートメントの下垂 ── ジョールファットの動き
    3. 2-3. 支持靭帯(mandibular ligament)の弛緩
    4. 2-4. SMAS層と表情筋の関係
    5. 2-5. 下顎骨の経年的な変化
  3. 3. 自分のタイプを知る ── 顔タイプ別5分類
    1. 3-1. 脂肪重力型(ふっくら下垂タイプ)
    2. 3-2. 皮膚弛緩・コラーゲン低下型(ハリ低下タイプ)
    3. 3-3. 表情筋過活動型(口元クセ強タイプ)
    4. 3-4. 骨格型(あご骨格タイプ)
    5. 3-5. 複合型(ミックスタイプ・最多)
  4. 4. タイプ別 「最初の一手」 ロードマップ
  5. 5. 治療法・機器の特徴
    1. 5-1. 引き締め系:高周波・超音波・マイクロ波・レーザーの使い分け
    2. 5-2. ボリューム系:ヒアルロン酸の使い所と「打ちすぎリスク」
    3. 5-3. 表情筋系:DAO ボトックス(少量・補助的に)
    4. 5-4. 再生系:ジュベルック・エクソソーム・ミラジェット
    5. 5-5. 糸リフトについての当院の方針
  6. 6. 治療を受ける前に知っておきたいこと
    1. 6-1. ヒアルロン酸を打ちすぎると逆効果になる理由
    2. 6-2. ボトックスで「無表情」にしないための単位設計
    3. 6-3. 一回で完璧を目指さない ── 機器ごとに違うペースで組み立てる
    4. 6-4. 自然さを大切にするための、ご相談の入り口
  7. 7. ダウンタイム・リスクの目安
    1. 7-1. 機械系治療(フォトナ6D・XERF・ソフウェーブ・リヴァイヴ)
    2. 7-2. 注入系治療(ジュベルック・ミラジェット/DAO ボトックス/ヒアルロン酸)
  8. 8. ソララクリニックでの治療フロー
    1. 8-1. 初診カウンセリング
    2. 8-2. 肌診断機器(VISIA・ベクトラ)による客観評価
    3. 8-3. ご提案 → 同意 → 施術 → アフターフォロー
  9. 9. よくあるご質問
  10. 10. 参考文献・エビデンス

1. マリオネットラインとは

マリオネットラインの見え方(女性の顔のクローズアップ・イメージイラスト)
図1A:マリオネットラインの見え方(イメージ)。口角の脇から下顎に向かう縦の溝として現れます。
※ 効果には個人差があります。本イラストはイメージ図です。

マリオネットラインという呼び名は、操り人形(マリオネット)の口元に描かれた縦の線に似ていることに由来します。医学文献では labiomandibular fold(口唇下顎溝)あるいは labiomandibular crease などと呼ばれ、口角の脇から下顎縁に向かって走る、皮膚の陥凹のことです。

口元のシワは、お顔の中でも特に他人の視線が集まりやすい部位です。とくに会話中・無表情のときにこの溝が深く見えると、年齢以上に疲れた・暗い印象を与えてしまうことがあります。「マリオネットラインを治したい」とご来院される際、その背景には「フェイスラインが下がった気がする」「口元が下がってへの字に見える」という上顎・下顎全体への気がかりが隠れていることも少なくありません。

1-1. ほうれい線・ゴルゴ線との違い

口元周辺のシワには複数の名称があります。それぞれ走行・原因・治療の入り口が異なるため、まず違いを整理します。

ほうれい線・マリオネットライン・ゴルゴ線の走行の違い(イメージイラスト)
図1B:3つの代表的なシワ・ラインの走行(オレンジ=ゴルゴ線、ピンク=ほうれい線、赤=マリオネットライン)
  • ほうれい線:小鼻の脇から口角に向かって斜め下に走る溝。頬の脂肪と上唇の境目にあたり、頬の脂肪の重みと皮膚の弾力低下が主因になりやすい部位です。ほうれい線の治療ページ »
  • マリオネットライン:口角から下顎に向かって縦に降りる溝。口角下制筋(DAO:Depressor Anguli Oris)の引き下げ、ジョールファット(ジョールファット:顎ラインの皮下脂肪コンパートメント)の下垂、皮膚と支持靭帯の弛緩が複合して形成されます。
  • ゴルゴ線:目頭の下から頬の中央に向かって斜めに走る溝。中顔面(mid-face)のボリューム低下と頬骨靭帯の緩みが主因です。ゴルゴ線の治療ページ »

三つは隣り合う領域で、それぞれが他の溝の見え方に影響を与えます。たとえばほうれい線が深くなるとマリオネットラインも引き立ちますし、逆もまた同じです。実際の診察では、お顔全体のバランスを見ながら、どの溝にどう介入するのが最も自然か、を一緒に検討します。

マリオネットラインだけを単独で治療しようとすると、結果として頬全体の流れが不自然になることがあります。そのため当院では、最初の診察で「いま気になっている溝」だけでなく、その手前にある原因(例:頬脂肪の下垂、骨格の支え)を確認し、必要があれば隣接領域も含めて治療計画を立てます。

1-2. 何歳から出やすいか・進行のスピード

マリオネットラインがいつから目立ち始めるかは、お肌のタイプ・骨格・生活習慣で個人差が非常に大きい部位です。一般論としては、コラーゲンとエラスチンの産生量が緩やかに低下し始める30代後半から、薄いラインとして自覚される方が増え始めます。

40代に入ると、笑顔のときだけでなく無表情のときにも線が残る方が増え、50代以降は ジョールファット(顎ラインの脂肪)の下垂が加わって、より縦の溝として目立つ傾向があります。

年齢以上に進行を早める要素

ただし、「年齢=深さ」ではありません。下記のような要素は、年齢以上に進行を早めることが知られています。

  • 骨格:下顎が華奢・後退気味の方は、若いうちから頬の支えが少なく、マリオネットラインが出やすい傾向があります。これは「老化」というより、もともとの骨格特徴です。
  • 表情筋のクセ:無意識に口角を引き下げるクセ(DAOの慢性的過活動)があると、20〜30代でも線が刻まれることがあります。
  • 体重変動:短期間に大きく痩せた方は、頬脂肪の収縮で皮膚が余り、マリオネットラインが急に目立つことがあります。
  • 紫外線・喫煙:真皮のコラーゲン・エラスチン繊維の劣化を加速します。とくに喫煙はコラーゲン産生の低下と関連が指摘されています。
  • 睡眠時の姿勢:横向き・うつ伏せで長時間圧迫される方は、皮膚の折り目として定着することがあります。

進行を遅らせるためのホームケア

進行のスピードを遅らせるという観点では、紫外線対策・禁煙・適切な保湿といったホームケアの基本が、医療治療と同じくらい重要です。当院では、診察時にこれらの生活背景もあわせて伺い、治療と並行してご提案できる範囲でお伝えします。

1-3. 「シワ」と「たるみ」の違い ── 陥凹型と重力型

陥凹型と重力型のマリオネットラインの違い(イメージイラスト)
図1E:マリオネットラインのタイプ比較イメージ。左:陥凹型(頬の脂肪が少なく、口角脇に「凹み」として見える)/右:重力型(自然なボリュームで頬の組織が下垂し、口角脇に「段差」として見える)。同じ縦の溝でも、原因が違えば最初に手をつける治療がまったく異なります。

マリオネットラインを治療するうえで、まず分けて考えたいのが「陥凹型(かんおうがた)」「重力型」です。同じ溝に見えても、原因が違えば最初に手をつけるべき治療がまったく変わります。

陥凹型 ── ボリューム不足が原因

陥凹型は、その部位そのものが「凹んでいる」状態です。皮膚や皮下組織のボリュームが不足し、相対的に溝が深く見えます。痩せ型の方や、もともと骨格が華奢な方、急に体重が落ちた方に起こりやすいタイプです。陥凹型に対しては、ヒアルロン酸などのフィラーで足りないボリュームを的確に補うアプローチが第一選択になりやすい傾向があります。

重力型 ── 組織の下垂が原因

重力型は、その部位の上にある組織(頬の脂肪・皮膚)が下方に下垂し、口角の脇に「段差」として溝を作っているタイプです。頬がふっくらしている方や、フェイスライン全体が下がってきている方に多く見られます。重力型に対しては、ボリュームを足すよりも、引き締め系の治療(フォトナ6D、XERF、ソフウェーブなど)で組織の支えを取り戻すアプローチの方が、自然な仕上がりになりやすい傾向があります。

実際は混在型が大半

実際には、陥凹型と重力型のどちらか一方だけ、というケースは少なく、両方が混在していることが大半です。それでも、「主因がどちらか」を最初に見極めておくことで、治療の順番を間違えにくくなります。たとえば「重力型が主因」の方にいきなりヒアルロン酸を多く打ってしまうと、頬の重さが増して、結果的にマリオネットラインがさらに目立ってしまう、ということが起こり得ます。

当院の診察では、お顔の写真を真顔・笑顔・横顔で撮影し、肌診断機器(VISIA)の解析と合わせて、まず「あなたの主因」を特定します。そのうえで、本ページ第3章でご紹介する顔タイプ別の治療ロードマップに沿って、最初の一手をご提案します。

2. なぜ口角の脇に縦の線が降りるのか ── 解剖学から読み解く

マリオネットラインに気づきを向ける女性のイメージ(解剖の導入イラスト)
図1F:マリオネットラインの形成は、皮膚・脂肪・支持靭帯・SMAS・骨格の5層が同時に変化することで起こります。本章では、それぞれの層を順に解きほぐしていきます。

マリオネットラインを「皮膚にできた一本のシワ」だと捉えてしまうと、治療はうまくいきません。実際には、皮膚・皮下脂肪・支持靭帯・SMAS層・下顎骨という5つの層が同時に変化することで、表面に縦の溝として現れているのです。それぞれの層がどう変化するのかを、順番に解きほぐしていきます。

頬から下顎の解剖層構造(表皮・真皮・皮下脂肪・SMAS・骨)
図1B:頬から下顎にかけての層構造(イメージ)。表皮・真皮・皮下脂肪・SMAS層・下顎骨の5層が同時に変化することで、表面の溝が深まります。

2-1. DAO(口角下制筋)の過活動とエイジング

口角の動きを支配している筋肉は複数ありますが、マリオネットラインの形成に最も深く関わるのがDAO(口角下制筋)です。下顎骨から口角に向かって扇状に走り、その名のとおり「口角を下に引き下げる」働きをします。

加齢でDAOが優位になっていく仕組み

本来、DAOは大頬骨筋・小頬骨筋(口角を引き上げる筋)とバランスを取りながら表情を作っています。しかし、加齢に伴って引き上げ筋の収縮力が低下し、相対的にDAOの引き下げが優位になることが知られています。さらに、無表情のときにも口角を引き下げてしまうクセ(口角下制筋の慢性的過活動)が加わると、口角が常に下方向に引かれた状態になり、その延長線上にマリオネットラインの溝が深まっていきます。

DAOボトックスは「補助」の位置づけ

DAOの過活動が顕著な方では、ボツリヌストキシン(ボトックス)をDAOへごく少量だけ注射することで、口角の下方向への引っ張りを和らげる治療が選択肢になります。ただし当院では、DAOへのボトックスは「メインの治療」としては基本的に位置づけていません。引き上げ筋とのバランスや、咀嚼・発音への影響に細やかな調整が必要なため、必要最小限の単位で、補助的にお使いいただく方針としています。

DAOの過剰収縮を本人が指で確認する方法として、口角の脇を軽く触れた状態で軽く笑顔をつくると、ロープのような筋肉の張りを感じ取れることが報告されています(参考:Labbé D, et al. 2012)。診察ではこの所見と、無表情時の口角の高さを合わせて、DAOの過活動が主因かどうかを評価します。

顔の表情筋オーバービュー(DAO・大頬骨筋・小頬骨筋を含む)
図2-A:顔の表情筋全体図(参考)。マリオネットライン形成には、口角を引き上げる筋(大頬骨筋・小頬骨筋)と、引き下げる筋(DAO・広頸筋)のバランスが関わっています。

口角下制筋(DAO)の位置を赤くハイライトした表情筋イラスト
図2-B:口角下制筋(DAO:Depressor Anguli Oris)の位置。口角を下方に引き下げる働きがあり、過活動になるとマリオネットラインの溝が深くなる原因の一つになります。

2-2. 頬脂肪コンパートメントの下垂 ── ジョールファットの動き

顔の表在性脂肪パッドの加齢変化(Youthful FaceとAging Faceの比較解剖イラスト)
図1D:表在性脂肪パッド(superficial fat pads)の加齢変化(解剖イラスト)。若い顔(左半)では各脂肪コンパートメントが整然と並んでいますが、加齢に伴い(右半)下方への移動と境目の不揃いが起き、ジョールファット部の段差が表面に現れます。
※ 解剖学的な比較イラストであり、特定の患者様の症例写真ではありません。

皮下脂肪は「1つの層」ではなく、区画に分かれている

顔の皮下脂肪は「ひとつの厚い層」ではなく、複数の独立したコンパートメント(区画)に分かれていることが、Rohrich & Pessa による解剖学研究で示されています(Plast Reconstr Surg 2007;119(7):2219-2227)。それぞれのコンパートメントは、隔壁(septa)と呼ばれる結合組織で仕切られていて、加齢とともにそれぞれ別々の動きをします。

ジョールファットが下方にずれ動く

マリオネットラインの形成に特に関係するのは、ジョールファット(ジョールファット:顎ライン直上の皮下脂肪コンパートメント)です。ジョールファットは皮下脂肪コンパートメントのうち最も下方に位置し、加齢とともにこのコンパートメント内で脂肪が下方にずれ動いていきます。

同時に、ジョールファットの上方に位置するコンパートメント(middle cheek fat)との間の境界線が皮膚の表面に「段差」として浮き出てくると、それがマリオネットラインの正体になります。

「ヒアル一辺倒」で効きにくい理由

つまり、皮下脂肪が「全体として落ちる」のではなく、区画ごとに動き方が違うために、コンパートメントの境目が表面に浮き出るという考え方が、現代の顔面エイジング解剖学の基本的な見方です。これは治療設計にも直接影響します。ジョールファットが下垂しているケースでは、口角の脇にいきなりヒアルロン酸を打ってもうまくいかず、まず頬全体を引き締めて下垂を抑える方が結果的に自然になることが多いです。

2-3. 支持靭帯(mandibular ligament)の弛緩

顔の支持靭帯(Ligaments of the Face):11か所の靭帯位置を示す解剖イラスト
図1C:顔の支持靭帯(Ligaments of the Face)。マリオネットラインの形成と最も関係するのは 11. Mandibular ligament(下顎靭帯) ですが、その上方に位置する 6. Zygomatic ligament(頬骨靭帯)や 8. Masseteric ligament(咬筋靭帯)の弛緩も連鎖的に影響します。
※ 解剖学的なイラスト(参考図)です。

支持靭帯とは:皮膚と骨をつなぐ「アンカー」

顔の皮膚と深部組織は、複数の支持靭帯(retaining ligaments)で骨や深層筋膜につながれています。支持靭帯は、若いうちは短く弾力性のある結合組織として、皮膚と深部の位置関係を保つ役割をしています。

代表的なものに、頬骨靭帯(zygomatic ligament)、咬筋皮膚靭帯(masseteric cutaneous ligament)、下顎靭帯(mandibular ligament)があり、それぞれ顔の特定の領域を支えています。

下顎靭帯のゆるみが「外側の段差」を生む

マリオネットラインに最も関係する支持靭帯は、下顎靭帯(mandibular ligament)です。下顎骨に付着し、口角の少し外側で皮下組織を骨に繋ぎ止めています。

Minelli・Yang・Mendelson らの2022年の解剖学研究では、下顎靭帯そのものは深層(platysma下層)に位置し、皮下層には独立した構造としては存在しないこと、jowl の形成は皮下層における結合組織の伸長と関係していることが示されています(Aesthetic Plast Surg 2023;47(1):170-180)。

加齢に伴ってこの皮下結合組織が伸長すると、皮膚と骨の間で「皮膚側の方が動きやすい」状態になります。ジョールファットの下垂を抑える役割が弱まり、口角の脇に段差として浮き出やすくなる、というのが解剖学的に説明される機序のひとつです。

引き締め系のレーザー・高周波・超音波治療は、この皮下結合組織にコラーゲンの再構築を促し、伸長してしまった組織のテンションを取り戻すアプローチに位置づけられます。即効的な変化というより、3〜6か月かけて徐々に支えが戻ってくる、という性質の治療です。

2-4. SMAS層と表情筋の関係

SMAS(スマス)層は、皮膚の深部にある膜状の結合組織で、表情筋を包み込みながら、顔全体の輪郭を支える役割をしています。フェイスリフト手術の術野として有名な層ですが、非手術の引き締め系治療でも、このSMAS層に熱エネルギーを届けてコラーゲンの収縮・再生を促すことが治療の核になります。

マリオネットラインの治療で重要なのは、SMAS層が「単独で支えを担っているわけではない」という点です。SMAS層の上には皮下脂肪コンパートメントがあり、下にはDAOを含む表情筋があり、それらが全体として動いています。SMASだけを引き締めても、上の脂肪が下垂していたり、DAOが過活動だったりすると、思ったほど効果が見えないことがあります。

当院でフォトナ6D・XERF・ソフウェーブ・リヴァイヴといった機器を使い分けるのは、それぞれが得意とする「届く深さ」と「熱量の入れ方」が違うためです。詳しい使い分けは第5章「治療法・機器の特徴」でお伝えします。

2-5. 下顎骨の経年的な変化

マリオネットラインの最も奥にあるのが、下顎骨です。下顎骨は加齢とともに少しずつ吸収され、顔の輪郭が「内側に縮む」ことが知られています。とくに歯を喪失したり、長期間義歯を使用していたりすると、下顎の骨吸収が進みやすくなります。

骨格の支えが小さくなると、その上に乗っている軟部組織(皮膚・脂肪・SMAS・表情筋)が相対的に余り、口角の脇から下顎にかけての溝として現れやすくなります。この場合、皮膚や筋肉の問題というより「土台の縮み」が主因なので、治療はリガメントポイントへのヒアルロン酸注入で骨格性ボリュームを補う方向が選択肢になります。

骨格型のマリオネットラインを引き締め系の治療だけで何とかしようとすると、いくら表面を引き締めても土台のボリューム不足が解決しないため、結果が出にくいことがあります。第3章の顔タイプ別判定では、この骨格型かどうかを見極めるポイントもお伝えします。

3. 自分のタイプを知る ── 顔タイプ別5分類

第2章で見てきたように、マリオネットラインは複数の層が同時に変化して形成されます。ただし、どの層の変化が「主因」になっているかは、人によって大きく異なります。当院では、マリオネットラインを訴えて来院される方を、おおまかに5つのタイプに分類しています。タイプによって最初に検討すべき治療が変わるため、ここを誤ると遠回りになります。

脂肪重力型(ふっくら下垂タイプ)
脂肪重力型
皮膚弛緩型(ハリ低下タイプ)
皮膚弛緩型
表情筋過活動型(口元クセ強タイプ)
表情筋過活動型
骨格型(あご骨格タイプ)
骨格型
複合型(ミックスタイプ・最多)
複合型

図3:顔タイプ別5分類のイメージ(左から順に5タイプ)

あなたはどのタイプ? 5タイプ判別フロー セルフチェックの目安です。最終的な判定は診察でご確認ください。 START マリオネットラインが気になる Q1.口角を引き下げる「クセ」がある? 無表情のときも口角が下がっている/力を抜いてもへの字 YES ▼ 表情筋過活動型 (口元クセ強タイプ) NO Q2.頬がふっくら、フェイス ライン全体が下垂している? ▼ 脂肪重力型 (ふっくら下垂タイプ) YES → NO ↙ Q3.顎の骨格が華奢/前に出ていない? 下顎が小さく頬の支えが乏しい YES ▼ 骨格型 (あご骨格タイプ) NO Q4.肌のハリ低下が主因? 皮膚が薄く乾燥・小ジワも併発 YES ▼ 皮膚弛緩・コラーゲン低下型 (ハリ低下タイプ) NO ▼ 複合型 (ミックスタイプ/最多) ※ 簡易セルフチェックの目安です。診察では肌診断機器(VISIA等)と医師の評価で正確に判定します。

以下、各タイプの特徴と、最初に検討する治療の方向性をご紹介します。あくまでセルフチェックの目安ですので、最終的な判定は診察での評価でご確認ください。

3-1. 脂肪重力型(ふっくら下垂タイプ)

脂肪重力型(ふっくら下垂タイプ)
図3-1:脂肪重力型のイメージ

特徴:頬がふっくらしていて、フェイスライン全体が重く下がっている印象。ジョールファットの下垂が顕著で、口角の脇に段差として現れている方。下を向いたときと正面のときでフェイスラインの見え方が大きく変わる傾向。

主因:頬脂肪コンパートメントの下垂と、皮下結合組織の伸長。

最初に検討する治療:このタイプは下方に下垂したジョールファットや皮下結合組織に介入する必要があるため、深部まで加熱できる機器が第一選択になります。

当院ではフォトナ6Dの両面照射、リヴァイヴ(マイクロ波で深部加熱が得意)、XERF(デュアル周波数RFで真皮浅層〜SMASまで)を中心に、ご希望や肌の状態に応じて組み合わせます。

ソフウェーブは作用層が真皮中層なので、本タイプの第一選択というより、肌のハリ低下が併存している場合の補助的な選択肢になります。

注意:このタイプにいきなりヒアルロン酸を多めに注入してしまうと、頬の重さが増して、結果的にマリオネットラインがより深く見えてしまうことがあります。まず深部から引き締めて頬の重さを減らしてから、必要があれば限定的にヒアルロン酸を補う、という順番が結果につながりやすい傾向があります。

3-2. 皮膚弛緩・コラーゲン低下型(ハリ低下タイプ)

皮膚弛緩型(ハリ低下タイプ)
図3-2:皮膚弛緩型のイメージ

特徴:頬はあまり厚くないのに、皮膚そのもののハリが落ちて、口元の溝が刻まれているタイプ。小ジワが多い、皮膚が薄く乾燥しがち、紫外線曝露歴が長い、喫煙歴がある、といった背景があることが多いです。

主因:真皮のコラーゲン・エラスチンの量と質の低下。

最初に検討する治療:真皮層に高密度に熱を入れるソフウェーブ(SUPERB™ 同期超音波・真皮中層に熱を集中)と、XERF(デュアル周波数RFで真皮浅層〜SMAS)が中心になります。これに、コラーゲン再生を促すジュベルック(PDLLAの再生注射)を組み合わせるのが有効になりやすいタイプです。

なお、ジュベルックを注入する際に当院で使用するのがミラジェット(ニードルレスでレーザー圧力により薬剤を真皮層まで届ける機器)です。針を使わずに薬剤を均一に導入できるため、ダウンタイムを抑えながら真皮全層に再生刺激を入れられます。

注意:このタイプは「足りないのは肌そのものの強さ」なので、ヒアルロン酸の量を増やしても根本的な改善にはつながりにくい傾向があります。3〜6か月の中期的な再生計画を組むのが基本です。

3-3. 表情筋過活動型(口元クセ強タイプ)

表情筋過活動型(口元クセ強タイプ)
図3-3:表情筋過活動型のイメージ

特徴:無表情のときも口角が下がっていて「への字口」に見える方。話すときや力を抜いたときも口角が引き下げられがち。年齢と必ずしも一致しないことがあり、20〜30代でもこのタイプの方がいらっしゃいます。

主因:DAOの慢性的な過活動。

最初に検討する治療:基本は引き締め系治療をベースに、必要があればDAOへのボツリヌストキシンを必要最小限で補う、という設計になります。当院ではDAOボトックスをメインの治療には据えず、過活動が顕著な方に補助的にお使いいただく方針です。理由は、DAOの動きを抑えすぎると咀嚼・発音や表情の自然さに影響する可能性があるためで、最小限の単位から始めて、効果と自然さのバランスを見ながら調整します。

注意:DAOボトックスは効果発現に2週間ほど、持続は3〜4か月が目安です。クセ自体を変えるものではないため、リバウンド的に元に戻ります。施術回数を重ねるほど自然な仕上がりに近づけやすくなる傾向はありますが、初回は最小限から始めることを当院ではおすすめしています。

3-4. 骨格型(あご骨格タイプ)

骨格型(あご骨格タイプ)
図3-4:骨格型のイメージ

特徴:もともと下顎が華奢、または年齢とともに下顎の骨吸収が進んでいる方。顎先が後退気味で、頬の支えそのものが少ないために、若いうちからマリオネットラインが目立つことがあります。

主因:下顎骨の経年的な吸収・もとの骨格特徴によるボリューム不足。

最初に検討する治療:骨格そのものを大きく変えることはできないため、引き締め系の治療をベースにしつつ、補助的にヒアルロン酸を「リガメントポイント(支持靭帯の付着部)」に少量ずつ精密注入し、足りない骨格性ボリュームを補う、という設計になります。ヒアルロン酸はあくまで「足し算の補助」であって、これだけで骨格的な土台不足をすべて埋めることは難しい点をご理解いただいています。

注意:骨格型に対するヒアルロン酸の注入は、位置と量の設計が結果を大きく左右します。皮下浅層に多く注入すると不自然な凹凸や、頬全体が重くなる原因になりやすいため、深層・骨膜直上に少量ずつ、というアプローチが基本です。また、補助的な使い方であっても、12〜18か月で吸収されていく前提のため、定期的な見直しが必要になります。

3-5. 複合型(ミックスタイプ・最多)

複合型(ミックスタイプ・最多)
図3-5:複合型のイメージ

特徴:上記4タイプの要素が複数当てはまる方。実は当院で診させていただく方の大半(おそらく半数以上)が、この複合型に該当します。

主因:複数の要因が同時並行で起きている。

最初に検討する治療:複合型こそ、診察時の見立てが結果を分けます。当院では、まず「最も大きな主因」を特定し、その層から順番に治療を組み立てます。たとえば「頬脂肪の下垂が大きい+肌のハリも落ちている」方であれば、フォトナ6Dで頬全体を引き締めるところから始めて、2〜3か月後の状態を見ながらジュベルックや必要時のヒアルロン酸を追加する、といった段階的な進め方になります。

4. タイプ別 「最初の一手」 ロードマップ

第3章で5タイプを判別いただいたあと、それぞれの方の「最初の一手」ロードマップをお示しします。あえてステップ5個ずつのフルセットでお見せしていません。理由は、最初からフルセットを組むとコスト負担が大きくなりすぎ、本来必要のない治療まで含まれてしまうためです。

タイプ別「最初の一手」 原因に合わせて、まず1つだけ。次の一歩は経過を見て決めます。 脂肪重力型 ふっくら下垂タイプ 頬がふくらみ重い 原因=頬の重みを軽くする フォトナ6D / XERF 皮膚弛緩型 ハリ低下タイプ 皮膚薄く小ジワ多い 原因=コラーゲン低下を補う XERF / ジュベルック 表情筋過活動型 口元クセ強タイプ DAO優位、への字口 原因=引き下げ筋の優位を抑える 引き締め系をベース + 必要時のみDAOボト少量 骨格型 あご骨格タイプ 下顎が華奢で支え弱い 原因=骨格の支え不足を補う ヒアルロン酸(顎・口角) 複合型(実は最も多いタイプ) 複数の要因が重なる方 → まず診察で「主因」を見極めて、対応する一手から開始します 次の一歩は、肌診断機器(VISIA)と医師評価を踏まえて個別にご提案します 最初の一手から始めて、3〜6か月の経過を見てから次を考えます。一度にすべてを行う必要はありません。

「最初の一手」から始めるのが当院の基本方針

当院の基本方針は「最初の一手から始めて、経過を見ながら次の一手を診察で決める」というものです。同じタイプでも年齢・既往・ご希望によって、必要な治療回数や組み合わせは変わります。一度にすべてを行う必要はありません。図7は5タイプそれぞれの「まず検討する治療」だけシンプルに示しています。

各タイプの「最初に組む機器」を、あくまで 例示 としてご紹介します。注入治療を希望されない方も多くいらっしゃいますので、まずは機器(光・高周波・超音波・マイクロ波)の組み合わせから入るのが当院の基本です:

上記をベースに、必要に応じて、リガメントポイントへのヒアルロン酸の精密注入や、DAOへのボトックス少量などを 補助的に検討 します。注入治療を組み入れるかどうかは、ご希望を伺いながら一緒に決めていきます。

全部やるのではなく、PDCAで軌道修正する

ロードマップを「全部やる」ではなく、主因に対する治療を選び、3か月から半年ごとに評価・検証して軌道修正するという、いわば PDCA を回していく考え方が、結果的にコストを抑えつつ自然な仕上がりにつながると考えています。

5. 治療法・機器の特徴

第3章でご自身のタイプの目安が見えてきたら、次は具体的な治療オプションです。当院では「機械(引き締め系)」「注入(ボリューム系・表情筋系)」「再生」の3カテゴリーを軸に、それぞれの方の主因と希望に合わせて組み立てます。糸リフトについては、当院では基本的に行っていません。詳細は4-5でお伝えします。

治療オプションの加熱・作用 深度レンジ バーが伸びている層に作用が及びます/濃い部分が主作用域 表皮 真皮浅 真皮中 真皮深 皮下脂肪 SMAS 骨膜 フォトナ6D 表皮〜SMAS 多層 XERF 真皮浅〜SMAS ソフウェーブ 真皮中層 高熱密度 リヴァイヴ 真皮中〜SMAS(深部得意) ヒアルロン酸 真皮深〜骨膜直上に注入 DAOボトックス (補助・必要時のみ) 表情筋層へ少量 ジュベルック 表皮〜真皮(皮膚全層) エクソソーム 表皮〜真皮(皮膚全層) ミラジェット 表皮〜真皮浅層(薬剤導入) 糸リフト(参考) 皮下脂肪〜SMAS(当院では非実施) 凡例: 引き締め系(多層) 注入系 再生系 経皮浸透系 ※ 機器の到達深度は出力条件により変動します。バーは「主に作用しうるレンジ」の概念図です。 ※ ソフウェーブは到達層が限られる代わりに、その層への熱密度が現状の他機より高く設計されています。

図5は、各機器・治療の作用深度を帯バーで示した見取り図です。マリオネットラインの治療を組み立てるうえで重要なのは、「どの層に介入したいか」を意識して機器を選ぶことです。表面のシワだけ取りに行くと、深部のジョールファットや靭帯の問題が残ります。逆に深部だけ介入すると、表面の質感は変わりません。

5-1. 引き締め系:高周波・超音波・マイクロ波・レーザーの使い分け

引き締め系は、マリオネットライン治療の中核となるカテゴリーです。当院では4機種を症状に応じて使い分けています。

※ 持続期間の見方について:以下に各機器の持続期間とおすすめ頻度の目安を記載しています。持続期間はその方の肌の状況や老化の度合いによって大きく異なりますので、あくまで「目安のひとつ」としてお読みください。

フォトナ6D(FOTONA 6D robotic)

Nd:YAGレーザーとEr:YAGレーザーを組み合わせた両面照射型のレーザー機器です。口腔内(粘膜側)と皮膚表面の両方から照射できる点が他機との大きな違いで、口元や下顎ライン周辺に対しては立体的なアプローチが可能です。表皮から皮下脂肪、SMAS層まで多層的に熱を入れることができ、脂肪重力型・複合型のマリオネットラインに第一選択になりやすい機器です。

  • 得意とする層:表皮〜SMAS(多層加熱)
  • 麻酔:通常不要。痛みは軽度〜中等度
  • ダウンタイム:ほぼ無し。直後に軽い赤みが出ることがあります
  • リスク:発赤、熱感、まれに色素沈着・乾燥
  • 持続の目安:6か月〜12か月以上
  • おすすめ頻度:半年〜1年に1回

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ソフウェーブ(Sofwave SUPERB™)

Synchronous Ultrasound Parallel Beam(SUPERB™)と呼ばれる独自の同期超音波技術により、真皮中層(深さ約1.5mm)に高密度の熱を集中させる機器です。届く深さは限定されますが、その層への熱量入力は現状の他機より高く設計されており、コラーゲンの再構築を強く促します。FDA 認可の引き締め治療です。

マリオネットラインに対するソフウェーブの効果は、Hongcharu らによる36名の臨床試験で確認されています(J Cosmet Dermatol 2023;22(5):1488-1494)。

Antera 3D による定量評価で、施術1か月後と3か月後にほうれい線とマリオネットラインの陥凹体積が有意に減少し、60%以上の被験者で改善が確認されました。当院では、皮膚弛緩・コラーゲン低下型に対する第一選択として位置づけています。

  • 得意とする層:真皮中層に高密度
  • 麻酔:表面麻酔を使用することが多いです
  • ダウンタイム:軽い赤み(数時間程度)
  • リスク:発赤、軽度の腫れ、まれに点状の発赤
  • 持続の目安:6か月〜12か月以上
  • おすすめ頻度:半年〜1年に1回

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XERF(ザーフ・デュアル周波数RF)

従来のRF(高周波)機器が単一周波数(6MHz帯)だったのに対し、XERFは6.78MHzと2MHzのデュアル周波数を同時出力できる次世代RF機器です。高周波数で真皮を、低周波数で皮下深部・SMAS層までアプローチでき、「表皮から SMAS まで多層的に立体的な引き締め」が可能です。

独自のWave Fit Pulse技術により、痛みを極小化しながら高い熱量を入力できる点も特徴で、引き締め系治療の中ではダウンタイムが短い分類に入ります。脂肪重力型・皮膚弛緩型・骨格型・複合型と、幅広いタイプに合わせやすい機器です。

  • 得意とする層:真皮浅層〜SMAS(多層)
  • 麻酔:通常不要
  • ダウンタイム:ほぼ無し
  • リスク:軽度の発赤・熱感
  • 持続の目安:3か月〜12か月
  • おすすめ頻度:3〜6か月に1回

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リヴァイヴ(Re:vive・マイクロ波 2.45GHz)

従来の高周波(MHz帯)の約1,000倍の周波数となるマイクロ波(2.45GHz)を用いた、比較的新しいタイプの引き締め機器です。マイクロ波は誘電加熱(dielectric heating)により深部組織への到達が得意で、皮下脂肪層から SMAS 層付近まで、均一に熱エネルギーを届けることができる物理的特性が知られています。

当院での使い分けでは、「深部の引き締めを重視したいが、痛みは抑えたい」方への選択肢として位置づけています。フォトナ6Dと比べてダウンタイムが短く、痛みも軽度です。脂肪重力型・複合型のサブ選択肢として組み合わせます。

  • 得意とする層:真皮中層〜SMAS(深部加熱が得意)
  • 麻酔:通常不要
  • ダウンタイム:ほぼ無し
  • リスク:軽度の温熱感・発赤
  • 持続の目安:3〜6か月
  • おすすめ頻度:1〜3か月に1回

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5-2. ボリューム系:ヒアルロン酸の使い所と「打ちすぎリスク」

ヒアルロン酸注入は、足りないボリュームをその場で補える即効性のある治療です。マリオネットラインに対しては、陥凹型・骨格型のタイプで第一選択になりやすい一方、脂肪重力型のように「すでに頬が重い」方に多めに打つと、頬全体の重さが増して結果的にマリオネットラインがより深く見えてしまうことがあります。

これを当院では「打ちすぎリスク」と呼んで、診察時に必ずお伝えしています。打ちすぎてしまうと、その間に頬下部に負荷がかかり続け、結果的に下垂を促してしまう可能性が指摘されています。マリオネットラインの治療では、足し算(ヒアル)よりも引き締め・引き上げ(機械系)を先に、というのが当院の基本方針です。

では、ヒアルロン酸はどのタイプで活躍するか。代表的なのは以下の2つです:

  • 骨格型:もともとの下顎の華奢さや、加齢による骨吸収で「土台が小さい」方には、リガメントポイント(支持靭帯付着部)への少量精密注入で土台を補います。
  • 表情筋過活動型・複合型での部分補正:機械系で頬全体を引き締めた後、マリオネットライン本体だけに2〜3か所のスポット注入で陥凹を埋めるように使います。

5-3. 表情筋系:DAO ボトックス(少量・補助的に)

口角下制筋(DAO)への少量のボツリヌストキシン(ボトックス)注入は、表情筋過活動型のマリオネットラインで補助的に使える治療です。当院では、DAOボトックスをメインの治療には据えません。引き上げ筋とのバランスや、咀嚼・発音への影響に対して細やかな調整が必要なためです。

Bae らによる前向き試験(J Cosmet Dermatol 2020;19(2):338-345)では、ヒアルロン酸とDAOボトックスの併用治療で、口角の角度・マリオネットラインの深さがいずれも有意に改善したことが報告されています。

中央値で26.5単位のincobotulinumtoxinAをDAO・オトガイ筋に分けて注入する方法が示されており、当院でも症例によりこの考え方を参考にしながら、必要最小限の単位で調整しています。

  • 効果発現:注射後2週間程度で安定
  • 持続:3〜4か月(個人差あり)
  • ダウンタイム:ほぼ無し
  • リスク:注射部位の内出血、まれに表情の左右差・口元の力の入りにくさ・咀嚼への影響

初回は最小単位から始めて、効果と自然さのバランスを確認しながら次回以降を調整します。「想定より口角があまり上がらなかった」と感じる方には、次回の単位を増量するなど、効果が出る方向に調整します。

5-4. 再生系:ジュベルック・エクソソーム・ミラジェット

近年、皮膚の再生力そのものを底上げする治療が注目されています。マリオネットラインの治療においても、皮膚弛緩・コラーゲン低下型に対しては再生系が中核になります。

ジュベルック(PDLLA再生注射)

ジュベルックは、ポリ-D,L-乳酸(PDLLA)という生分解性ポリマーを用いた皮膚再生注射です。注入後に時間をかけて吸収されながら、真皮層のコラーゲンとエラスチンの新生を促します。Seo らの研究では、PDLLA 注入により真皮内のコラーゲン・エラスチン繊維の増加が組織学的に確認されています(J Cosmet Dermatol 2024;23(3):794-802)。

当院でジュベルックを注入する際に使用するのが、後述のミラジェットです。ニードルレスでレーザー圧力を用いて薬剤を真皮層まで届けるため、針を使う場合より均一な分布が得られ、ダウンタイムも軽減されます。

ミラジェット(ニードルレス薬剤導入システム)

ミラジェットは、レーザー圧力で瞬時に薬剤を真皮層まで届ける革新的な薬剤導入機器です。針を使わないため出血がほぼ無く、治療を受ける際の心理的負担も少ないのが特徴です。ジュベルックなどのPDLLA・エクソソーム・マイクロボトックスなどとの組み合わせで、薬剤の効果を最大化します。

マリオネットラインに対しては、ジュベルック注入の媒介として使用するほか、コラーゲン低下型の方の真皮浅層への補助的な再生治療としても活用しています。

ミラジェットの詳細ページ »ジュベルックの詳細ページ »

エクソソーム点滴・幹細胞由来サイトカイン

エクソソームは、幹細胞などから分泌される細胞外小胞で、再生医療の領域で近年注目を集めています。当院では、再生系治療の全身的な底上げとして、点滴によるエクソソーム療法を選択肢としています。

マリオネットラインを単独で改善するというより、肌全体の再生力を高め、ジュベルック・引き締め系治療と組み合わせた際の効果を底上げする位置づけです。

エクソソーム点滴の詳細ページ »

5-5. 糸リフトについての当院の方針

「切らないリフト」を実現する選択肢として、糸リフト(スレッドリフト)があります。マリオネットラインの治療文脈でも話題になりますが、当院では基本的に糸リフトは行っておりません

理由は当院の治療方針にあります。当院は できる限り切らずに、人工物を埋め込まずに、自然な形でのエイジングケア を目標としています。糸リフトは溶ける糸でも一定期間は体内に残るため、万一感染などのトラブルが起きた際に 糸の除去が困難になるケースも見られることが懸念点として挙げられます。

客観的なリフト感が数か月で徐々に減弱しやすく、繰り返しの施術が前提になりやすい点も、長期的には負担になりやすいと考えています。

糸リフトが第一選択となるケースは、当院の方針からは多くありません。むしろ 重度の下垂で、機械系・再生系での目標達成が困難 と判断される場合は、糸リフトよりも フェイスリフト等の手術が第一選択 になると考えられます。その場合は、当院で無理に対応するのではなく、手術を多く扱う他院をご紹介する方が、治療をご検討の方にとっての利益になると考えています。

結局のところ、ご本人が求めるゴールと、リスクとのバランスです。「自然な仕上がりで長く付き合う」治療を望まれる方には、当院のエイジングケアの方針が合いやすいと思います。

治療法・機器の特徴比較 ★1〜5は当院でのマリオネットライン治療における相対評価の目安です 治療 主作用層 マリオへの効果 持続 DT※ 痛み フォトナ6D 両面照射レーザー 表皮〜SMAS 多層加熱・口腔内可 ★★★★☆ 6〜12か月以上 ほぼ無 ★★☆☆☆ ソフウェーブ SUPERB™ 超音波 真皮中層 高熱密度・エビデンス強 ★★★★★ 6〜12か月以上 軽い赤み ★★★☆☆ XERF デュアル周波RF 真皮浅〜SMAS 多層・痛み小 ★★★☆☆ 3〜12か月 ほぼ無 ★☆☆☆☆ リヴァイヴ マイクロ波 2.45GHz 真皮中〜SMAS 深部加熱が得意 ★★★☆☆ 3〜6か月 ほぼ無 ★☆☆☆☆ ヒアルロン酸 ボリューム補正・部位調整 真皮深〜骨膜直上 注入・即効 ★★★☆☆ タイプ依存 12〜18か月 軽度の内出血 が出る場合あり ★★☆☆☆ DAOボトックス 補助・必要時のみ 表情筋層 少量で自然さ重視 ★★☆☆☆ 3〜4か月 ほぼ無 ★☆☆☆☆ ミラジェット ニードルレス薬剤導入 表皮〜真皮浅層 薬剤を皮下に届ける ★★★☆☆ 数か月 ほぼ無 ★☆☆☆☆ ジュベルック PDLLA再生(ミラジェット導入) 表皮〜真皮 真皮再生 ★★★☆☆ 12か月以上 ほぼ無 ★☆☆☆☆ エクソソーム 再生医療系 表皮〜真皮 細胞活性 ★★☆☆☆ 数か月 ほぼ無 ★☆☆☆☆ ※ 「マリオへの効果」は当院でマリオネットラインに対する相対評価です。機器・治療の万能評価ではありません。 ※ DT=ダウンタイム。組み合わせ・部位・回数により実際の経過は変わります。 ※ 効果・持続には個人差があります。すべての方に同等の結果が出るとは限りません。

図6は、ここまでの治療オプションを「主作用層」「引き締め力」「持続」「ダウンタイム」「痛み」「費用目安」の6軸で比較したものです。お顔のタイプと希望のバランスで、最初の一手をご提案します。費用は当院での1回あたり目安レンジで記載しており、実際の金額は施術部位・回数・組み合わせにより変動します。具体的なお見積りはカウンセリング時にお伝えします。

6. 治療を受ける前に知っておきたいこと

マリオネットラインの治療を始める前に、知っておいていただきたい考え方を4つお伝えします。これらは、後悔のない治療選択のための基礎知識です。

6-1. ヒアルロン酸を打ちすぎると逆効果になる理由

ヒアルロン酸はその場で結果が見えるため、ご要望をいただくことも多い治療です。しかし、マリオネットラインに対して陥凹型・骨格型でない方が多めに注入すると、頬全体の重さが増して、結果的にラインがより深く見えてしまうことがあります。

これは、頬下部にヒアルロン酸の重みが加わることで皮下組織に新たな負荷がかかり、ジョールファットの下垂を誘発する可能性があるためです。当院では「足し算は最後の手段」として、まず引き締め系で頬の重さを減らし、それでもボリュームが足りない部位に限定的に注入する、という順番を基本にしています。

6-2. ボトックスで「無表情」にしないための単位設計

当院では、マリオネットラインの治療において DAO ボトックスをファーストチョイスにはしていません。まず引き締め系の治療を優先して全体を組み立て、必要があれば最小限の単位から補助的に組み合わせる、という順番です。

DAO ボトックスは「口角を引き下げる力を弱める」治療ですが、単位を入れすぎると表情の自然さが失われるリスクがあります。咀嚼・発音・笑顔のときの口元の動きに、微妙な不自然さが出ることもあります。

必要最小限の単位から始めるため、「もう少し効果が欲しい」と感じる方も少なくありません。その場合は次回に少し量を調整するなどの個別対応をします。表情の自然さを最優先にした単位設計を心がけています。

6-3. 一回で完璧を目指さない ── 機器ごとに違うペースで組み立てる

マリオネットラインの治療は、1回で完璧に消える性質のものではありません。皮膚・脂肪・靭帯・筋肉・骨格と複数の層が関わっているため、ひとつの治療で全層を一度に改善することはできないからです。

治療のスパンは機器ごとに異なります。毎月続けることが向く機器もあれば、半年〜1年に1回がおすすめされる機器もあります。当院では、初回診察で 機器の特性に合わせた治療の流れ をご提案します。各治療の度に経過を評価・検証し、必要があれば軌道修正していくのが基本です。

具体的な機器ごとの推奨ペースや、複合的な組み立てのパターンは、別途「最新たるみ治療の選び方ガイド|最新4機種を院長が徹底比較。」に詳しくまとめています。あわせてご覧ください。

6-4. 自然さを大切にするための、ご相談の入り口

近年、美容医療の選択肢が増えるにつれ、結果として顔の自然さが失われてしまう方も見かけるようになりました。マリオネットラインの治療においても同じリスクがあります。

当院では、初診時に これまで受けた治療歴(ヒアルロン酸注入歴の有無、ボトックス歴、糸リフト歴、脂肪溶解注射歴など)をお伺いします。注入経験の有無・大まかな時期を共有いただくだけで構いません。すでに複数の治療歴がある方には、新規の介入を控えめにして、まず現状の評価から始めるようご提案することもあります。

最終的なゴールは「自然で品の良い口元」であり、「とにかく溝を消す」ではない、という考え方を最初に共有させていただきます。

7. ダウンタイム・リスクの目安

治療を選ぶうえで気になる「日常生活への影響」を、機械系と注入系の2カテゴリーでまとめます。費用については治療法ごとに大きく異なるため、各治療の詳細ページとカウンセリングでご案内します。

7-1. 機械系治療(フォトナ6D・XERF・ソフウェーブ・リヴァイヴ)

機械系の引き締め治療は、概してダウンタイムが短いのが特徴です。施術直後に軽い赤みや熱感が出ることがありますが、多くの方は当日中〜翌日には目立たなくなります。

  • 当日:洗顔・スキンケアは普段通り。化粧も可能。激しい運動・サウナ・長湯は避けてください
  • 翌日〜1週間:通常の生活に戻れます。日焼け対策はしっかりと
  • リスク:軽度の発赤・熱感・点状の発赤・乾燥。まれに色素沈着
  • 禁忌:妊娠・授乳中、ペースメーカー装着、施術部位の感染など

7-2. 注入系治療(ジュベルック・ミラジェット/DAO ボトックス/ヒアルロン酸)

  • ジュベルック(ミラジェット導入):針を使わないため出血はほぼありません。直後に軽い赤みと腫れが出ますが、半日〜1日で消失します
  • DAO ボトックス:注射部位の内出血が出ることがあります。表情の左右差・口元の動きの弱まりは1〜2週間で安定します
  • ヒアルロン酸:注入部位の内出血が出る方がいます。通常1〜2週間で消失。腫れもまれに出ます

共通の注意:施術後24時間は、注入部位を強くマッサージしないでください。サウナ・長湯は3日程度避けることが推奨されます。

費用については治療法ごとに大きく異なります。各治療の詳細ページに最新の料金を記載していますので、そちらをご参照ください。具体的な組み合わせの見積りはカウンセリング時にご案内します。当院では 1回ごとのお支払い を基本としており、コース契約はございません。

8. ソララクリニックでの治療フロー

初めて受診される方の流れをご紹介します。当院では、いきなり治療を決めるのではなく、まず診察と肌診断機器による客観評価を経て、複数の選択肢の中からご来院の方と一緒に決定します。

8-1. 初診カウンセリング

初回はじっくりお話を伺います。気になる部位・これまでの治療歴・生活背景(紫外線曝露・喫煙・睡眠時の姿勢など)・予算感・希望するゴールをお聞きします。マリオネットラインだけでなく、お顔全体のバランスを見て、関連する部位(ほうれい線・ゴルゴ線・フェイスラインなど)の評価も同時に行います。

8-2. 肌診断機器(VISIA・ベクトラ)による客観評価

当院では、肌診断機器 VISIA による撮影で、シミ・シワ・毛穴・赤み・紫外線ダメージなどを定量化します。さらに、立体撮影機器 ベクトラ(VECTRA) を併用し、お顔の凹凸・たるみを 3D で記録、当院独自の評価基準で治療前後を客観比較します。たるみの治療では平面の写真だけでは分かりにくい変化も多いため、ベクトラの3Dデータが特に役立ちます。

肌診断機器の詳細ページ(VISIA・ベクトラ)»

8-3. ご提案 → 同意 → 施術 → アフターフォロー

診察と肌診断(VISIA・ベクトラ)の結果を踏まえ、たるみの状態を分析したうえで、その方に合いやすい治療を 「こちらの方法でいかがでしょうか」とお伺いする形でご提案 しています。複数案がある場合はそれぞれの違いをお伝えし、ご質問やご希望を伺いながら一緒に方針を決めていきます。その場で決めきれない場合は、お持ち帰りいただいてご検討のうえ、後日改めてご予約いただくこともよくあります。

治療後は、定期的なスキンケアや次回の治療のたびに経過を確認していきます。気になる症状や変化があれば、お電話やメールでご相談いただくことも可能です。迅速に対応します。

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監修者情報(医師紹介)

監修医師 佐藤雅樹(仙台 ソララクリニック院長)

監修医師:佐藤 雅樹 (さとう まさき)

ソララクリニック 院長

専門分野:美容皮膚科

2000年 順天堂大学医学部卒。順天堂大学医学部形成外科入局。 大学医学部付属病院等を経て、都内美容皮膚科クリニックにてレーザー治療の研鑽を積む。2011年3月 ソララクリニック開院 院長就任。2022年 医療法人 松柴会 理事長就任。日本美容皮膚科学会 日本形成外科学会 日本抗加齢医学会 日本レーザー医学会 点滴療法研究会 日本医療毛髪再生研究会他所属。 
様々な医療レーザー機器に精通し、2011年ルビーフラクショナル搭載機器を日本初導入。各種エネルギーベースの医療機器を併用する複合治療に積極的に取り組む.

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9. よくあるご質問

初診のご相談で多くいただく質問をまとめました。気になる項目があれば、診察時にも遠慮なくおたずねください。

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個人差が大きい部位ですが、コラーゲンとエラスチンの産生が緩やかに低下し始める 30代後半 から、薄いラインとして自覚される方が増えます。

40代以降は無表情でも線が残りやすくなり、50代以降はジョールファットの下垂が加わって縦の溝として目立ちやすくなります。

一方で、骨格・表情のクセ・体重変動・喫煙歴などにより、20〜30代でも目立つ方もいらっしゃいます。年齢だけで判定できる部位ではありません。

ほうれい線は小鼻の脇から口角に向かう 斜めの溝、マリオネットラインは口角から下顎に向かう 縦の溝 です。

原因も少し異なり、ほうれい線は頬の脂肪と上唇の境目で起こりやすく、マリオネットラインは口角下制筋(DAO)の引き下げとジョールファットの下垂が複合した結果です。

隣り合う領域のため、ほうれい線が深くなるとマリオネットラインも引き立ち、その逆もあります。当院では両方の関係を見たうえで治療を組み立てます。

軽度のラインであれば、表情筋を意識的に動かすセルフケアが進行を遅らせる助けになる可能性はあります。

ただし、皮膚・脂肪・支持靭帯・SMAS・骨格まで複数の層が関係するマリオネットラインに対して、マッサージや筋トレ単独で深い溝を消すことは難しいのが実情です。

強いマッサージを続けると、かえって皮膚への負担が増えてラインが目立つようになる場合もあります。診察時に、ご自身に合うセルフケアの取り入れ方もお伝えします。

ボトックスは口角下制筋(DAO)の働きを和らげる効果がありますが、それ単独でマリオネットラインを完全に治すことは難しい治療です。

当院では DAO ボトックスを ファーストチョイスにはしておりません。引き締め系治療をメインに組み立て、必要に応じて最小限の単位で補助的に組み合わせる方針としています。

表情の自然さを損なわないよう、初回は最小単位から始めて、効果と自然さのバランスを確認しながら次回以降を調整します。

溝が陥凹型・骨格型のタイプであれば、ヒアルロン酸が第一選択になりやすい治療です。

一方、脂肪重力型(頬がふっくら下垂しているタイプ)の方が多めに注入してしまうと、頬全体の重みが増して、結果的にラインがより深く見えてしまうことがあります。当院ではこれを「打ちすぎリスク」と呼んでいます。

マリオネットラインの治療では、まず引き締め系で頬の重さを減らしてから、必要に応じて補助的にヒアルロン酸を加える、という順番が結果につながりやすい傾向があります。

HIFU(高密度焦点式超音波)は引き締め系の機器のひとつで、SMAS層への熱エネルギー集中を狙う治療として知られています。

当院では HIFU そのものではなく、より新しい超音波・高周波・マイクロ波・レーザーを症状に応じて使い分けています。たとえばソフウェーブの SUPERB™ 技術は、HIFU の発展形として真皮中層に高密度の熱を集中させる方式です。

各機器の特性については、最新たるみ治療の選び方ガイドで詳しく比較していますので、あわせてご覧ください。

当院では糸リフトを基本的に行っておりません。

「できる限り切らずに、人工物を埋め込まずに、自然な形でのエイジングケア」 が当院の治療方針です。糸が体内に残るタイプの場合、感染などのトラブルが起きた際に除去が困難になるケースもあるため、慎重に判断しています。

重度の下垂で、機械系・再生系での目標達成が困難と判断される場合は、当院で無理に対応するのではなく、フェイスリフト等の手術を多く扱う他院をご紹介する方が、治療をご検討の方の利益になると考えています。

治療法により異なります。フォトナ6D・ソフウェーブの目安は半年〜1年以上、XERFは3か月〜1年、リヴァイヴは3〜6か月程度、DAOボトックスは3〜4か月が目安です。

ヒアルロン酸は完全吸収まで時間はかかりますが、効果が薄れていくスピードは個人差が大きいため、「打ったから1年もつ」という単純な見方はあてはまりません。

持続期間はその方の肌の状況・老化の度合い・生活習慣(紫外線・喫煙・睡眠など)によって大きく異なります。あくまで「目安のひとつ」としてお考えいただければと思います。

機械系治療(フォトナ6D・XERF・ソフウェーブ・リヴァイヴ)は概してダウンタイムが短く、施術直後の軽い赤み・熱感は当日中〜翌日には目立たなくなります。

注入系のヒアルロン酸・DAOボトックスは内出血が出ることがあり、通常1〜2週間で消失します。ジュベルック(ミラジェット導入)は針を使わないため、出血はほぼありません。

サウナ・長湯・激しい運動は施術後数日避けることが推奨されます。詳細は本文「7. ダウンタイム・リスクの目安」をご覧ください。

機器・治療法によって異なります。

リヴァイヴは痛みを感じにくく、XERFはほぼ痛みを感じません。フォトナ6Dは軽度の痛みを感じる場合があります。ミラジェットはチクチクした感触がありますが、針を刺すような痛みではありません。ソフウェーブは表面麻酔を使用します。

痛みに敏感な方は事前にお伝えいただければ、麻酔の使用などで調整可能です。遠慮なくご相談ください。

マリオネットラインのタイプ・進行度・希望される仕上がりによって幅があります。

1回で完璧に消える性質の治療ではないため、3か月から半年ごとに評価・検証しながら進めるPDCA型のアプローチが当院の基本です。同じ機械を短期間に繰り返すことは、当院では極めて稀です。

必要回数や組み合わせは、初回診察時に肌診断機器(VISIA・ベクトラ)の結果を踏まえてご提案します。

たるみ治療機器同士の 相性 によっては、組み合わせることは可能です。

たとえばミラジェット(ジュベルックなどの導入)は、他のたるみ治療機器と相性が良く、相乗効果が期待できる組み合わせのひとつです。

一方で、何でも組み合わせれば効果が上がるわけではなく、過剰になって逆効果になる可能性もあります。担当医師と十分にご相談のうえで決めていただければと思います。


10. 参考文献・エビデンス

本ページの内容は、PubMedで実在を確認した英文学術論文を中心に作成しています。原題・出典・DOIを併記し、各論文の要点を日本語で要約しました。

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原題: The fat compartments of the face: anatomy and clinical implications for cosmetic surgery

出典: Plastic and Reconstructive Surgery, 2007

DOI: 10.1097/01.prs.0000265403.66886.54

要約:

本研究は、顔の皮下脂肪が単一の層ではなく、複数の独立した「コンパートメント(区画)」に分かれていることを、屍体解剖30件によって示した先駆的な論文です。

従来、顔の皮下脂肪は連続した一枚の層として扱われ、加齢で「全体が落ちる」と説明されてきました。しかし本研究では、ジョールファット(顎ライン直上の脂肪)、内側頬脂肪、中央頬脂肪、外側側頭頬脂肪などが、隔壁(septa)と呼ばれる結合組織で仕切られた独立区画であり、加齢でそれぞれ別個に変化することが示されました。

マリオネットラインの形成においても、ジョールファットが独立して下方にずれ動き、上方コンパートメントとの境界線が皮膚表面に「段差」として浮き出ることが、現代の顔面エイジング解剖学の基本的な理解になっています。

原題: The Surgical Anatomy of the Jowl and the Mandibular Ligament Reassessed

出典: Aesthetic Plastic Surgery, Springer, 2023

DOI: 10.1007/s00266-022-02996-3

要約:

本研究は、屍体49体を用いた詳細な層別解剖と組織学・ミニCT画像による検討で、ジョール(顎ライン下垂)の形成と下顎靭帯(mandibular ligament)、口唇下顎溝(labiomandibular crease)の解剖学的関係を再評価したものです。

下顎靭帯そのものは深層(広頸筋の下層)に位置し、皮下層には独立した構造としては存在しないこと、ジョールは皮下層における結合組織の経年的な伸長によって形成されることが明らかにされました。これは、マリオネットラインの「外側の段差」の解剖学的基盤を理解するうえで欠かせない知見です。

本ページでも、支持靭帯セクションの解説の根拠としています。

原題: Depressor anguli oris sign (DAO) in facial paresis. How to search it and release the smile

出典: Annales de Chirurgie Plastique et Esthétique, Elsevier, 2012

DOI: 10.1016/j.anplas.2012.02.013

要約:

本研究は、口角下制筋(DAO)の過収縮を簡便に評価する触診法を提示した技術ノートです。マリオネットラインの位置に指を置いた状態で軽く笑顔を作ると、DAO の張りがロープ状に触知できることが示されています。

DAO は本来、口角を引き下げる役割を担う表情筋です。加齢や慢性的なクセにより DAO の活動が優位になると、口角が無意識に下方へ引かれ続け、その延長線上にマリオネットラインの溝が深まっていきます。

本論文ではボツリヌストキシン(ボトックス)の少量注入による DAO 抑制が、表情の自然さを保ったままマリオネットラインの改善に有効であることも記述されており、現代の DAO ボトックス治療の基礎となる文献の一つです。

原題: Anatomical-based diagnosis and filler injection techniques: marionette line (static labiomandibular fold)

出典: Journal of Dermatological Treatment, Taylor & Francis, 2025

DOI: 10.1080/09546634.2025.2452954

要約:

本論文は、マリオネットライン(静的な口唇下顎溝)に対する解剖ベースの診断とフィラー(ヒアルロン酸)注入技術についての最新の総説です。

アジア人では口角結節(モダイオラス)の位置が口角下垂に関与しやすく、マリオネットラインのリスクを高める解剖学的特徴であることが示されています。治療面では、皮下浅層への大量注入は不自然な隆起を生むため、カニューレを用いた supramuscular/submuscular 層への深層注入が推奨されています。

また、必要に応じて DAO へ少量のボツリヌストキシンを併用することで、口角を引き下げる力を弱め、フィラーの効果が維持されやすくなることも臨床的に示されています。本ページの治療方針の理論的根拠の中心となる文献です。

原題: Nonsurgical correction of drooping mouth corners using monophasic hyaluronic acid and incobotulinumtoxinA

出典: Journal of Cosmetic Dermatology, Wiley, 2020

DOI: 10.1111/jocd.13010

要約:

本研究は、口角の下垂・口唇下顎溝(マリオネットライン)に対し、モノフェジック型ヒアルロン酸の段階的注入と incobotulinumtoxinA(DAO・オトガイ筋への少量ボトックス)を組み合わせた治療を、前向きに評価した臨床試験です。

治療開始前と比較して、施術2週後・3か月後の双方で、口角の角度・マリオネットラインの深さがいずれも有意に改善し、Global Aesthetic Improvement Scale でも満足度の高い結果が得られました。重大な副作用は報告されていません。

「ヒアルロン酸単独」「ボトックス単独」ではなく、両者を相補的に使い分けることで、無表情にせず自然に口角を持ち上げられることを示した重要な根拠の一つです。本ページの「補助的にDAOボトックスを併用する」方針の根拠としています。

原題: The efficacy and safety of the high-intensity parallel beam ultrasound device at the depth of 1.5 mm for skin tightening

出典: Journal of Cosmetic Dermatology, Wiley, 2023

DOI: 10.1111/jocd.15672

要約:

本研究は、ソフウェーブの SUPERB™(Synchronous Ultrasound Parallel Beam)技術を用いて、真皮中層(深さ約1.5mm)に高密度の超音波エネルギーを集中させる治療の臨床効果を評価した試験です。被験者は36名。

客観的評価には Antera 3D 撮影装置を用い、ほうれい線とマリオネットラインの陥凹体積を施術前後で測定。施術1か月後と3か月後の双方で、いずれの溝の陥凹体積も統計学的に有意に減少し、60%以上の被験者で改善が確認されました。

痛みのスコアは中等度(10点満点で平均6.64)でしたが、深刻な有害事象は報告されていません。マリオネットラインに対する SUPERB™ 超音波の効果が、客観的な3D計測で裏付けられた点が大きな価値であり、本ページのソフウェーブ解説の根拠としています。

原題: A Systematic Review of High-Intensity Focused Ultrasound in Skin Tightening and Body Contouring

出典: Aesthetic Surgery Journal, Oxford University Press, 2025

DOI: 10.1093/asj/sjaf053

要約:

本論文は、高密度焦点式超音波(HIFU)の美容応用について、2010年から2024年までに発表された45件の臨床試験・コホート研究を網羅的に評価した系統的レビューです。

下顔面・頸部・眼周辺における皮膚弛緩の改善は18〜30%の範囲で報告され、ボディコンタリングでは腹部・大腿で2.5〜4.5cmの周囲径減少が示されています。有害事象は5%未満(一過性の発赤・腫脹・軽度の不快感)と、安全性の観点でも良好な結果でした。

近年は SUPERB™ などのパラレルビーム超音波の進化により、治療精度と患者の快適性が向上していることも記述されています。HIFU 系治療を選択する際の包括的な根拠として参照しています。

原題: Systematic review and meta-analysis of safety and efficacy of high-intensity focused ultrasound (HIFU) for face and neck rejuvenation

出典: Lasers in Medical Science, Springer, 2020

DOI: 10.1007/s10103-020-02957-9

要約:

本研究は、顔・頸部の若返り治療における HIFU の安全性と有効性を評価したメタ分析です。被験者総数477名・17研究が解析対象に選ばれました。

客観的改善スコアは平均2.74/5、患者主観の満足度スコアは平均2.68/5で、いずれも中等度の改善を示しました。痛みスコアは平均4.2/10。浮腫・紅斑にはばらつきがあり、色素沈着は報告されていません。

長期追跡データは少ないものの、短期的には安全性が高く、顔・頸部の引き締め治療として有効であることが結論付けられました。HIFU を含む引き締め系治療の安全性根拠の一つです。

原題: Skin rejuvenation effect of the combined PDLLA and non cross-linked hyaluronic acid: A preliminary study

出典: Journal of Cosmetic Dermatology, Wiley, 2024

DOI: 10.1111/jocd.16085

要約:

本研究は、ポリ-D,L-乳酸(PDLLA)と非架橋ヒアルロン酸を併用した注射療法の皮膚若返り効果を、16名で2〜3回施術して評価した予備研究です。

細かいシワ・肌のキメ・色素ムラ・赤み・毛細血管拡張のいずれも、施術前と比較して有意な改善が認められました。患者の半数が「50%以上の総合改善」を実感したと回答しています。

耳裏部位での組織学的検査では、施術後に 真皮内のコラーゲン繊維とエラスチン繊維が増加 していることが確認されました。重大な有害事象は報告されておらず、ジュベルックなどの PDLLA 系注射が真皮の再生を促す科学的根拠の一つとなっています。



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