炎症後色素沈着は なぜ起きるのか Post-inflammatory Hyperpigmentation
炎症がおさまれば、色は少しずつ薄くなっていきます。
炎症後色素沈着とは、炎症が起きたあとに、その場所の色が濃くなることをいいます。ニキビのあと、虫刺されのあと、やけどのあとにも起こります。そして、シミ取りレーザーのあとにも起こります。
レーザー治療で多い合併症のひとつです。そのため当院では、照射の前に「色素沈着が出ることがあります」と必ずご説明しています。
ただ、限られた診察時間の中で、これだけのことを全部お話しするのは、どうしても無理があります。そこで、診察室でご説明している内容を補うために、このページを作りました。
これからシミ取りレーザーを受ける方に向けて、ずっと残るのか、何が起きているのか、どのくらいの確率で起こるのか、誰に起こりやすいのか、どうすれば減らせるのか。順に説明します。
すでに色素沈着が出てしまっている方は、いま何が起きているかをこのページで確かめたうえで、出てしまったあとの過ごし方もあわせてご覧ください。
この記事の目次
ずっと残ってしまうことは、あるのでしょうか
診察でいちばん多くいただく質問です。先にお答えします。
多くの方では、時間とともに薄くなっていきます。炎症後色素沈着は、炎症という原因があって起きるものです。原因がおさまれば、色をつくる働きももとに戻ります。年月をかけてできたふつうのシミと決定的に違うのは、この点です。
顔の美容医療で起こる炎症後色素沈着は、当院で経過を追ってきたかぎり、多くの場合3〜4か月から半年ほどで落ち着いてきます。文献には「経過は予測しにくい」という記載もありますが(参考文献10)、これは原因となる炎症が続いている場合を含んだ書き方です。
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監修:佐藤雅樹(ソララクリニック院長)
ただ、これより延びてしまうことがあります。
回復が長引くのは、炎症が強く、長く続いたときです
見通しを分けているのは、色素がどの深さにあるかです。総説(参考文献10)は、表皮にとどまっている色素沈着のほうが、真皮まで落ちた色素沈着より消える見込みが高いと述べています。
浅いところにある色は、肌の生まれ変わりとともに押し出されて剥がれ落ちます。一方、深いところに落ちた色は、マクロファージという細胞が少しずつ食べて運び出すしかありません。道すじそのものが違うので、時間のかかり方も変わります。
では、何が深さを決めているのか。炎症の強さと、その長さです。
回復が長引くときは、たいてい次のどれかが重なっています。
- 照射が強すぎた(出力の設定、照射のしかた)
- 炎症が長引いた(治療後の紫外線、擦る、かさぶたを無理に剥がす)
- もとの病変が深かった、あるいは肝斑が同時にあった
そして、打てる手があります
いま挙げた理由は、どれも炎症の強さと長さに行き着きます。そして炎症の強さと長さは、照射のしかたと、そのあとの過ごし方で変えられます。
強く照射した群と穏やかに照射した群では、色素沈着の出方が33.3%と7.5%に分かれました(参考文献1)。照射の2週間後から外用を始めた群では、55.3%から31.0%に下がっています(参考文献9)。どうなるか分からないまま、ただ待つしかないもの、とお考えにならないでください。
※「何%が永久に残るのか」という数字を示した信頼できる報告は、調べたかぎり見当たりませんでした。当院でも、その点は数字ではお答えしていません。
炎症後色素沈着はどうやってできるのか
ここから先は主にレーザーのあとの話ですが、この章で説明する仕組みは、ニキビのあとや虫刺されのあとの色素沈着でも同じです。
ふつうのシミとは、でき方が違います
顔にできるシミの多く(日光性色素斑など)は、長い年月のあいだに紫外線を浴び続けた結果として、色をつくる細胞の働きそのものが変わってしまったものです。原因が積み重なってできているため、放っておいて自然に消えることはあまりありません。
炎症後色素沈着は違います。ニキビでも虫刺されでもレーザーでも、もとになった炎症が必ずあります。それがおさまれば、色をつくる量も落ち着いていきます。
炎症後色素沈着の回復過程
肌の中では、次のようなことが起きています。5つの場面に分けてご説明します。

赤い光が当たり、炎症が基底層まで届いています
第1幕
照射 レーザーが当たる
レーザーはやけどの一種。その場所に炎症が起こります。

第1幕
照射 レーザーが当たる
レーザーはやけどの一種。その場所に炎症が起こります。
シミ取りレーザーは、ピコレーザーであってもやけどの一種です。ごく浅く、ごく狭い範囲に抑えてはいますが、やけどであることに変わりはありません。
光はシミの色素に吸収され、その熱がまわりへ伝わって炎症を起こします。炎症は表皮の全層に広がり、いちばん下の基底層にいるメラノサイト(色をつくる細胞)にも届きます。

活性化したメラノサイトが、多くの粒を送り出しています
第2幕
増産 メラノサイトが働きを強める
炎症が刺激になって、メラニンが多くつくられます。

第2幕
増産 メラノサイトが働きを強める
炎症が刺激になって、メラニンが多くつくられます。
炎症が起きると、メラノサイトはメラニンを多くつくりはじめます。これは異常な反応ではなく、傷んだ場所を守ろうとする皮膚の防御反応です。
もともとあったシミは境界がぼやけ、そのまわりまで含めて広く濃くなります。照射から1〜2か月目に色が濃く見えるのは、この時期にあたります。炎症が強かった場合には、粒の一部が表皮と真皮のさかい目を越えて深いところへ落ちていきます。

元のシミは消え、かわりに炎症後色素沈着が残っています
第3幕
鎮静 炎症がおさまる
供給が減っても、たまった色はまだ残っています。

第3幕
鎮静 炎症がおさまる
供給が減っても、たまった色はまだ残っています。
炎症がおさまると、メラノサイトの働きはもとの状態に近づきます。基底層のまわりでは、新しくつくられる粒が減っていきます。
ところが、上のほうの層にはこれまでにつくられた粒がまだ残っています。もとのシミは消えているのに、かわりに広く濃い色が残っている。患者さんがいちばん戸惑われるのが、この時期です。

上は剥がれ落ち、下はマクロファージが食べてリンパ管へ運びます
第4幕
排出 2つの道すじ
表皮は肌の生まれ変わりで、真皮はマクロファージが運び出します。

第4幕
排出 2つの道すじ
表皮は肌の生まれ変わりで、真皮はマクロファージが運び出します。
たまった色が出ていく道は、深さによって違います。
表皮にある粒は、肌が生まれ変わるのにあわせて上へ押し出され、表面から剥がれ落ちます。こちらは比較的早く進みます。
真皮まで落ちた粒は、この仕組みでは運べません。マクロファージという細胞が少しずつ食べて(貪食して)、リンパ管へ運び出します。深いところの色が薄くなるまでに時間がかかるのは、この違いによります。

炎症も色素沈着もなく、通常の状態に戻った肌です
第5幕
回復 もとの肌に戻る
メラノサイトが落ち着き、色素沈着も消えていきます。

第5幕
回復 もとの肌に戻る
メラノサイトが落ち着き、色素沈着も消えていきます。
炎症がなくなり、メラノサイトが通常の働きに戻り、たまった粒も運び出されると、色は目立たなくなります。
顔の美容医療では、多くの場合3〜4か月から半年ほどでここに近づきます。時間がかかるときは、たいてい前の幕のどこかで炎症が強かったか、長引いたかのどちらかです。
炎症後色素沈着は、そのままずっと残りつづけるものではありません。多くの場合は、3〜4か月から半年ほどで落ち着いてきます。
ただし、薄くなる速さは部位によっても変わります。診察で見ているかぎり、肌の生まれ変わりの速さは顔の中でも場所によって違います。同じ日に同じ設定で照射しても、回復の速さに差が出るのはこのためです。
薄くなるまでの時間は、メラニンがどの深さにあるかで変わります
炎症が軽ければ、増えたメラニンは表皮の中にとどまります。表皮は生まれ変わりが早いので、比較的早く薄くなっていきます。
炎症が強いと、表皮と真皮のさかい目が壊れ、メラニンがその下の真皮まで落ち込みます。真皮には、表皮のように上へ押し出して剥がす仕組みがありません。かわりに、マクロファージが少しずつ食べて(貪食して)リンパ管へ運び出すため、出ていくのに時間がかかります。
色素沈着についての総説(参考文献6)は、重症度を決めるものとして「生まれつきの肌の色」「炎症の強さと深さ」「表皮と真皮のさかい目がどれだけ壊れたか」などを挙げ、メラニンがどの深さにあるかが、その後の見通しを決めるとしています。
だからこそ、炎症をどれだけ軽く抑えられるかが大事になります。炎症を軽く抑えられれば、色素沈着そのものが減りますし、出たとしても引くのが早くなります。
取り切れていないシミとの見分け方
照射から1〜2か月目に、シミのあった場所が濃くなっている。このときは、まず炎症後色素沈着を考えます。
炎症後色素沈着であれば、月を追うごとに薄くなっていきます。その経過を見ながら判断します。
一方で「シミが取り切れていないのか」を見きわめるには、3〜4か月から半年以上お待ちいただくことになります。色が薄くなっていく途中では、両者を分けることが難しいためです。
色素沈着が出たからといって、失敗ではありません
治療のあとに色が濃くなると、「失敗した」「シミが濃くなってしまった」と受け取られることがあります。とくに多いのは、スポット照射(シミを1か所ずつ狙って強めに照射する方法)のあとに色素沈着が出たときです。
ですが炎症後色素沈着は、炎症に対する皮膚の正常な反応として起こります。どれだけ丁寧に照射しても、起こりうるものです。
どのくらいの確率で起こるのか
スポット照射では30〜50%とお伝えしています
ここでお伝えする数字は、先ほどのスポット照射についてのものです。当院で行っているシミ治療の全体に当てはまる数字ではないので、そこはご注意ください。
スポット照射をお受けになる方には、30〜50%という数字でご説明しています。70%と説明する施設もあります。
なぜ、論文より高い数字でお伝えするのか
論文にはこれより低い数字も出ています。それでも高めの数字でお伝えするのには、理由があります。
ひとつは、低いほうの数字だけが記憶に残りやすいからです。もうひとつは、この種の数字が「大勢の人を集めたときの割合」であって、目の前のご自身に起こる確率ではないからです。起きてしまえば、その方にとっては100%です。
ナノ秒レーザーの時代から言われてきた30〜50%という数字で考えていただくほうが、結果として安全な方向に働くと考えています。
照射のしかたが変われば、この数字も変わります。次の表には、照射の強さを変えた比較と、パルス幅の違いを比べた研究を並べました。
表には載せていませんが、光を点状に分割する方法でも、同じ研究の中で色素沈着は大きく減ったと報告されています(参考文献2。ただしこの研究は通常の診療より強めの条件で行われているため、発生率そのものは表に載せていません)。当院がその方法を主体にしているのも、これが理由です。
同じ研究の中でも、照射のしかたで数字はここまで変わります
論文に出ている発生率は、研究によって大きく違います。以下は、日本と韓国で通常の診療に近い条件で行われた研究です。
※この表は、研究どうしの数字を比べるものではありません。見ていただきたいのは、同じ研究の中での上下の差です。
| 研究 | 照射のしかた | 色素沈着が出た割合 |
|---|---|---|
| 日本・ピコ秒レーザー(参考文献4) | 穏やかな設定 | 4.65% |
| 日本・Qスイッチ(参考文献1) | 穏やかな照射 | 7.5% |
| 日本・Qスイッチ(同じ研究) | 強い照射 | 33.3% |
| 韓国・532nm(参考文献3) | ピコ秒 | 5% |
| 韓国・532nm(同じ研究) | ナノ秒 | 30% |
※3か月時点、または各研究の主要な評価時点の値
この表から読み取れること
いちばん上の4.65%は、比べる相手のない単独の報告です。条件が整えばここまで低い数字も出る、という参考としてのみ載せています。
参考文献1は、対象となった集団も使った機器も同じで、変えたのは照射の強さだけです。それでも 4.4倍 の開きがつきました。参考文献3は、ピコ秒とナノ秒という機器の設計を比べたもので、こちらは 6倍 です。
開きを生んでいるのは、照射の強さと、パルス幅という機器の設計の2つです。どちらも「どの機種が優れているか」という話ではなく、どの肌に、どの機器を、どの強さで使うかという選び方の話です。そしてそこは、こちらの工夫で変えられます。
肌の色と、起こりやすさ
日本人は、もともと起こりやすい側にいます
皮膚科では、肌の色を表すのにフィッツパトリック分類という分け方を使います。日焼けをしたときに「赤くなるか」「黒くなるか」をもとに、世界中の人の肌をI型からVI型までの6段階に分けたものです。
| 型 | 日焼けしたときの反応 | 主にどのあたりの人か |
|---|---|---|
| I | いつも赤くなる。黒くならない | 白人に多い |
| II | 赤くなりやすい。少しだけ黒くなる | 白人に多い |
| III | 少し赤くなり、そのあと黒くなる | 日本人に多い |
| IV | あまり赤くならず、よく黒くなる | 日本人に多い |
| V | ほとんど赤くならない。もともと色が濃い | 中東・アフリカ系などに多い |
| VI | 赤くならない。もっとも色が濃い | 中東・アフリカ系などに多い |

数字が小さいほどメラニンが少なく、大きいほどメラニンが多い肌です。
この分け方は、日本人の中での違いではありません
世界中の肌を6段階に並べたもので、その中で日本人がどこに位置するか、という見方をします。
白人の多くはI型からII型です。もともとメラニンをつくる量が少ない肌です。これに対して、日本人を含むアジア人はIII型からIV型が多くなります(II型に近い方もいらっしゃいます)。
日本人は、白人よりもメラニンをつくる力が強い肌を持っています。そのため、レーザーのような強い刺激が加わったときに、炎症後色素沈着が起こりやすい側にいます。海外の論文をそのまま当てはめられないのは、このためです。
言いかえると、日本人の肌は「効く出力」と「炎症を起こしてしまう出力」のあいだの幅が、もともと狭いということです。強すぎれば炎症が強く出て、弱すぎればシミが反応しません。ヘリオス785のページでも、同じ点に触れています。
なぜメラニンが多いと起こりやすいのか
レーザーの光は、狙ったシミの色素に届く前に、表皮にあるメラニンに先に吸収されてしまいます。
表皮のメラニンが多いほど、そこで吸収される分が増えます。その分だけ表皮が熱を受けることになり、炎症が強くなります。炎症が強くなれば、色素沈着も起こりやすくなり、消えるまでの時間も長くなります。

実際、III型からVI型の範囲で比べると、はっきりした差が出ます。ケミカルピーリング473件を調べた研究(参考文献7)では、VI型の方は、他の型に比べて副作用が起こりやすいと報告されています(オッズ比5.14。起こりやすさの比を表す指標で、5.14倍という意味ではありません)。
色素沈着の総説(参考文献6)も、レーザーによる合併症として肌の色が濃い方に多いと述べています。レーザー治療の総説(参考文献8)も、メラニンの多い肌ほど頻度が高く、程度も強いと述べています。
日本人・韓国人を対象にした研究では、差が出ていません
ここは少しややこしいので、関心のある方だけお読みください。日本人や韓国人を対象にした研究では、スキンタイプによる色素沈着の差が、ほとんど出ていません。
なぜ研究では差が出ないのか
日本の研究(参考文献1)でも、韓国の516名を調べた研究(参考文献5)でも、スキンタイプによる差はほとんど見られませんでした。
これを「日本人のなかでは肌の色は関係ない」と読むのは、正しくないと考えています。
おそらく、治療にあたった医師が出力を調整していたためです。同じ民族の方を日々診ていれば、色白の方には抑えめに、色が濃い方にはさらに抑えめに、という調整は経験のなかで自然に行われます。その結果、肌の色による差が、出力の調整で吸収されてしまったと考えるほうが自然です。
実際の診療では、差ははっきりあります。本当に色白の方と色が濃い方とでは、使える出力がまるで違います。
出力の上限を下げる要因は、地肌の色だけではありません。シミがたくさん乗っている方も、表皮にメラニンが多い状態です。その分だけ、出力は抑えることになります。
地肌の色とシミの量は、別々の要因です。両方が重なるほど、使える出力の上限は下がります。逆に、同じようにシミが多い方どうしでも、地肌が色白の方のほうが、色が濃い方より高い出力を使えます。
その方にどこまで出力を上げられるかは、肌の色でだいたい決まってきます。そのうえで実際に色素沈着が出るかどうかは、その範囲の中でどこまで出力を上げたかによります。
実際の診察では ── 出力の決め方
日本人の肌はおおむねII型からIV型に収まりますが、その境目はあいまいです。もっとも多いのはIII型からIV型のあたりです。
II型に近い方は、比較的治療を進めやすい印象があります。III型からIV型の方には、出力を抑えたところから始めます。
IV型に近い方では、シミの治療に入る前に美白治療を先行させることがあります。内服や外用で肌全体のトーンを整えておくと、シミと地肌の色の差が大きくなります。差が大きいほどレーザーはシミだけを狙いやすくなり、抑えめの出力でも反応させやすくなります。そのうえで、シミの治療に移ります。
同じ機種で出力だけを変えるのではなく、使うレーザーそのものを変えることもあります。1回で終えようとせず、回数をかけて少しずつ進める選択も取ります。
出力を上げないと判断するとき、何を見ているか
ひとつは地肌の色そのもの。それから日焼けの程度です。VISIA(肌の状態を撮影して数値で比べられる機器)では前回の画像と並べて、全体の肌の色がどちらへ動いているか、日焼けが進んでいないかを確認します。
もうひとつ、言葉にしにくいのですが、肌の疲れ具合を見ています。キメが乱れていないか、赤みが残っていないか、乾いていないか。荒れている、回復する力が落ちていそうだと感じる肌には、出力を上げすぎないように気をつけます。同じ型の方でも、そのときの肌の状態で出せる出力は変わります。
起こる確率を下げるために、できること
ここまでで、炎症を軽く抑えられれば色素沈着は減るということを説明しました。では、そのために実際に何ができるのか。5つあります。このうち1番と4番は診察室で決めること、2番・3番・5番はご自身の側で効いてくることです。数だけ見れば、ご自身にできることのほうが多いくらいです。
1.照射を強くしすぎない
もっとも効くのがこれです。
日本で行われた研究(参考文献1)は、同じ機器を強く照射した群と穏やかに照射した群に分けて、355か所のシミを比べました。色素沈着が起きたのは、強く照射した群で33.3%、穏やかに照射した群で7.5%。4.4倍の差です。
そのうえ、シミの取れ方は両群で変わりませんでした。強く当てた分の見返りがなかったわけです。
やり方でも同じことが示されています。同じピコ秒レーザーを、面で照射するやり方と、点状に分割して照射するやり方で左右に分けて比べた研究(参考文献2)では、分割した側で色素沈着が大きく減りました。
(「どのくらいの確率で起こるのか」の章で述べたとおり、この研究の条件は通常の診療より強めです。)1回あたりの熱の負担を小さくすると、色素沈着は減ります。
2.照射の前に、日焼けを持ち込まない
日焼けをすると、表皮のメラニンが一時的に増えます。表皮のメラニンが増えれば、狙った色素に届く前に吸収される分が増えます。
その結果、同じ出力でも表皮が受ける熱が増え、炎症が強くなります。言いかえると、日焼けをしている間は、その方が安全に使えるレーザー出力の上限が下がっている状態です。
実際の診察では ── 日焼けの見きわめ
判断の中心はVISIAの前回比較です。ただし最終的には、実際の肌を見て決めます。
肌の色もシミの色も、季節によって動きます。VISIAで厳密に比べれば、夏場にはたいてい何らかの色素の増強が出ます。ですから「増えているかどうか」ではなく、その増え方が許容範囲に収まっているかを見ています。
許容範囲であれば、レーザー治療は行います。許容範囲を超える増強があるときは、照射を控える、別のレーザーに変更する、あるいは日焼けからの回復を促す治療に組み替える、といった対応を取ります。
待つ期間について、決まった目安は持っていません。ただ、多くの方は日焼けから1か月ほどでかなり戻ります。
当院では定期的にVISIAで撮影しているので、どこまで回復したかを画像で比べられます。許容範囲まで戻っていれば照射できる、という判断です。強く焼けて黒くなっている場合は、1か月では足りないこともあります。
ここで効いてくるのが、日焼けする前の肌の状態が記録されているかどうかです。前の状態が分かっていれば、いまどこまで戻ったかを割り出しやすくなります。だから、定期的に撮っておきます。
日焼けした状態で来院されたとき
まず回復を優先します。窒素プラズマは、この場面で重要な機器です。日焼けした直後で赤みが強く、肌が荒れている場合には、ヒアルロン酸導入など、鎮静を優先した組み立てにします。
夏は治療できないのか
当院では、日焼けが強くなければ夏でも治療は可能と考えています。基本的な日焼け対策をしていただければ、シミの治療は十分に行えます。
ただし日焼け対策の度合いには、個人差がかなりあります。ご自身では日焼けしていないつもりでも、VISIAの画像上では色素の増強が見つかることがあります。この差を拾うために、毎回撮っています。増強が見つかれば、日焼け対策の見直しから照射の出力調整まで、その方に応じた対応ができます。
3.照射のあとも、紫外線を避ける
紫外線が効いてくるのは、照射のあとも同じです。
532nmのQスイッチレーザーで治療した方を追跡した研究(参考文献9)では、色素沈着が起こりやすくなる要因として、日中(13時から17時)に屋外で過ごすことが挙げられています(オッズ比8.10)。照射2週間後の赤みが強いことも要因として挙がっています。
照射のあとしばらくは、まだ炎症が続いています。その時期に紫外線を浴びると、炎症がさらに長引き、メラニンをつくる期間も延びることになります。治療後の日焼け止めは、治療そのものと同じくらい大事です。
4.もとの病変がある場合は、治療の順番を守る
シミと一口にいっても種類があり、深さも違います。深いところにある病変を治療しようとすると、どうしてもレーザーの出力が高くなります。出力が高くなれば炎症も強くなり、色素沈着も起こりやすくなります。
複数の病変が混ざっているときは、どれから手をつけるかで色素沈着の起こりやすさが変わります。

ADMがある場合
ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)の色素は、真皮という深い層にあります。ここへ届かせようとすると、レーザーの出力は高めになります。点状に分割せず、シミ全体に面でまとめて照射する方法(フルビーム)の場合、そのぶん、色素沈着も濃く出ます。
ただし実際には、ADMと診断がついた方でも、多くは日光性色素斑やそばかすなど、浅いところにあるシミが一緒に存在しています。当院ではルビーフラクショナルを主体に、浅いシミの治療と並行して進めます。
浅いところの色素が減っていくと、その分だけADMへレーザーが届きやすくなります。逆に日焼けなどで浅いところの色素が増えてしまうと、ADMへ届く光は減ります。
浅い層の色素をできるだけ増やさないことが、深い層の治療を進めるうえでも効いてきます。そこで、美白治療(トラネキサム酸の内服・外用など)と日焼け対策を並行して行います。
肝斑が混じっている場合
肝斑があるなら、まず肝斑からです。これは例外なくそうしています。
理由は2つあります。ひとつは、肝斑は熱の刺激で悪化しやすいこと。シミの治療で使う出力が、そのまま肝斑を刺激してしまいます。もうひとつは、表層の色素が多いままだと、その下にある深いシミへ光が届きにくくなることです。
まず肝斑を落ち着かせ、そのうえでADMの治療に移ります。
治療が進むと、隠れていたADMが見えてくることがあります
浅いところの肝斑や日光性色素斑が取れてくると、それまで隠れていたADMがはっきり見えてくることがあります。
もともとそこにあったものが、上に重なっていた色が薄くなって、見えるようになっただけです。ただ、これをあらかじめ知らないと、「治療を進めたら新しいシミが出てきた」としか見えません。
ですから当院では、ADMが疑われる場合にはできるだけ早い段階でお伝えし、あとからADMの治療も必要になることを説明しています。
5.擦らない。かさぶたを無理に剥がさない
1番と4番は、こちらで決めることでした。2番・3番と同じく、これはご自身の側の話です。なかでもこれは、ご自身にしかできません。
照射のあと、その場所はまだ炎症のさなかにあります。そこを指でこすったり、できかけたかさぶたを無理に剥がしたりすると、炎症をもう一度足すことになります。
さきほど述べたとおり、炎症が強くなるほど、表皮と真皮のさかい目が壊れやすくなります。さかい目が壊れれば、メラニンは真皮へ落ちます。真皮に落ちた色は、出ていくのに時間がかかります。つまり、擦ることは色を深いほうへ追いやる行為です。
実際、照射2週間後の赤みが強いことが色素沈着のリスクとして報告されています(参考文献9)。炎症を長引かせないことが、そのまま予後につながります。洗顔もメイク落としも、その部分だけはやさしく扱ってください。
当院での取り組み
ルビーフラクショナルを主体にしています
先に触れたとおり、強く照射してもシミの取れ方は変わらず、色素沈着だけが増えたと報告されています(参考文献1)。照射を点状に分割すれば、色素沈着は減ったという報告もあります(参考文献2)。
当院がルビーフラクショナルを主体にしているのも、この考え方によります。1回あたりの熱の負担を小さくして、回数をかけて進めるやり方です。
一方で、スポット照射のほうが少ない回数で済む場面もあります。どちらが優れているという話ではありません。色素沈着が出る可能性をどこまで受け入れられるかを含めて、ご相談のうえで決めています。
初診の当日に照射は行いません
初日は診察とVISIA肌画像分析で肌の状態を確かめ、ご検討いただいたうえで、後日の治療としています。
その日の肌が、その方にとって出せる出力のどのあたりにあるのか。日焼けは入っていないか。肌は疲れていないか。これを確かめずに照射したくないからです。
ご予約・お問い合わせ
ご理解いただけない場合、スポット照射は行いません
色素沈着が起こる確率は決して低くありません。事前にご説明していても、すべてを覚えていらっしゃるわけではないことも承知しています。
それでも、この点を十分にご理解いただけなかった方には、スポット照射を行わないことにしています。その場合は、ルビーフラクショナルのように少しずつ薄くしていく治療をお勧めします。時間はかかりますが、そのほうが安心して続けていただけると考えています。
まとめ
- 炎症後色素沈着は、炎症に対する皮膚の正常な反応です。レーザーは熱をかける治療ですから、ゼロにはできません。
- ふつうのシミとは違い、原因がなくなれば自然に薄くなっていきます。顔では、多くの場合3〜4か月から半年ほどです。
- 延びるときには、理由があります。擦った、日焼けした、そもそも照射が強すぎて色素が真皮まで落ちた。どれも炎症の強さと長さに行き着きます。
- 薄くなるまでの時間は、色の深さで変わります。炎症が軽ければ表皮にとどまり、早く薄くなります。炎症が強いと真皮まで落ち込み、時間がかかります。
- スポット照射では、30〜50%の確率でご説明しています。論文の数字は研究によって開きがありますが、その幅をつくっているのは、照射の強さと機器の設計です。
- 肌の色が濃いほど起こりやすくなります。肌の色で使える出力の上限が決まり、その範囲のどこまで上げたかで結果が決まります。
- 減らすためにできることは5つ。照射を強くしすぎない。照射前に日焼けを持ち込まない。照射のあとも紫外線を避ける。もとの病変があれば治療の順番を守る。そして、擦らない。
- 色素沈着が出たとしても、治療の失敗ではありません。経過を見ながら、次にどう進めるかをご相談します。
すでに色素沈着が出ている方へ
このページは、これから治療を受ける方に向けて書きました。すでに色が濃くなってしまった方は、まず経過を確かめるところからになります。いつごろ照射したのか、そこからどう変わってきたのか。それによって、待つのか、手を打つのかが変わります。
出てしまったあとの過ごし方は、シミ治療後の再発・戻りジミのページで扱っています。ご自身の肌がどの段階にあるか判断がつかないときは、一度診察でご相談ください。
ご予約・お問い合わせ
よくあるご質問
炎症後色素沈着は消えますか?
多くの方は薄くなっていきます。顔に起きたものであれば、3〜4か月から半年ほどで落ち着くことがほとんどです。
延びるときには、たいてい理由があります。その部分を擦ってしまった、日焼けをしてしまった、あるいは照射が強すぎて色素が真皮まで落ちてしまった、といったことです。ですから、治療のあとの数か月はできるだけ触らず、日焼けを避けていただくのがいちばんの近道になります。
経過の目安と対処についてはシミ治療後の再発・戻りジミのページにまとめています。
色素沈着が出たら、治療が失敗したということですか?
いいえ。炎症後色素沈着は、炎症に対する皮膚の防御反応です。照射はやけどの一種ですから、どれだけ丁寧に当てても起こりうるものです。
スポット照射の場合、照射の前に30〜50%という確率でご説明しています。決して低い数字ではありません。この点をご理解いただいたうえで治療に進んでいただくようにしています。
炎症後色素沈着を治すクリームはありますか?
外用・内服による対策は行われており、当院でもトラネキサム酸の内服・外用を状況に応じて併用しています。
ただし、レーザー後の色素沈着の予防について報告は一定していません。スポット照射のあとに経口トラネキサム酸を4週間内服した無作為化試験では、予防効果は示されていません(参考文献11)。一方で、照射の2週間後から外用を始めた試験では、色素沈着が出た割合が55.3%から31.0%に下がったと報告されています(参考文献9)。内服か外用か、どの照射法か、どれだけの期間かによって結果が変わるため、一律の答えはありません。
詳しくはトラネキサム酸のページをご覧ください。
夏でもシミ取りは受けられますか?
受けられることが多いです。夏だからという理由だけでお断りすることはありません。判断の分かれ目は季節ではなく、その方の肌に日焼けがどれだけ入っているかです。
毎回の撮影で前回と比べ、色の増え方が許容の範囲なら照射します。範囲を超えていれば、日焼け止めの使い方を見直していただいたり、出力を下げたり、時期をずらしたりします。日傘・帽子・こまめな塗り直しができている方は、夏でもあまり問題になりません。
ADMと言われました。色素沈着が出やすいのでしょうか?
面でまとめて照射する方法を選んだ場合には、その可能性があります。ADMの色素は真皮という深い層にあるため、届かせようとすると出力が高くなり、そのぶん炎症も強くなるためです。
当院では出力を上げずに済む方法を選び、浅いシミの治療と並行して回数をかけます。肝斑が同時にある方は、そちらを落ち着かせてからになります。
治療を進めたら、新しいシミが出てきた気がします
その可能性は低いと思います。多くは、上に重なっていた色が薄くなったことで、下に隠れていたADMが見えるようになった状態です。
診察では、色の出方と、これまでの経過を並べて判断します。あらかじめADMの可能性をお伝えしている方であれば、驚かずに受け止めていただけることがほとんどです。心当たりがない場合も、まずは一度ご相談ください。
参考文献
発生率と、その幅を作っているもの
1強く照射すると色素沈着は4倍以上に増えたが、色の抜け方は変わらなかった
要約:
スキンタイプIII〜Vの193名・355か所の日光性色素斑を、照射直後にはっきり白く変化するまで強く照射した群と、わずかに白くなる程度で止めた穏やかに照射した群に無作為に分けて比較した研究です。炎症後色素沈着は、強く照射した群でルビー33.33%・532nm 23.18%、穏やかに照射した群でルビー7.47%・532nm 8.47%(p<0.001)。一方で色の抜け方には4群間で有意差がなく、スキンタイプによる差も認められませんでした。著者らは、強い照射は色素沈着を増やすだけで効果の面での利点はないと結論しています。
このページでは「どのくらいの確率で起こるのか」と「起こる確率を下げるために、できること」の章で、色素沈着を決めているのが機種ではなく照射の強さであるという根拠として引用しています。
2同じ機種でも照射を点状に分割すると、色素沈着は96%から36%に下がった
要約:
スキンタイプIII〜Vで顔の左右に日光性色素斑がある27名を対象に、片側を532nmピコ秒レーザーの従来手技で、もう片側を同じ機器にマイクロレンズアレイを付けて点状に分割した手技で1回だけ治療し、6か月まで追跡した無作為化試験です。色素の抜け方は両側とも有意に改善しました。炎症後色素沈着は、従来手技側で2週・1か月・3か月・6か月時点にそれぞれ64%・80%・96%・88%、分割照射側で8%・32%・36%・16%と、すべての時点で分割照射側が有意に低い結果でした。一時的な色抜けも従来手技側20%に対し分割照射側4%でした。
このページでは「どのくらいの確率で起こるのか」と「起こる確率を下げるために、できること」の章で、1回あたりの熱の侵襲を小さくすると色素沈着が減るという根拠として引用しています。
読むときの注意(この研究は本文の表に載せていません):従来手技のフルエンスは0.3〜0.7 J/cm2で、日本人を対象にした参考文献4の0.35 J/cm2と比べると上限が2倍近くあります。分割照射側も9mmスポットで2パスと、投入されるエネルギーは小さくありません。対象もFitzpatrick III〜V型で、日本人より色の濃い肌を含みます。群のあいだに差をつけて比較するために、通常の診療より強めの条件が選ばれた可能性があり、ここで示された発生率をそのまま日本人の日常診療に当てはめることはできません。そのため発生率の表には載せず、参考としてここにのみ記載しています。引用しているのは絶対値ではなく、「同じ研究のなかで手技を変えたときの差」です。なお532nmのフラクショナル照射は、機器としては存在するものの実際に広く使われている方法ではなく、その背景にはこうした反応の出やすさがあると考えられます。
3同じ532nmでも、ピコ秒とナノ秒で色素沈着は5%と30%に分かれた
要約:
韓国の日光性色素斑の患者20名を対象に、顔の片側を532nmピコ秒レーザー、もう片側を532nm Qスイッチ(ナノ秒)レーザーで1回治療し、12週まで追跡した単盲検の無作為化スプリットフェイス試験です。3名の盲検評価医による5段階評価では、色の抜け方はピコ秒側のほうが良好でした。炎症後色素沈着はピコ秒側で5%、Qスイッチ側で30%。患者の満足度と痛みのスコアには両群で差がありませんでした。
このページでは「どのくらいの確率で起こるのか」の章で、パルス幅を短くして熱の広がりを抑える設計が色素沈着に効くことの根拠として引用しています。
4日本人を対象にした報告では、色素沈着は4.65%にとどまった
要約:
日本人女性20名・43か所の顔の日光性色素斑を、532nm・750ピコ秒のピコ秒Nd:YAGレーザー(平均0.35 J/cm2、スポット径3〜4mm)で治療し、最終照射から3か月まで追跡した前向き研究です。1回の治療で43か所中40か所(93.02%)が75%以上の改善に達し、炎症後色素沈着は4.65%にとどまりました。組織学的検討では、Qスイッチレーザーが周囲組織の損傷を伴ってメラノソームを破壊していたのに対し、ピコ秒レーザーでは周囲組織の目立った損傷が見られなかったと報告されています。
このページでは「どのくらいの確率で起こるのか」の章で、条件が整えば低い発生率も報告されうることの根拠として引用しています。あわせて、当院が高めの数字でご説明している理由の対照として挙げています。
5516例の多施設調査では、スキンタイプより赤みのある色素斑のほうがリスクだった
要約:
韓国の5つの大学病院で532nm Qスイッチレーザーによる日光性色素斑の治療を受けた516名を後ろ向きに解析した多施設研究です。炎症後色素沈着の全体の発生率は20.3%でした。リスク因子としては、赤みを伴う色素斑、顔面のびまん性の色調不整、毛穴が目立たずビロード様の肌質が有意に関連していました。一方で、年齢・性別・Fitzpatrickスキンタイプ・治療した季節は、色素沈着との関連がほとんどありませんでした。
このページでは「肌の色と、起こりやすさ」の章で、狭いスキンタイプの範囲内ではスキンタイプよりも他の因子が効いてくることの根拠として引用しています。対象は韓国の集団であり、日本人のデータではありません。
肌の色との関係
6色素沈着の重症度を決めるのは、肌の色・炎症の強さと深さ・接合部の壊れ方である
要約:
炎症後色素沈着の疫学・病態・臨床像・評価法をまとめた総説(2部構成の第1部)です。炎症後色素沈着は肌の色が濃い方に多く、レーザーや光治療のもっとも一般的な合併症のひとつであると位置づけています。重症度を決める要素として生来の肌の色、炎症の強さと深さ、表皮真皮接合部が壊れた程度、炎症性疾患の有無、メラノサイトの安定性を挙げ、これらがメラニンを表皮と真皮のどちらに沈着させるかを決めるとしています。そしてメラニン色素がどの深さにあるかが、予後と治療効果を予測する鍵であり、表皮の色素沈着は真皮のものより早く薄くなると述べています。
このページでは「炎症後色素沈着はどうやってできるのか」の章と、「肌の色と、起こりやすさ」の章で引用しています。本ページが「深さ」と「炎症の強さ」を軸に組み立てられているのは、この整理に沿ったものです。
7スキンタイプVIでは、有害事象のオッズ比が5.14だった
要約:
スキンタイプIII〜VIの方に行われた浅いケミカルピーリング473件を、5年分さかのぼって解析した単施設の研究です。合併症は18件(3.8%)で、内訳はかさぶた2.3%、炎症後色素沈着1.9%、紅斑1.9%。すべて8か月以内に消失しました。調整後のモデルでスキンタイプVIは有害事象のオッズ比5.14(95%信頼区間 1.21–21.8、p=0.0118)と、他のスキンタイプより有意に高い結果でした。また副作用は冬季に少ないという季節差も認められています。
このページでは「肌の色と、起こりやすさ」の章で、III型からVI型の範囲で比べたときに肌の色が明確な因子として出てくることの根拠として引用しています。レーザーではなくケミカルピーリングの研究であり、処置の種類が異なる点にご留意ください。
8メラニンに富む肌ほど、炎症後色素沈着は高頻度かつ重症になる
要約:
スキンタイプIII〜VIの方の炎症後色素沈着に対するレーザー治療の文献を整理した総説です。炎症後色素沈着はメラニンに富むフォトタイプでもっとも高頻度かつ重症に現れ、経過は慢性的で予測しにくいと述べています。治療については、反応のばらつき・費用・合併症のリスクからレーザーは外用治療に次ぐ二次選択と位置づけ、外用に反応しない場合の補助的な選択肢として、適切な設定のもとでのNd:YAGレーザーやフラクショナル光熱分解が挙げられるとしています。
このページでは「肌の色と、起こりやすさ」の章で、肌の色と炎症後色素沈着の関係を示す根拠として引用しています。すでに生じた色素沈着の治療については、当院では外用・内服を優先しており、本ページの主題からは外れます。
紫外線・日焼けとの関係
9照射後の日中の屋外活動は、色素沈着のオッズ比を8.10に上げた
要約:
532nm Qスイッチレーザーで日光性色素斑を治療した28名・67か所を、照射2週後から外用薬を使う群と保湿剤のみの群に無作為に分け、3名の盲検皮膚科医が色素沈着を判定した研究です。保湿剤のみの群では55.3%に炎症後色素沈着が生じました。リスク因子は照射2週時点の紅斑の強さ(オッズ比1.32、p=0.035)と13時から17時の屋外活動(オッズ比8.10、p=0.038)。外用を開始した群では発生が31.0%と有意に低い結果でした(p=0.048)。
このページでは「起こる確率を下げるために、できること」の章で、紫外線が照射前だけでなく照射後にも影響することの根拠として引用しています。
経過と見通し
10経過は慢性的で予測しにくい。ただし表皮にとどまる色素のほうが、真皮の色素より消える見込みが高い
要約:
参考文献6と対をなす総説の第2部で、炎症後色素沈着の治療と予防を扱っています。冒頭で「炎症後色素沈着の経過は慢性的で予測しにくい(chronic and unpredictable)。ただし表皮の色素沈着が消える見込みは、真皮の色素沈着より良好である」と述べています。対応の順序としては、まず背景にある炎症そのものを見つけて治療し、炎症の進行と色素沈着の進行を抑えることを第一段階に置き、炎症がおさまってから色素沈着そのものの治療を考える、という組み立てを示しています。
このページでは「ずっと残ってしまうことは、あるのでしょうか」の章で、経過の見通しと、深さによって見込みが変わることの根拠として引用しています。
内服による予防
11Qスイッチルビーレーザーのあとの経口トラネキサム酸は、色素沈着の予防効果を示さなかった
要約:
日本人女性32名の顔の日光性色素斑をQスイッチルビーレーザーで治療し、照射後4週間にわたり経口トラネキサム酸(750mg/日)を服用する群15名と、服用しない群17名に無作為に分けて比較した研究です。色素は2週の時点でよく抜けていましたが、4週の時点では炎症後色素沈着が高い頻度で見られ、内服の有無で発生率に有意差はありませんでした。肝斑様の色素斑が併存していても結果は変わりませんでした。著者らは、用量と期間の設定を見直す必要があるかもしれないと述べています。
このページではFAQで、内服による予防について報告が一定していないことの根拠として引用しています。照射がスポット照射である点、内服が4週間と短い点にご注意ください。当院が行っている分割照射との組み合わせを検討した研究は、調べたかぎり見当たりませんでした。
※いずれもPubMedで書誌を確認しています。レーザーは機種によって波長・パルス幅・スポットサイズ・冷却方式が異なり、また対象となる集団のスキンタイプも研究ごとに違うため、ある研究の数値がそのまま別の条件に当てはまるとはかぎりません。
使用機器と承認範囲について(薬機法上の表記)
ルビーフラクショナル(NanoStar R)
当院で使用している NanoStar R(ナノスターアール) は、Qスイッチルビーレーザーとして国内の医療機器承認を受けています(承認番号:22900BZX00055000)。承認された使用目的は、色素性皮膚疾患の治療です。
ただし、本ページでご案内するルビーフラクショナルとしての照射方法は、国内で承認を受けた使用方法ではありません。自由診療として、医師が診察のうえで適応と照射条件を判断します。
救済制度について:万一、重篤な健康被害が生じた場合、医薬品副作用被害救済制度等の公的な救済制度の対象にはなりません。
- 販売名
- ナノスターアール(NanoStar R)
- 国内承認番号
- 22900BZX00055000
- 承認された使用目的
- 色素性皮膚疾患の治療
- 潜在的副作用
- 色素沈着・色素増強・刺激・発赤・浮腫・水疱形成・内出血(user manual より)
- 入手経路
- 国内販売元のグンゼメディカル株式会社から購入しています。
- 国内承認を受けた同一の照射方法の有無
- ルビーフラクショナルと同一の照射方法について、国内承認を受けた医療機器・使用方法はありません。
- 海外における認証・安全性等
- NanoStar RはCE認証を受けています(医療機器指令93/42/EEC)。ルビーフラクショナルとしての照射方法に関する海外の承認・安全性情報は限られており、未知のリスクを否定できません。
- 製造元
- Asclepion Laser Technologies
詳細はルビーフラクショナルのページをご覧ください。
窒素プラズマ(ネオジェン PSR Evo)
「起こる確率を下げるために、できること」の章で挙げた窒素プラズマ(ネオジェン PSR Evo/Energist社・英)は、国内未承認の医療機器です。
救済制度について:万一、重篤な健康被害が生じた場合、医薬品副作用被害救済制度等の公的な救済制度の対象にはなりません。
この治療法で用いられる医薬品・医療機器は国内においては薬機法上の承認を受けていません。
*承認を受けていない医薬品・医療機器について「個人輸入において注意すべき医薬品等について」のページをご確認ください。
国内には同様の機器は存在しないため 医師のライセンス下で個人輸入し使用しています。
- 潜在的副作用
- 熱傷・色素沈着・一時的なブラウンチェンジ・皮剥け・発赤・掻痒感
- 海外における承認取得情報
- FDA 2013年12月12日(K132754), CE or CE medical marking, Health Canada, KFDA, SFDA その他
- 製造元
- Energist(英)
機器の詳細はプラズマ美肌育成マシン ネオジェンEVO のページをご覧ください。
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監修者情報(医師紹介)

監修医師:佐藤 雅樹 (さとう まさき)
ソララクリニック 院長
専門分野:美容皮膚科
2000年 順天堂大学医学部卒。順天堂大学医学部形成外科入局。 大学医学部付属病院等を経て、都内美容皮膚科クリニックにてレーザー治療の研鑽を積む。2011年3月 ソララクリニック開院 院長就任。2022年 医療法人 松柴会 理事長就任。日本美容皮膚科学会 日本形成外科学会 日本抗加齢医学会 日本レーザー医学会 点滴療法研究会 日本医療毛髪再生研究会他所属。
様々な医療レーザー機器に精通し、2011年ルビーフラクショナル搭載機器を日本初導入。各種エネルギーベースの医療機器を併用する複合治療に積極的に取り組む.
※当院の治療はすべて自由診療(保険適用外)です。標準的な費用は各ページの料金表または料金表ページをご覧ください。治療に伴うリスク・副作用は診察時にもご説明します。
最終更新日