ニキビが できない人 Acne and Genetics
体質と遺伝で、
同じものを食べて、同じように夜ふかしをして、それでもニキビができない人がいます。こちらは洗い方を変えても、食べるものを見直しても、しばらくするとまた出てくる。
診察でも、このお話はよくうかがいます。「私はどうして」という言葉のあとに、たいてい「あの人は何もしていないのに」が続きます。
このページでは、その差がどこで生まれるのかをご説明します。先にお伝えしておくと、分かれ目は何をしたかではなく、いつ始まったかにありました。そして、なりやすさに関わる素因は、たしかに強く遺伝します。ただし、それで決まってしまうという話ではありません。
このページでお伝えすること
- まったくできない体質は考えにくいところです。ただ、まず出ないという方は確かにいらっしゃいます
- 分かれ目は皮脂が動き出す時期にあります。のちにニキビができたお子さんでは、皮脂の分泌がより早く始まっていました
- 菌の数の差は思春期に限った現象で、21歳を過ぎると差がなくなります
- なりやすさに関わる遺伝的な素因は複数あり、それらが絡み合って決まってきます。明らかな「ニキビの遺伝子」が見つかっているわけではありません
- 始まる時期は選べませんが、そのあとに続く時間は変えられます
この記事の目次
ニキビが本当にできない人はいるのか
医学的には、まったくできない体質というものは考えにくいものです。ニキビは毛穴の病気で、毛穴は誰にでもあり、皮脂も誰でも出しています。条件がそろえば、原理としては誰にでも起こりえます。
ただ、みんなが同じくらい起こる、という話とは違います。
診察での一言
理論上、本当にまったくできないという人はいないと思います。ただ、まず出ないという方は確かにいらっしゃいます。10年近く拝見していて、その方にニキビができると、こちらが非常に驚く。そういう方がいます。
理論の話と、実際に起きていることの話は別です。原理としては誰にでも起こりうる。ただ、10年拝見していて数えるほどしか出ない方がいらっしゃる。どちらも本当のことです。
毎月撮影していて、初めて写った一枚
毎月のようにVISIAで撮影させていただいている方で、初めてニキビができた画像が確認できたことがあります。
ほぼ完全無欠と言っていい肌の持ち主でも、ニキビができることはある。そう思わせる一枚でした。
もちろん、来院されていない期間にできて、治っていたということもあり得ます。そこまでは分かりません。
「一度も出たことがない」わけではないことが多い
ここでひとつ、知っておいていただきたいことがあります。
ニキビの始まりは、肌の表面からは見えません。毛穴の通り道が塞がった状態を、微小面皰(びしょうめんぽう)と呼びます。専用の樹脂で型を取り、顕微鏡で数えないと分からない大きさです。
額には1平方センチあたり400を超える毛穴があり、そのかなりの数ですでに詰まりが始まっている、という報告があります。
つまり、鏡に映るニキビの数と、毛穴の中で起きていることの数は、もともと釣り合っていません。「できない人」と見えている方も、まったく何も起きていないわけではなく、目に見える段階まで進むものが少ない、というのが実際に近い姿です。
毛穴の中で何が順番に起きているのかは、ニキビができる仕組み:毛穴の中の9段階で図とともにご説明しています。
できる人とできない人は、いつ分かれるのか
分かれ目は、思春期の入口にあります。皮脂が動き出す時期が早いか、遅いか。ここで差がついていることが、実際に測られています。

同じ形、同じ砂の量。違うのは、いつひっくり返したかだけです
皮脂が動き出す時期に差がある
5歳半から12歳のお子さんを、半年ごとに数年にわたって診察し続けた研究があります。皮脂の分泌と、皮膚にいる菌(アクネ菌)の広がりを、同じ子で追いかけたものです。
結果はこうでした。のちにニキビができたお子さんでは、皮脂の分泌がより早く始まっていた。そして、ニキビにならなかったお子さんでは、皮脂腺の活動も皮膚の表面の菌の数も、年齢が上がっても変わらなかった。
統計的に差がはっきりしていたのは、次の3点です。
- 思春期の年代での、皮脂の出ている総面積の増え方
- 思春期前の、皮脂を出す毛包の数の増え方
- 思春期の年代での、鼻の中の菌の密度の増え方
なお、皮膚の表面の菌の数は9歳以降に増える傾向はあったものの、統計的に有意ではありませんでした。「菌も早く広がる」と一括りにできるほど単純ではない、ということも合わせて申し添えます。
できなかった子では、変化そのものが起きていなかった
ここが大事なところです。同じ年齢で、同じ思春期の段階にいて、それでも毛穴の中で始まっている子と、まだ始まっていない子がいた。
「遺伝子を持っているかどうか」では語れません
病気のなかには、ひとつの遺伝子の変化が大きく効くものがあります。その場合は「その変化を持っているかどうか」で話ができますし、調べる意味もあります。
ニキビは、そうではありません。関わっているのは50か所以上で、一つひとつの効果はごく小さい。持っている人と持っていない人に分けられる、という構造をしていません。
ですから、遺伝子を調べて「あなたはニキビになりやすい」と言い当てられる段階には、まだありません。ニキビのなりやすさは、そういう形では決まっていないからです。
菌が広がる時期も、それに続く
もうひとつ、1975年に年代別の菌の数を数えた研究があります。
| 年代 | ニキビのある方 | ニキビのない方 |
|---|---|---|
| 11〜15歳 | 約114,800個/cm² | ほとんど検出されず |
| 16〜20歳 | 85,800個/cm² | 588個/cm² |
| 21歳以上 | 差なし | 差なし |
11歳から15歳では、桁が違います。ところが21歳を過ぎると、この差はなくなります。
同じ研究では、ニキビのある方の中で炎症が重い方と軽い方を比べても、菌の数に有意な関係はありませんでした。菌が多いから重い、という単純な話でもないということです。
だから「同じ生活でも差が出る」
同じ教室にいて、同じものを食べ、同じ時間に寝ていても、片方の毛穴ではもう皮脂が出ていて、片方ではまだ出ていない。この時期のずれが、そのまま「できる/できない」の差になって見えています。
何をしたかの差ではなく、いつ始まったかの差です。洗い方や食べ物の違いで説明しようとすると、どうしても腑に落ちないのは、そのためだと考えています。
思春期のニキビそのものの治し方については、別のページで改めてご説明する予定です。
では、どうすればよいのか
先ほどの研究の著者らは、こう結論しています。皮脂の分泌が始まる時期や、菌が広がる時期を思春期の後まで遅らせることが、発症を防いだり重症度を抑えたりする方法になりうる、と。
ただ、これは思春期前のお子さんに何かを始めるという話ではありません。実際にできるのは、出はじめたときに、できるだけ早く手を打つことです。
ニキビの方185名を調べた報告では、最初のニキビの程度と最終的な跡の程度に関連がありました。同時に、発症してから適切な治療を始めるまでに、長い方で3年の遅れがありました。そしてその遅れも、跡の程度と関連していました。
始まる時期は選べません。ただ、そのあとに続く時間は変えられます。
体質として、何が違うのか
大きくは3点です。皮脂の量とその中身、毛穴の壁の角化、そして炎症の起こりやすさ。どれも「時期」と結びついています。
皮脂は、量だけでなく中身が違う
皮脂に含まれるリノール酸という脂肪酸の割合は、ニキビの症状が重い方ほど低くなります。頭皮の表面脂質を調べた研究では、健常な方0.56%、軽症の方0.27%、重症の方0.19%でした。
さらに、皮脂の分泌量が増えるほど、この割合は下がります。体全体が栄養不足なのではなく、皮脂が増えることで、毛穴の壁のところだけが必要な脂を薄められてしまう、という関係です。
リノール酸は、毛穴の壁の細胞がきちんと角化していくための材料です。ここが足りなくなると、次の変化が始まります。
毛穴の壁が厚くなる
角質がつくられる量が増え、同時に剥がれ落ちにくくもなります。その結果、毛穴の周りの角層が厚くなって盛り上がり、毛穴の入り口はすり鉢の底のように見えてきます。
誤解されやすいところですが、毛穴そのものが広がったわけではありません。周りが持ち上がったために、そう見えているだけです。
同じことが毛穴の中でも起きて、通り道はだんだん狭くなります。詳しくは毛穴が詰まる理由:異常角化と角栓でご説明しています。
炎症が長引くかどうか
同じ程度の炎症性ニキビがあっても、跡が残りやすい方と残りにくい方がいます。両者の炎症の経過を比べた研究があります。
跡が残りにくい方では、免疫の細胞が早い時期に大量に集まり、48時間ほどでピークを迎えたあと、速やかに引いていきました。一方、跡が残りやすい方では初期の反応が小さく、むしろ治まりかけた時期に細胞が流れ込み、血管が新しくつくられる状態が続いていました。
つまり、炎症が長引くこと自体が跡の残りやすさと結びついています。炎症の起き方そのものには体質の差がありますが、続く時間のほうは短くできます。体質のせいにして終わらせる必要はありません。
ホルモンが皮脂の量を握っている
皮脂の量そのものは、ホルモンの働きに強く左右されます。
アンドロゲンがまったく働かない体質の方を調べた研究があります。皮脂の産生はまったく検出されず、副腎の機能が始まる前の2歳から6歳の小児と同じ水準でした。
洗い方だけで皮脂の量が決まるのではない。ここからも、それが分かります。
ニキビは遺伝するのか
ニキビのなりやすさに関わる遺伝的な素因は、複数あると考えられています。そして、それらがいくつも絡み合った結果として、できやすい・できにくいという差が出てきます。
「ニキビは遺伝しない」「科学的に証明されていない」と説明されることが多いようです。しかし、双子を対象にした研究は、いずれも強い遺伝の影響を示しています。
ただし、それは「ニキビの遺伝子」が見つかったという意味ではありません。ここを取り違えると、話が正反対の方向へ行ってしまいます。
双子の研究が示していること
よく引用される研究が2件あります。測っているものが違うので、分けてご紹介します。
平均46歳の女性、1,557組を調べた研究
一卵性458組と二卵性1,099組、合わせて1,557組の女性双生児を調べたものです。平均年齢は46歳で、ニキビになったことがあるかどうかを自己申告してもらう形でした。14%の方が既往ありと答えています。
人によってニキビになる・ならないの差が出るとき、その差の81%が遺伝の違いで説明できる。それがこの研究の結果でした(95%信頼区間73〜87%)。
残りの19%は、その方だけが経験した環境によるものとされています。
10歳から24歳、4,491名を調べた研究
オーストラリアの双生児ら4,491名を対象にしたものです。看護師が12歳・14歳・16歳の時点で、顔・背中・胸を4段階で評価しました。こちらは重症度の遺伝率が85%(95%信頼区間82〜87%)でした。
| Bataille 2002 | Mina-Vargas 2017 | |
|---|---|---|
| 対象 | 平均46歳の女性双生児 1,557組 | 10〜24歳の双生児ら 4,491名 |
| 測り方 | ニキビの既往を自己申告 | 看護師が4段階で重症度を評価 |
| 何の遺伝率か | なったことがあるか | どのくらい重かったか |
| 数値 | 81%(95%信頼区間 73〜87%) | 85%(95%信頼区間 82〜87%) |
前者は「なったことがあるか」、後者は「どのくらい重かったか」を測っています。別のものを測っているので、ひとまとめに「81〜85%」と言うのは正確ではありません。それでも、どちらも8割を超えている、というのが実際です。
この「8割」が意味していないこと
検索すると「ニキビのなりやすさ(遺伝率)は約80%」という説明が出てきます。数字そのものは、いまご紹介した研究のものです。ただ、この数字は次の4点のどれも意味していません。
「8割の人がニキビになる」ではありません
遺伝率が表しているのは、人数の割合とは別のものだからです。
なお、この研究でニキビの経験があると答えたのは14%でしたが、これは平均46歳の方に、過去を思い出して答えていただいた数字です。実際に経験された方の割合は、これよりかなり多いと考えられます。
「8割の確率で、子に伝わる」でもありません
遺伝率は、親から子へどのくらいの確率で受け継がれるかを表す数字ではありません。「◯%の確率で遺伝する」という言い方とは、測っているものそのものが違います。
「あなたのニキビの8割が遺伝で決まっている」でもありません
「率」という字がついていますが、これは人数の割合とは違います。一人の中の内訳でもありません。
集団の中で人によって差が出るとき、その差のうちどれだけが遺伝の違いで説明できるか。遺伝率が表しているのはそれだけで、個人には割り当てられない数字です。
「8割は治療しても動かない」でもありません
遺伝率は、変えられるかどうかについて何も言っていない数字です。
身長を考えると分かりやすいかもしれません。身長は強く遺伝します。それでも、日本人の平均身長はこの100年で大きく伸びました。栄養状態が変わったからです。遺伝率そのものは下がっていません。
強く遺伝することと、環境で動かないことは、別のことです。持って生まれたものは変わらない。それでも経過は変えられます。
それでも、遺伝子で説明できるのは1割ほど
34,422名のニキビの方と、364,991名の対照。この規模の遺伝子解析で、報告された関連遺伝子座は合計50か所になりました。
しかし、それらを合わせても説明できるのは、ニキビのばらつきの9.4%です。
この50か所について、なりやすさをわずかに上げる型を持っているか、持っていないか。それを全部足し合わせると、人によってスコアの高い低いが出ます。
そのスコアがいちばん高い5%に入る方でも、ニキビへのなりやすさは平均的な方の1.62倍にとどまります(95%信頼区間1.47〜1.78)。持ちうる素因を最も多く持っている方で、1.6倍ほど、ということです。
「8割が遺伝」と「1割しか説明できない」は、矛盾していません。この2つは、そもそも別のことを測った数字だからです。前者は集団の中でのばらつきの話、後者は今わかっている遺伝子で説明できる分の話です。
つまり、ニキビのなりやすさは、多数の素因がごくわずかずつ積み重なってできています。一つひとつの効果は小さく、どれか一つが決め手になることはありません。「この遺伝子があればニキビになる」という遺伝子は、見つかっていません。
家族にニキビの経験があるとどうなるか
25歳を過ぎてもニキビが続く成人の方204名と、そうでない対照144名。その第一度近親者(親・きょうだい・子)を調べた研究があります。
患者群の近親者1,203名のうち、203名(約17%)にニキビが認められました。対照群の近親者856名では、42名(約5%)でした。3倍以上の開きがあります(統計上の指標であるオッズ比では3.93、95%信頼区間2.79〜5.51)。
ただしこれは「25歳を過ぎても続くタイプ」の話で、思春期のニキビ全般を指す数字とは違います。
別の研究では、家族歴がある方はニキビの出始める時期が早く、思春期前から出る割合が高いことが報告されています。
これは、誰かのせいという話ではありません
「母親から遺伝する」は、どこまで言えるのか
「ニキビは母親から遺伝する」という言い方を見かけることがあります。出所と思われるのは、家族歴の由来別にグループを分けた研究です。この数字は、慎重に扱う必要があります。
その研究は、ニキビの方151名を家族歴のあり・なしに分け、家族歴のある方をさらに「父のみ」「母のみ」「両方」に分けたものです。母側に家族歴がある群で、面皰(白ニキビ・黒ニキビ)の数と広がりがより目立った、と報告されています。
しかし、151名をさらに分けた小さな集団どうしの比較であり、論文には検定の値も効果の大きさも示されていません。差が出たのは面皰の数と広がりであって、炎症の強さや跡の残りやすさではありません。臨床像そのものは、家族歴のあるなしで同様だったとも書かれています。
「母親から遺伝する」と読めるほどの精度は、この報告にはありません。
素因は複数あり、それらが絡み合って結果が決まってきます。誰か一人から受け継いだ一つのもので決まる、という構造をしていません。
家族歴は、誰かの落ち度の記録ではありません。出はじめる時期が早いかもしれない、という手がかりです。早く気づけるという意味では、むしろ役に立つ情報です。
診察での一言
何より、早めに治療を始めることによって、その後の経過は変わってきます。遺伝の話をどこまで詰めても、そこは動きません。
遺伝だとしたら、もう変えられないのか
変えられます。素因が強く遺伝することと、手を打っても無駄なことは、別の話です。
変えられるのは「続く時間」です
素因も、始まる時期も、選べません。
先ほどご説明したとおり、跡が残りやすいかどうかは炎症が長引くかどうかと結びついています。炎症が続いている時間を短くすることは、できることの側にあります。
「遺伝だから」と受け取ってしまうと、ここで止まってしまいます。実際には、手が届く余地はあります。
「早めに」とは、いつのことか
「早めに」というのは、気づいたらできるだけ早く皮膚科を受診していただきたい、という意味です。
もっとも、早く始めれば必ず収まる、というものでもありません。早いうちから治療をしていても、うまくコントロールできない方はいらっしゃいます。当院のようなクリニックにお越しになるのは、多くがそういう方です。
ですから、何年か経ってしまったから、もう遅い、ということではありません。長く困ってこられた方こそ、私たちがふだん向き合っている方々です。
ご予約・お問い合わせ
ご自身がどのあたりにいるか
鏡に映っている数と、毛穴の中で起きていることの数は、もともと釣り合っていません。ですから、ご自身で見極めていただく必要はありません。
当院ではVISIAで肌の分析を行い、目に見えていない段階も含めて状態を確認したうえで治療をご提案しています。
特別なご希望がない限り、肌の状態を診断したうえで適切な治療法を医師が選択しますので、治療名がわからなくてもご心配はいりません。
当院のニキビ治療については、ニキビ治療専門外来のページでご案内しています。
あわせてご覧ください
毛穴の中で何が順番に起きるのか、暮らしの中の要因は何か、毛穴はどう塞がっていくのか。それぞれ別のページでご説明しています。
おわりに
「あの人は何もしていないのに」と思ってしまう気持ちは、よく分かります。
そして、その感覚は正しいのです。何かをしたから差がついたわけではありませんでした。皮脂が動き出す時期が違った。それだけのことで、こちらの努力が足りなかったという話ではありません。
洗い方を変えても、食べるものを見直しても、思ったほど変わらなかった。そのことでご自身を責めてこられた方に、まずお伝えしたいのはそこです。
そのうえで、まだ手が届くところがあります。
始まる時期は選べません。素因も選べません。ただ、出てきたものを、どれだけ短い時間で収めるか。そこには手が届きます。跡として残るかどうかは、その時間の長さと結びついています。
ニキビは、いずれ落ち着くから待てばよい、と言われることがあります。ただ、落ち着くまでのあいだに炎症が続いた時間は、あとから短くすることができません。
体質の話は、ここまでです。あとは、いま出ているものをどうしていくか。そこは、おひとりで抱えなくてよいところです。
よくある質問
診察のなかで、実際によくいただくご質問をまとめました。
できる人・できない人
ニキビが少ない人は、どのような人ですか?
皮脂が動き出す時期が遅かった方、そして皮脂の量そのものが少ない方です。お子さんを追いかけた研究では、ニキビができなかった子は、皮脂腺の活動も皮膚の菌の数も、年齢が上がってもほとんど変わりませんでした。
生活習慣が特別に良かった、というより先に、始まる時期が違っていました。
何をしてもニキビができない人には、共通する特徴がありますか?
はっきりした共通点として測られているのは、皮脂の分泌が始まる時期の遅さです。
洗顔の回数や食べ物といった生活面の項目は、差が出る場合と出ない場合があり、それだけで説明できるほどの差にはなりません。
ニキビができる人は肌がきれい、というのは本当ですか?
そう言われることがありますが、根拠になる研究は見つけられていません。皮脂が多いぶん肌が丈夫なのでは、という意味で言われることが多いようですが、測定の結果はむしろ逆です。
むしろ、ニキビのある肌では角層の細胞をつなぐ脂(セラミド)が少なく、水分も逃げやすいことが測定で示されています。脂っぽく見えても、内側は乾いている状態です。
遺伝について
ニキビができやすくなる遺伝子は、見つかっているのですか?
「この遺伝子があればニキビになる」という遺伝子は、見つかっていません。見つかっているのは、なりやすさにわずかずつ関わる素因が50か所ある、ということです。
それらを全部合わせても、ニキビのばらつきの9.4%しか説明できません。遺伝的なリスクが高い上位5%の方でも、平均的な方と比べて1.62倍にとどまります。
「遺伝率は約80%」という説明を目にすることがあります。これは集団の中の差の内訳を表す数字で、一人ひとりに割り当てられるものではありません。
8割の人がニキビになるという意味でも、8割は治療しても動かないという意味でもありません。
ニキビのできやすさは遺伝しますか?
なりやすさに関わる遺伝的な素因は複数あり、それらは強く遺伝します。双子を調べた研究では、ばらつきの8割以上が遺伝で説明されました。
ただし、50か所の遺伝子座を合わせても、説明できるのは9.4%です。遺伝的なリスクが高い上位5%の方でも、平均の1.62倍にとどまります。
複数の素因が絡み合って、結果が決まってきます。
遺伝子検査で、ニキビのなりやすさは分かりますか?
いまのところ、遺伝子を調べて「あなたはニキビになりやすい」と言い当てられる段階にはありません。
ひとつの遺伝子の変化が大きく効く病気であれば、「その変化を持っているかどうか」で話ができます。ニキビは関わっている遺伝子座が50か所以上あり、一つひとつの効果がごく小さいため、持っている人と持っていない人に分けられる構造をしていません。
50か所すべてを合算しても、説明できるのはニキビのばらつきの9.4%です。
お母さんから遺伝しやすいのでしょうか?
そう読める報告はありますが、精度は高くありません。ニキビの方151名を家族歴の由来別に分けた研究で、母側に家族歴がある群では面皰の数と広がりがより目立った、というものです。
検定の値は示されておらず、小さな集団どうしの比較です。臨床像そのものは家族歴のあるなしで同様だったとも書かれています。母親から遺伝する、と言い切れる根拠にはなりません。
肌荒れしにくいのも遺伝ですか?
皮脂の量、角質の入れ替わり方、炎症の起こりやすさには個人差があり、いずれも遺伝の影響を受けます。
ただし、乾燥や刺激で肌が荒れるかどうかは、環境やお手入れの影響も大きく受けます。遺伝だけで決まるものではありません。
遺伝だと言われると、治らないように思えてしまいます。
遺伝率という数字は、集団の中でのばらつきのうち、どれだけが遺伝で説明されるかを表します。治療で変えられるかどうかについては、何も言っていません。
お子さんを追いかけた研究の著者らも、皮脂や菌が動き出す時期を遅らせることが予防につながりうると書いています。早めに治療を始めることで、その後の経過は変わってきます。
年齢との関係
大人になれば、ニキビはできなくなりますか?
菌の数の差は21歳を過ぎるとなくなります。ただ、ニキビそのものが必ず落ち着く、とは限りません。25歳を過ぎても続く方はいらっしゃいます。
詳しくは大人にきび・アダルトニキビをご覧ください。
参考文献
このページの説明は、私の経験だけでなく、これまでの研究をもとにしています。根拠にした論文を下にまとめました。タイトルをタップすると、どんな研究なのか、このページのどこを支えているのかをご覧いただけます。
いつ分かれるのか
1思春期前の子どもにおける皮脂分泌とプロピオニバクテリウム定着の時間的変化
要約:
5歳半から12歳のお子さんを半年ごとに診察し、皮脂の分泌と菌の定着がどう変わっていくかを追いかけた縦断研究です。
のちにニキビができたお子さんでは、皮脂の分泌も菌の広がりも、ニキビにならなかったお子さんより早く始まっていました。一方、ニキビができなかったお子さんでは、皮脂腺の活動も皮膚表面の菌数も、年齢が上がっても変わりませんでした。
著者らは、皮脂の産生の開始や菌叢の拡大を思春期の後まで遅らせることが、発症の予防や重症度の軽減につながりうると述べています。
本ページでは、「できる人とできない人は、いつ分かれるのか」という説明の中心的な根拠として参照しています。
2ニキビのある方と、そうでない方のプロピオニバクテリウムの菌数
要約:
額と頬の菌数を、11〜15歳・16〜20歳・21〜25歳の3つの年代で定量した研究です。
11〜15歳では、ニキビのある方が幾何平均で1平方センチあたり114,800個だったのに対し、ない方ではほとんど検出されませんでした。16〜20歳でも85,800個対588個という差があります。ところが21歳以上では両者に差がなく、ニキビのある方の中でも炎症の重さと菌数に有意な関係は見られませんでした。
本ページでは、年代別の菌数の表の出どころです。21歳を過ぎると差が消えるという記述も、ここに立っています。
体質の個人差
3ニキビのある方と、そうでない方の皮膚表面脂質に含まれるオクタデカジエン酸
要約:
頭皮の表面脂質に含まれる2種類の脂肪酸の割合を、健常6名・軽症5名・重症9名で比較した研究です。
リノール酸(Δ9,12異性体)の割合は、健常0.56%、軽症0.27%、重症0.19%と、症状が重いほど低くなりました(健常と軽症でp<0.02、健常と重症でp<0.001)。一方、皮脂に由来するΔ5,8異性体には有意な差がありませんでした。
本ページでは、リノール酸の割合が健常0.56%・軽症0.27%・重症0.19%という数字の出どころです。
4皮脂腺の活動が高まることによる、リノール酸の希釈
要約:
皮脂の分泌量と、皮脂に含まれる脂肪酸の組成の関係を調べた研究です。子どもと若年成人の皮膚表面脂質を集め、分泌速度の指標と突き合わせています。
皮脂の分泌が増えるほど、ワックスエステル中のリノール酸の割合は下がり、代わりにセバレイン酸の割合が上がりました。表皮のアシルセラミド中のリノール酸も、皮脂の分泌量と逆の関係にありました。
本ページでは、「皮脂が増えるほど、必要な脂の割合が薄まる」という説明の根拠です。
5皮脂産生のアンドロゲンによる制御
要約:
皮脂の産生がどこまでアンドロゲンに依存しているのかを、特殊な体質の方を対象に調べた研究です。
アンドロゲンが完全に働かない体質の方では、皮脂の産生がまったく検出されず、副腎皮質機能が始まる前の2〜6歳の小児と同じ結果でした。一方、5α還元酵素の欠損でDHTが少ない方では、同年代の男性と同等の皮脂産生がありました。
本ページでは、皮脂の量そのものがホルモンの働きに強く左右されるという記述の根拠です。
6尋常性ざ瘡における水分バリア機能の障害
要約:
ニキビのある方36名と、そうでない方29名を比べた研究です。皮脂の分泌速度、角層の脂質の量、そして水分バリア機能を同時に測定しています。
皮脂の分泌が有意に高かったのは中等症の方だけで、軽症の方と対照群には差がありませんでした。一方、スフィンゴ脂質(セラミドと遊離スフィンゴシン)は、軽症でも中等症でも有意に少なくなっていました。著者らは、セラミドの減少によるバリア機能の障害が毛包上皮の過角化を伴うため、面皰形成の原因となりうると結論づけています。
本ページでは、FAQ「ニキビができる人は肌がきれい、というのは本当ですか」で、ニキビのある肌では角層の脂が足りていないと述べた根拠です。
見えない段階
7アダパレンによる維持療法中の微小面皰形成の制御
要約:
軽症から中等症のニキビの方を対象に、維持療法が微小面皰の数を抑えられるかどうかを調べた試験です。額からシアノアクリレートストリップで採取して数えています。
参加の条件は、スクリーニング時点で1平方センチあたり250個以上の微小面皰があること。開始時の中央値は319個で、8週の併用療法を経て157個まで減りました。
本ページでは、目に見える段階の手前ですでに変化が始まっていることの根拠です。参加条件で下限が決まっている数字ですので、ニキビのある方が皆この数だというわけではありません。
8うぶ毛の毛包の生理(毛の成長と皮脂の分泌)
要約:
15〜30歳の健康な男女を対象に、額・頬・胸・肩・背中でうぶ毛の密度と皮脂の分泌を測った研究です。
うぶ毛の密度は顔で高く、額では1平方センチあたり439本、背中では85本でした。成長期にある毛の割合も、額49%に対して背中31.5%と差がありました。
本ページでは、額の毛穴の数(1平方センチあたり439本)の出どころです。
遺伝について
9ニキビの発症における遺伝と環境要因の影響:女性のニキビに関する双子研究
要約:
一卵性458組・二卵性1,099組、合わせて1,557組の女性双生児を対象に、ニキビへのなりやすさに遺伝と環境がどれだけ寄与するかを調べた研究です。平均年齢は46歳で、ニキビの既往があると答えたのは14%でした。
遺伝モデルによる解析で、ばらつきの81%(95%信頼区間73〜87%)が相加的な遺伝の影響で説明され、残る19%はその方だけが経験した環境によるものとされました。
本ページでは、遺伝率81%という数字の出どころです。この81%は「8割の人がニキビになる」という意味でも、「一人のニキビの8割が遺伝で決まる」という意味でもありません。
10オーストラリアの思春期双生児におけるニキビの遺伝率とGWAS解析
要約:
オーストラリアの10〜24歳の双生児ら4,491名を対象に、ニキビの重症度への遺伝の寄与を評価した研究です。看護師が12歳・14歳・16歳の時点で、顔・背中・胸を4段階で評価しています。
一卵性双生児の相関は0.86、二卵性では0.42で、重症度の遺伝率は0.85(95%信頼区間0.82〜0.87)と推定されました。同時に行われたゲノムワイド関連解析では、統計的な有意水準に達する遺伝子座は検出されず、示唆的な3か所(皮脂腺の分化に関わるPIK3R1の近傍を含む)にとどまりました。
本ページでは、遺伝率0.85という数字の出どころです。前項の81%とは測っているものが違うため、分けて記載しています。
11全ゲノムメタ解析によるニキビの新規リスク遺伝子座の同定
要約:
ニキビの方34,422名と対照364,991名を合わせた、ヨーロッパ系3集団の大規模なゲノムワイド関連解析とメタ解析です。
既知の19か所を再確認し、新たに4か所(FADS2・LGR5・FASN・ZNRF3-KREMEN1)を同定して、報告済みの関連遺伝子座は計50か所になりました。ただし、これらを合わせても説明できるのはニキビのばらつきの9.4%で、遺伝的リスクが上位5%の方でも、平均的な方と比べて1.62倍(95%信頼区間1.47〜1.78)にとどまります。
本ページでは、「遺伝子で説明できるのは1割ほど」という説明と、上位5%でも1.62倍という数字の根拠です。
12成人期ニキビの家族リスク:患者と非患者の近親者の比較
要約:
25歳を過ぎてもニキビが続く成人の方204名と、年齢・社会階層・民族をそろえた対照144名について、それぞれの第一度近親者のニキビの有無を調べた研究です。
患者群の近親者1,203名のうち203名(約17%)にニキビが認められたのに対し、対照群の近親者856名では42名(約5%)でした。オッズ比は3.93(95%信頼区間2.79〜5.51)です。
本ページでは、家族歴の影響を示す数字として参照しています。対象が「25歳を過ぎても続くタイプ」である点は申し添えます。
13遺伝はニキビの予後に影響するか(遺伝:ニキビの予後因子)
要約:
ニキビの方151名を、家族歴のある群とない群に分けて比較した前向きの疫学研究です。家族歴のある群はさらに、由来によって「父のみ」「母のみ」「両方」に分けられました。
臨床像そのものは両群で同様でしたが、家族歴のある群では発症が早く、思春期前からの発症が多く、内服治療やイソトレチノイン後の再発も多いという結果でした。また、貯留性の病変(面皰)の数と広がりは、母側に家族歴がある群でより目立ったと記載されています。
本ページでは、家族歴があると発症が早いという説明の根拠です。あわせて、「母親から遺伝する」と読むには精度が足りないことを示す資料としても参照しています。対照群がなく、151名をさらに分けた小さな集団どうしの比較で、検定の値も効果の大きさも示されていません。
炎症と、跡が残るかどうか
14ニキビ瘢痕における炎症(跡が残りやすい方とそうでない方の比較)
要約:
同じ程度の炎症性ニキビがありながら、跡が残りやすい方と残りにくい方で、炎症の経過に違いがあるかを調べた研究です。発症6時間未満から6〜7日までの病変を採取して比較しています。
跡が残りにくい方では、早期にCD4陽性T細胞・マクロファージ・ランゲルハンス細胞が大量に流入し、48時間でピークを迎えたあと速やかに引いていきました。跡が残りやすい方では初期の流入が小さく、むしろ消退期にマクロファージとメモリーT細胞が入り込み、血管新生も続いていました。著者らは、治りかけの組織での過剰な炎症が瘢痕化につながると述べています。
本ページでは、炎症が長引くこと自体が跡の残りやすさと結びついている、という説明の根拠です。
15ニキビ瘢痕の臨床的評価とその発生頻度
要約:
ニキビの方185名(女性101名・男性84名)を対象に、跡の種類と広がりを数え、年齢・性別・部位・当初の重症度・治療開始までの期間と突き合わせた研究です。
当初のニキビの程度と最終的な跡の重さには有意な相関がありました(p<0.01)。また、発症から適切な治療を始めるまでに最大3年の遅れがあり、その遅れが最終的な跡の程度と関連していました。著者らは、跡を最小限にするために早期の適切な治療が必要だと結論づけています。
本ページでは、治療開始までの遅れが跡の程度と関連していた、という記述の根拠です。単一の施設を受診した方を対象にした検討である点は申し添えます。
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監修者情報(医師紹介)

監修医師:佐藤 雅樹 (さとう まさき)
ソララクリニック 院長
専門分野:美容皮膚科
2000年 順天堂大学医学部卒。順天堂大学医学部形成外科入局。 大学医学部付属病院等を経て、都内美容皮膚科クリニックにてレーザー治療の研鑽を積む。2011年3月 ソララクリニック開院 院長就任。2022年 医療法人 松柴会 理事長就任。日本美容皮膚科学会 日本形成外科学会 日本抗加齢医学会 日本レーザー医学会 点滴療法研究会 日本医療毛髪再生研究会他所属。
様々な医療レーザー機器に精通し、2011年ルビーフラクショナル搭載機器を日本初導入。各種エネルギーベースの医療機器を併用する複合治療に積極的に取り組む.
※当院の治療はすべて自由診療(保険適用外)です。標準的な費用は各ページの料金表または料金表ページをご覧ください。治療に伴うリスク・副作用は診察時にもご説明します。
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