スモーカーズフェイス(たばこ顔)
タバコを吸っている人は、タバコ特有の顔貌になっていきます。
気が付かないかもしれませんが、タバコを吸っている人の顔貌は、特にヘビースモーカーの人は、だいたい似通ってくるようです。
これを タバコ顔 「スモーカーズフェイス」といいます。
医学的には1985年にイギリスの医師ダグラス・モデル氏が提唱した言葉で、喫煙者の顔に現れるしわやこけた頬、肌のくすみなどを総称しています。
つまりスモーカーズフェイスとは、「タバコを吸う人に共通する、急速に老けた外見」のことなのです。
タバコ顔(スモーカーズフェイス)の特徴
スモーカーズフェイスの特徴を列挙していきますが、
タバコが、肌トラブルの大きな要素を占めているとも言えます。
- 肌の張りが無くなり、しみ・くすみが目立っています。
- 特に鼻横の毛穴が開きます。
- 眼の下のくま、色素沈着、目尻の皺が出てきて、
- 眼をあまり大きく開きません。目尻が少し下がって見えます。
- 頬がこけてきますから、頬骨が逆に目立ちます。
- ほうれい線・ゴルゴ線が深くなってきます。口元のシワが増えます。
- 当然 にきび(吹き出物)などのトラブルが多く見受けられます。
- 肌は黄ばみ、唇はどす黒く、とても不健康な顔
- 歯茎のメラニンが増殖し、黒ずんできます。
- 白髪が増えます。
更に 女性でもガラガラ声の「スモーカーズヴォイス」
特有のツンと来る「口臭」 などなど。
※更に詳しく↓
しわやたるみの増加
皮膚のハリが失われ、目尻のしわ(カラスの足跡)や上唇・下唇のしわが目立ってきます。ほうれい線(鼻から口元に伸びる線)や口周りの細かい縦じわも深く刻まれ、フェイスラインにゆるみが生じて頬や顎のたるみが現れます。
肌の弾力低下により毛穴も開きがちです。実際、喫煙者の肌は非喫煙者に比べて薄くコラーゲン量が少なく、しわが目立ちやすい傾向があります。研究では40代の喫煙者の顔のしわの量は、非喫煙者の60代並みとも言われています。
それだけ喫煙による皮膚老化は顕著なのです。
肌のくすみ・色ムラ
喫煙者の肌は血行不良と有害物質の影響で灰色がかったようなくすみや黄色味を帯び、不健康な顔色になります。頬がこけてしまうため頬骨が突出し、顔全体がやつれた印象(げっそりとした外観)になることも特徴です。
皮膚の新陳代謝が落ちることでシミ・肝斑など色素沈着も増え、目の下のクマも濃くなりがちです。喫煙者の肌は十分な酸素や栄養が届かないため、血色の悪い萎んだ肌になってしまうのです。
ニキビ・毛穴トラブル
タバコを吸うとビタミンC不足やホルモンバランスの乱れから大人ニキビ(吹き出物)ができやすくなり、治りも遅くなります。肌のバリア機能低下により炎症を起こしやすく、毛穴のつまりや黒ずみも目立ちます。
実際、喫煙習慣のある人はない人に比べてニキビなどの慢性皮膚トラブルが増える傾向があります(※当院ではニキビ治療専門外来にてニキビ・肌質改善のケアも行っています)。
唇・歯ぐきの変色
タバコのヤニや一酸化炭素の影響で唇の色が暗紫色~黒ずんだ色調に変化します。歯ぐきにもメラニン色素の沈着が起こり、歯ぐきが黒ずむ「スモーカーズメラニン沈着」が生じます。笑ったときに歯茎が黒く見えるのも喫煙者の特徴です(メラニン沈着は禁煙すると徐々に薄くなる場合があります)。
毛髪や声への影響
喫煙は肌だけでなく髪や声にも老化現象をもたらします。タバコを長年吸っている人は白髪が増えやすく、若白髪のリスクが高まります。研究によれば、喫煙者は非喫煙者に比べて約2.5倍も若いうちから白髪になりやすいとのデータがあります。
また男性では喫煙習慣があるとAGA(男性型脱毛症)が進行しやすいという報告もあり、髪全体が薄くなるケースも少なくありません。さらに、タバコの煙による喉への刺激で声帯が荒れ、女性でもしわがれ声(スモーカーズボイス)になったり、強い口臭を生じることもあります。こうした変化も本人の見た目年齢を押し上げてしまう要因です。
スモーカーズフェイス(たばこ顔)は、イコール 老化現象そのものです。
吸わない人よりも5年以上早く老化が進んでいくとも考えられています。
スモーカーズフェイスの代表的写真


どちらも非常に有名な写真です。
双子でも、生活習慣の違いで、これだけの老化の差が出てしまうと、辛いものを感じます。
スモーカーズフェイスで よく取り上げられる人物の代表は、オードリー・ヘップバーン。
「ティファニーで朝食を」の役作りのために 喫煙を始めてしまったそうです。
その後年齢以上に老け込んだ容姿変化が指摘されました。女優という職業柄、晩年はメイクや照明でカバーしていましたが、実際には喫煙による肌老化に本人も悩んでいたそうです※。このように、美貌で知られた有名人ですらタバコの害から逃れることは難しいのです。
※ヘプバーンは晩年、愛煙家だった自分の肌状態に言及し「若い頃にタバコを覚えたことを後悔している」と述べたと伝えられています(複数の伝記より)。実際に彼女は63歳で亡くなるまで喫煙を続け、晩年は深いしわが刻まれていました。
何故喫煙で、老化が進んでしまう??
ニコチンの影響で、血管が収縮します。血流が減るとか、十分な栄養が届けられなくなるとか、
いろいろ言われるのですが、まとめると、
血行障害、体温低下、代謝低下、抜け毛増大
これだけの悪影響がでます。
抜け毛が気になる人に意外と喫煙者が多いことも 気になるところです。
血管収縮による血行不良
タバコの主成分ニコチンには強力な血管収縮作用があります。1本タバコを吸うだけで皮膚表面の毛細血管が収縮し、約90分もの間、皮膚への血流が大幅に減少するとの報告もあります。
血流が悪くなると酸素や栄養が肌に届かず、新陳代謝が低下します。
その結果コラーゲンやエラスチン(肌の弾力を保つ繊維)の産生も落ち、老廃物の排出も滞るため、肌のハリが失われしわ・たるみが進行します。
さらに慢性的な血行不良は肌のくすみ(灰色がかった顔色)の原因にもなります。
実際、喫煙者の皮膚組織を調べると微小循環が著しく低下していることが確認されており、これが「栄養失調でしぼんだような肌」を作る一因です。
大量の活性酸素→コラーゲン破壊
タバコの煙には数千種もの化学物質が含まれています。
その中には強力なフリーラジカル(活性酸素種)が多数含まれます。喫煙によって発生する活性酸素は肌の細胞を酸化ストレスにさらし、コラーゲンやエラスチン繊維を分解してしまいます。
特にヒドロキシルラジカルのような悪玉活性酸素は細胞膜やDNAを傷つけ、皮膚の老化を加速させます。体内には活性酸素を除去する抗酸化酵素もありますが、喫煙者では発生する活性酸素の量が多すぎて防御が追いつきません。
その結果、肌の構造タンパク質がダメージを受け、しわ・たるみ・くすみなど老化現象が促進されます。また喫煙によりコラーゲンを分解する酵素(MMP類)の活性が上昇することも知られており、肌の土台である真皮コラーゲンが減少していきます
大量のビタミンCを消費している
さらに、大量のビタミンCが消費されてしまうことが よく知られています。
喫煙者の血中のビタミンCは非喫煙者の半分以下だといわれています。
ビタミンC は、肌のコラーゲンを生成する際に消費されます。
しかし、喫煙者は、その大事なビタミンCを タバコで発生する大量の活性酸素除去のために消費してしまいます。
肌ではコラーゲン不足からハリ低下やしわが増加します。事実、喫煙は皮膚のコラーゲン合成を妨げシワを増やすことが確認されており、これは血中ビタミンCレベルの低下と相関するとの報告があります。
そのため、非喫煙者よりも肌の衰えが早く進んでしまいます。
ビタミンCは、風邪やストレスから身を守る際にも使用される重要なビタミンですが、タバコで消費されることで、抵抗力が削がれていきます。
米国の栄養基準では「喫煙者は非喫煙者より一日35mgのビタミンCを余分に摂取すべき」とされるほどで、それだけタバコは体内のビタミンCを浪費させているのです。
ホルモン・免疫への影響
喫煙は女性ホルモンの代謝にも影響し、エストロゲンレベルを低下させることで肌の潤いや張りを損なう可能性があります。
また白血球の機能低下など免疫力の低下も引き起こし、ニキビなど炎症性の皮膚トラブルが悪化しやすくなります。傷の治りも遅くなるため、ニキビ跡や肌荒れが治癒しにくい傾向があります。
さらに喫煙者では血中の酸素運搬能力が落ちるため組織の酸素不足状態が常態化し、肌細胞のターンオーバー(新陳代謝)が鈍化します。
その結果、古い角質やメラニンが肌に残りやすくなり、くすみ・シミが増えるという悪循環に陥ります。
その他 全身への影響
喫煙の害は肌に留まらず全身の老化・不調につながります。
例えばコラーゲン減少は血管や骨の老化も促進し、喫煙者は椎間板の劣化による腰痛発症率が非喫煙者の1.36倍高いとのデータもあります。
目では視力低下や白内障リスクの増加、ドライアイなどが生じやすくなります。
こうした体内変化がさらに外見の老け込みを助長する側面もあります(肌以外の要因で体調が悪く見える、など)。
要はタバコは身体を内部から酸化(サビつき)させることで、老化現象全般を通常より速めてしまうのです
禁煙で治るかもしれない症状。
喫煙することで問題となる症状が、禁煙で改善される可能性が高いものをあげてみました。
- 肌質が悪い
- 抜け毛が気になる
- 体調がなんとなく良くない
- 便秘・下痢症
- 咳・痰が止まらない。喉がガラガラ
- 息切れしやすい。階段がキツイ
- 食欲が無い。(ダイエットの代わりにはなりません。)
- いつもイライラしている。
- たまに胸が痛くなる。(内科受診されることをおすすめします。)
- 腰痛(非喫煙者の1.36倍) ニコチンが血流を阻害することで、椎間板に悪影響を与えている可能性があるようです。
- 肩こり 頭が重い 等
- 視力低下(タバコ弱視) ビタミンB12欠乏
- ドライアイ(煙が涙や結膜の組織にダメージを与え、ドライアイを誘発する)
何故良くならないのだろうと、悩んでいる愛煙家の方も多いと思います。
辞めてみると解決するかもしれません。
肌質の改善
禁煙すると数週間で皮膚への血流が回復し始め、顔色が明るく健康的になります。
研究では、喫煙をやめた人は4~8週間で皮膚のコラーゲン量が有意に増加し、12週間後にはコラーゲン産生が禁煙前のレベルにほぼ回復したと報告されています。
また別の研究では、禁煙1か月後に喫煙によるシミ・色素沈着が薄くなったケースも示されています。個人差はありますが、禁煙は肌の自己修復力を高め、しわやたるみの進行を食い止める第一歩です。
実際に「肌がワントーン明るくなった」「化粧ノリが良くなった」といった声が禁煙者から多く聞かれます。
髪の毛の改善
喫煙をやめると頭皮の血行が改善し、毛根への栄養供給が増えるため抜け毛が減る可能性があります。
白髪についても、もちろん既にできた白髪が黒髪に戻るわけではありませんが、新たな白髪の発生スピードが抑えられることが期待できます。
何より禁煙により全身の酸素供給が向上し、新陳代謝が正常化することで健康的な髪の成長につながります(髪にお悩みの方は当院の毛髪再生治療もご参照ください)。
ニキビ・肌荒れの改善
喫煙者特有の慢性的な炎症状態が収まることで、ニキビや吹き出物が出来にくくなり、既存の肌荒れも徐々に落ち着いてきます。
禁煙によりビタミンCやビタミンB群の消耗が減り、皮脂分泌やホルモンバランスが正常化するためです。
「タバコをやめたら肌が滑らかになった」というのは多くの元喫煙者が実感するところでしょう。
ただし長年の喫煙でダメージを受けた肌はターンオーバーに時間がかかるため、禁煙後も十分な保湿や紫外線対策、必要に応じたスキンケア治療でサポートしてあげることが大切です。
咳やのどの症状の改善
「朝起きると痰が絡む」「常にのどがイガイガして咳払いしてしまう」といったいわゆる「スモーカーズ・カフ」(喫煙者の慢性咳嗽)は、禁煙によってかなり軽減します。
多くの場合、禁煙開始から1ヶ月もすると慢性的な咳や痰が減り、のどの違和感も和らぎます。
肺の繊毛(はい毛)が回復し、気管支の自浄作用が戻るためです。さらに運動時の息切れもしにくくなり、階段を上っても以前ほど苦しくなくなるでしょう。
このように呼吸器系の機能向上は禁煙の早期に得られるメリットです。
全身の体調改善
禁煙すると自律神経のバランスが整い、胃腸の調子が良くなる方もいます。長年の便秘や下痢、胃もたれが解消するケースもあるのです。
味覚・嗅覚が正常化し食事がおいしく感じられるようになるため、食欲が安定する人もいます(もっとも過食には注意が必要ですが)。
またニコチン切れによるイライラは一時的なもので、禁煙継続により精神面でも安定し睡眠の質が向上する例もあります。「最近なんとなく体調が良くない」と悩んでいる愛煙家の方は、タバコを絶つことで意外なほど様々な不調が消えていく可能性があります。
以上のように、禁煙は健康と美容の両面にメリットをもたらします。もちろん個人差はありますが、「タバコを止めただけで肌も体調もこんなに変わるのか!」と驚く声は多いものです。
ただし、長年の習慣を断つことは決して簡単ではありません。どうしても禁煙が難しい場合は、次項で述べるような代替策でダメージを最小限に抑えつつ、美容ケアを並行する方法も検討してみましょう。
スモーカーズ・フェイスを治す方法
スモーカーズ・フェイスを治す一番の方法は、誰しも理解していることです。早めの対策で 老化の加速を抑えこむことが可能かもしれません。
1 禁煙をすること。
コレに付きます。身も蓋もありません。これができれば何も言うことがないでしょう。
「禁煙をすると太るのでは?」 とか 色々と言われるかもしれませんが、喫煙者のほうが肥満率が高いデータが出ています。
禁煙外来は勿論、ニコチンパッチなどの禁煙グッズの利用を試してみましょう。「いつかはやめたい」と思っているなら、できるだけ早いタイミングで実行しましょう。
肌細胞やコラーゲン繊維は年齢を重ねるごとに回復力が落ちます。若いうちに禁煙できればできるほど、肌のリカバリーもスムーズです。
もし禁煙に踏み切れない事情がある場合も、次のステップでダメージを減らす努力を始めてください。
2 ビタミンCを大量に補給する(高濃度ビタミンC点滴療法の活用)
喫煙しながらでも肌状態を少しでも良く保ちたいなら、ビタミンCの集中的な補給を検討しましょう。
前述のとおり、喫煙者はビタミンCが枯渇しがちで、肌のコラーゲン生成に支障をきたしています。そこで、通常の食事やサプリの摂取に加えて、高濃度ビタミンCの点滴療法を併用する方法があります。
当院でも提供している「高濃度ビタミンC点滴療法」では、経口摂取では到底摂りきれない大量のビタミンCを一度に静脈投与できます。その結果、血中ビタミンC濃度を一気に高めて抗酸化力をブーストし、コラーゲン産生をサポートします。
ビタミンC点滴は本来がん補助療法として開発された経緯もあり安全性は確立されています。美容面でも、点滴後は肌のくすみが抜けてツヤが出る、疲労が取れて顔色が良くなるなどの即効性を感じる方が多く、「タバコを吸っていても肌だけは何とかしたい」という方に適したケアと言えるでしょう。
実際、喫煙しながら美肌治療を受ける方の多くが高濃度ビタミンC点滴を併用されています。ビタミンCを満たすことでスモーカーズフェイスに対抗し、老化の進行を遅らせる一助となるはずです。
なお、ビタミンC点滴は喫煙者の場合、非喫煙者より効果発現にやや時間がかかる傾向があります。ニコチンによる血管収縮や活性酸素の多さから、通常の容量では血中濃度の上がり方が鈍くなりがちです。
当院では必要に応じて血中ビタミンC濃度測定を行い、投与量や頻度を調整し、十分なビタミンC濃度を確保することが可能です。
定期的な点滴により「肌荒れしにくくなった」「化粧のりが改善した」といった声もいただいており、タバコをやめられない間の美容対策として有効活用いただけます。
3 水素点滴で悪玉活性酸素を除去する
タバコによる老化の大きな原因となる活性酸素を除去するもう一つの方法が、水素(H₂)の点滴療法です。
当院でも導入している「水素点滴」は、医療用の高濃度水素を含む点滴液を体内に直接投与することで、喫煙などで発生した活性酸素を中和します。
水素は極めて強力な抗酸化物質であり、特に悪玉のヒドロキシラジカルを選択的に無害化する作用があります。体内の必要な善玉活性酸素は残しつつ、老化を促す有害な酸化ストレスだけを抑制できる点が水素療法の利点です。
喫煙によって生じたサビ(酸化ダメージ)を効率よく取り除き、肌細胞を防御・修復するアンチエイジング効果が期待できます。
水素点滴は動脈硬化や糖尿病など生活習慣病の予防・改善目的にも用いられており、美容の観点では紫外線や加齢による肌老化の予防にも有効とされています。
喫煙によるシワ・たるみの原因であるコラーゲン劣化に対しても、細胞レベルでの酸化ダメージ軽減を図ることで間接的に進行を遅らせる効果が見込まれます。
特に前述のビタミンC点滴と水素点滴を組み合わせると相乗効果が得られます。ビタミンCで活性酸素を中和する際に発生する副産物(過酸化物など)を水素がさらに無毒化し、抗酸化ネットワークが強化されるためです。
実際「高濃度ビタミンC+H₂併用点滴療法」はアンチエイジング目的で注目されており、タバコで傷んだ肌のケアとして有用と考えられます。
もちろん水素点滴やビタミンC点滴は万能ではなく、続けるにはコストや時間もかかります。
しかし、「タバコを吸いながら少しでも肌の若さを保ちたい」という場合、この抗酸化点滴によるケアは避けて通れない選択肢となるでしょう。これらの治療を併用しつつ通常の美肌治療(レーザー治療やスキンケア)を行えば、喫煙の害を受けた肌でも改善の余地を最大限引き出すことができます。
4. スキンケア・治療で肌を積極的にメンテナンス
喫煙による肌ダメージを和らげるためには、日常のスキンケアや美容皮膚科での治療も重要です。
紫外線対策(UVカット)は特に必須で、喫煙者の肌は酸化ストレスで脆くなっているため紫外線の影響を受けやすくなっています。日焼け止めクリームの毎日の使用で光老化を防ぐことができます。
また保湿ケアも欠かせません。喫煙は皮脂分泌を乱し肌の水分保持力を低下させるため、セラミドやヒアルロン酸配合の保湿剤でしっかりうるおいを補給しましょう。ビタミンC誘導体美容液やフコクキサンチンも、コラーゲン産生を促進しシミを抑える効果があるためおすすめです。
美容皮膚科で行なえる治療
美容皮膚科で受けられる施術としては、各種ピーリングやレーザー治療などが挙げられます。ピーリングで古い角質やくすみを除去し、新陳代謝を高めることで喫煙者のくすんだ肌が明るくなるでしょう。
レーザー治療はシミ除去やたるみ改善に有効で、当院ではフォトナ6Dやソフウェーブといった最新機器による切らないたるみ治療も提供しています(詳しくはたるみ治療のページをご参照ください)。
これらの施術はコラーゲンリモデリング(再構築)を促し、喫煙で弱った肌にハリを取り戻す効果があります。特にフォトナ6Dによる両面照射リフトアップ治療などは、表面と内部から同時にレーザーを当てることで安全に皮膚を引き締められる最新のアプローチで、喫煙者の肌でも効果を実感しやすいと好評です。
喫煙者の肌は修復力が低下していることも多いため、初めから強力な治療ができない場合があります。比較的マイルドな施術から少しずつ進めたり、後述の再生医療的アプローチで土台を改善させてから行うことも検討します。
プラセンタ注射やエクソソーム療法などの再生医療的アプローチも、肌質改善に有用かもしれません。プラセンタには細胞増殖因子が豊富に含まれ、喫煙で衰えた線維芽細胞を活性化してくれる可能性があります。
またエクソソーム(幹細胞培養上清液)は細胞間コミュニケーションを促進して組織再生を助けるため、ダメージ肌の回復に寄与すると期待されています。当院でも毛髪再生治療でエクソソームを活用していますが、肌への応用も進んでいます。
これら種々のスキンケア・施術を喫煙と並行して継続的に行うことで、スモーカーズフェイスの進行を可能な限り食い止め、場合によっては部分的な若返りも期待できます。
ただし繰り返しになりますが、もっとも望ましいのは喫煙習慣そのものを断つことです。どんな美容治療も、肌を老化させる生活習慣(タバコ)が続いては追いつかない側面があります。
ご自身の肌と健康のため、ぜひ「アンチエイジング=禁煙」を前向きに検討してみてください。
まとめ – 喫煙と肌老化の関係
喫煙は肌の大敵です。
スモーカーズフェイス(タバコ顔)とは、喫煙者に特徴的に見られる早期老化の顔貌のことを指し、その存在は医学的にも認められています。
タバコを吸う人の顔にはシワ・たるみ・くすみ・やつれといった変化が積み重なり、同年代の非喫煙者に比べて老けた印象を与えます。これらは決して気のせいではなく、
- ニコチンによる血流低下
- タバコ煙中の毒素
- 活性酸素によるコラーゲン破壊
- ビタミンC枯渇
といった科学的根拠に裏打ちされた現象です。言い換えれば、タバコをやめない限り老化のスピードは確実に加速するということでもあります。
しかし希望がないわけではありません。禁煙すれば肌はある程度よみがえります。実際に禁煙後数か月でコラーゲン量や肌の血色が回復したという研究結果もあります。
完全に元通りの赤ちゃん肌とはいかなくとも、「これ以上老けないようにする」ことは十分可能です。そのために、禁煙に踏み切る勇気を持つことが最善策です。
どうしても喫煙がやめられない事情があるなら、せめて美容面のダメージを軽減する対策をとりましょう。
ビタミンC点滴療法や水素点滴といった抗酸化療法の併用は、スモーカーズフェイスの進行を抑える助けになります。
また日々のスキンケア(保湿・UV対策)を丁寧に行い、必要に応じて美容医療の力(レーザー治療や再生治療など)も借りることで、「喫煙しながらでもできる限り肌をケアする」ことは可能です。
繰り返しになりますが、最終的には禁煙が何よりのアンチエイジングです。タバコを手放すことでしか得られない健康と美があることを、ぜひ多くの方に知っていただきたいと思います。
私共スキンケアクリニックとしても、喫煙される方の肌悩みに寄り添いながら、少しでも若々しさを取り戻すお手伝いを全力でさせていただきます。
「タバコを吸っているから…」とあきらめず、まずはお気軽にご相談ください。
あなたのお肌はケア次第でまだまだ変われます。
参考資料
今回の作成のために使用した論文集です。
参考になれば幸いです。
スモーカーズフェイス:過小評価されてきた臨床兆候?
原題:Smoker’s face: an underrated clinical sign?
出展:British Medical Journal, 1985 DOI:10.1136/bmj.291.6511.1760
要約:一般内科外来を受診した患者を前向きに調査し、喫煙歴10年以上の現在喫煙者の約半数を顔貌のみで判別できたと報告。定義された顔面所見(“smoker’s face”)は過去喫煙者(喫煙歴10年以上)では8%しか見られず、非喫煙者では0%だった。年齢・社会階級・日光曝露・体重変化・生涯喫煙量などを補正後も、現在喫煙とスモーカーズフェイスの関連は有意(p<0.001)。著者は「スモーカーズフェイス」が禁煙啓発の指標として有用になり得ると提言した。
米国における21世紀の喫煙の危険性と禁煙の利益
原題:21st-Century Hazards of Smoking and Benefits of Cessation in the United States – 【ニューイングランド医学誌】
出展:DOI: 10.1056/NEJMsa1211128
要約:喫煙者は生涯非喫煙者に比べて寿命が少なくとも10年短くなることを示した大規模疫学研究。米国人20万人以上を解析し、喫煙による死亡リスクは非喫煙者の約3倍、死亡原因の多くが喫煙関連疾患で占められた。一方、40歳までに禁煙すれば喫煙継続者に比べ死亡リスクを約90%低減できることも報告された。
米国疾病予防当局によるタバコ関連死亡統計(2014年)
原題:Tobacco-Related Mortality (CDC Fact Sheet) – 【米国疾病予防管理センター(CDC)】 DOI: N/A
要約:米国CDCが公表した喫煙の健康影響に関する報告書。喫煙者の寿命は非喫煙者より少なくとも10年短いこと、喫煙が原因の死亡が全米で年間48万件以上発生していることなどがまとめられている。特に肺がん死亡の約90%は喫煙が原因であり、喫煙者は肺がんで死亡するリスクが非喫煙者の**23倍(男性)・12倍(女性)**に跳ね上がると記載されている。喫煙はまた冠動脈疾患による死亡リスクを男性で3~4倍、女性で約5倍に増加させるなど、主要疾患のリスク増加統計が示されている。
喫煙による顔面老化の詳細:同一双生児での比較研究
原題:Facial changes caused by smoking: a comparison between smoking and nonsmoking identical twins – 【Plastic and Reconstructive Surgery誌】
出展:DOI: 10.1097/PRS.0b013e3182a4c20a
要約:79組の一卵性双生児を対象に、喫煙が顔貌老化に与える影響を検証した研究。片方のみ喫煙者の双子45組では、写真評価で喫煙者の方が老けて見えると判定される割合が57%と有意に高かった。両方喫煙者の双子34組でも、喫煙歴が長い方が年上に見える確率は63%にのぼった。具体的な老化サインとして、喫煙者は非喫煙者より上まぶたのたるみ、下まぶたの膨らみ(クマ)、ホウレイ線、口周りのシワ、顎のたるみが顕著だったと報告。特に喫煙期間の差が5年あると顔面老化に明らかな差が生じることも示され、喫煙の美容への影響が客観的に証明された研究。
タバコと皮膚の関係に関するレビュー
原題:Tobacco and the skin – 【Clinical Dermatology誌】
出展:DOI: 10.1016/j.clindermatol.2010.03.021
要約:喫煙が皮膚に及ぼす影響を総括した総説(カナダの皮膚科医によるレビュー)。喫煙は皮膚の健康を損なうと明言し、具体例として創傷治癒の遅延、シワ形成の促進、皮膚の老化(光老化の増強)、皮膚がんのリスク、乾癬・脱毛症・ニキビ・ループスなど各種皮膚疾患の悪化との関連が述べられている。喫煙によるコラーゲン産生抑制と分解酵素増加、血行不良、酸化ストレス増大がシワ・たるみを招く機序についても解説されている。また皮膚のビタミンや抗酸化物質が喫煙で枯渇する点にも触れ、喫煙習慣を断つことの重要性を皮膚科の観点から強調した論文。
喫煙は皮膚に影響を与えるか?(最新の皮膚科学レビュー)
原題:Does smoking affect your skin? – 【Postȩpy Dermatologii i Alergologii(ポーランド皮膚アレルギー研究誌)】
出展:DOI: 10.5114/ada.2021.103000
要約:喫煙と皮膚疾患との関連についてまとめた2021年の総説。喫煙は様々な慢性疾患・がん・早死リスクを高めることに加え、皮膚領域では乾癬、化膿性汗腺炎、円形脱毛症、エリテマトーデス(紅斑性狼瘡)、多形日光疹、皮膚がん、口腔内病変など多岐にわたる疾患の発症・悪化因子になり得ると述べている。ニコチンの免疫への影響で炎症性皮膚疾患が悪化したり、喫煙者に特徴的な「口腔粘膜の色素沈着(スモーカーズメラノーシス)」が生じることにも言及。全般的に「タバコは皮膚の大敵」であり、患者への禁煙指導の重要性を強調した論文。
ビタミンC大量摂取の必要性:喫煙者のビタミンC代謝
原題:Factors Affecting the Vitamin C Dose-Concentration Relationship: Implications for Global Vitamin C Dietary Recommendations
出展:DOI: 10.3390/nu15071657
要約:ビタミンCの必要摂取量に影響を与える因子を調べた2023年の研究(ニュージーランド・デンマークの共同研究)。米国NHANESデータ約3000人を解析し、男性や肥満者、喫煙者ではビタミンC血中濃度が低くなりやすいことを確認。特に喫煙者は非喫煙者の2倍の量のビタミンC摂取が必要との結果が示された。喫煙本数が多いほどビタミンC濃度が低下する「本数依存性の低下」が見られ、喫煙とビタミンC不足の密接な関係が裏付けられた。以上から喫煙者のビタミンC推奨量は一般人の2倍以上に設定すべき可能性が示唆されている。ビタミンCは抗酸化作用で喫煙による酸化ストレスを打ち消すため大量消費されてしまうことが原因と考察されている。
禁煙後の肌色変化に関する研究(韓国2012年)
原題:Changes in Skin Color after Smoking Cessation
出展:DOI: 10.4082/kjfm.2012.33.2.105
要約:禁煙が肌の色調に及ぼす影響を調べた臨床研究。喫煙者49名を対象に禁煙プログラムを実施し、開始時・1週間後・4週間後に肌のメラニン指数(色素沈着)と紅斑指数(赤み)を測定。【結果】禁煙1か月以内でメラニン指数・紅斑指数が全測定部位で有意に低下し、肌色が明るく健康的に改善したことを確認。著者らは「禁煙による肌色の良化は禁煙継続の動機づけになる」と述べている。さらに本研究では引用文献として、9か月の禁煙で皮膚の生物学的年齢が平均13歳若返ったという別研究の結果も紹介されている(イタリアでの64名の女性対象試験)。これらより禁煙により比較的短期間で皮膚状態が目に見えて改善しうることが示された。
水素(水素水)による抗酸化効果と炎症軽減
原題:Hydrogen-rich water reduces inflammatory responses and prevents apoptosis of peripheral blood cells in healthy adults: a randomized, double-blind, controlled trial
出展:DOI: 10.1038/s41598-020-68930-2
要約:水素の抗酸化作用をヒトで検証した2020年の研究。20–59歳の健康成人38名を対象に、水素を高濃度に含む水(1.5L/日)を4週間飲用する群と普通の水を飲む群で比較。【結果】水素水摂取群では30歳以上の被験者で抗酸化力(血中BAP値)の有意な上昇が見られ、炎症・細胞死に関与する遺伝子の発現抑制も確認された。水素分子が選択的にヒドロキシルラジカル(最も有害な活性酸素)を捕捉することで酸化ストレスを軽減し、結果として炎症反応を抑制したと結論付けている。この研究は水素の抗酸化・抗炎症効果を初めて健常者で包括的に示したもので、喫煙による酸化ダメージ軽減策としての水素療法にも科学的根拠を与える。
大型コホート研究:喫煙者の死亡リスクと人口寄与割合(オーストラリア)
原題:Tobacco smoking and all-cause mortality in a large Australian cohort study
出展:DOI: 10.1186/s12916-015-0281-z
要約:オーストラリア人約20万人を追跡した2015年の前向き研究。45歳以上の喫煙者・元喫煙者・非喫煙者を平均4年間追跡し、死亡リスクを比較。【結果】現喫煙者の死亡リスクは非喫煙者の約2.96倍(男女差なし)で、1日あたりの喫煙本数が多いほどリスク増加(1日≤14本で約2倍、≥25本で約4倍)と判明。推計では喫煙者の死亡のうち最大2/3までが喫煙に起因すると算出された。また45歳までに禁煙すれば死亡リスクが非喫煙者と有意差がなくなることも示された。本研究は、「喫煙者の3人に2人が煙により命を落とす」とのメッセージを独自データで裏付け、禁煙の重要性を改めて示した。
喫煙が複数のがん発症リスクに与える影響
原題:How Many Cigarettes Do You Need to Smoke to Get Cancer?
出展:Healthline 2021 DOI: N/A
要約:複数の研究結果をまとめた医療メディアの記事(2021年)。喫煙が関与する主な癌として、肺がんの他に膀胱がん、腎臓がん、肝臓がん、リンパ腫、膵臓がんなどが挙げられ、米CDCや英国Cancer Research UKの統計を引用し「米国では肺癌死亡の90%近くが喫煙による。英国でも肺癌の70%が喫煙に起因」と解説している。さらに喫煙は大腸癌、食道癌、喉頭癌、口腔癌、子宮頸癌などのリスク因子でもあると指摘。一方で禁煙により大半の癌リスクは10~20年かけ徐々に低下すること、しかし元喫煙者でも非喫煙者より完全にリスクが高い状態が残ることも述べられる。
- 2025-07-06 大幅に更新しました。
- 2022/11/13(更新)
- 2012年4月21日(初稿)
監修者情報
佐藤 雅樹 (さとう まさき)
美容皮膚科 ソララクリニック 院長
2000年 順天堂大学医学部卒。順天堂大学医学部形成外科入局。 大学医学部付属病院等を経て、都内美容皮膚科クリニックにてレーザー治療の研鑽を積む。2011年3月 ソララクリニック開院 院長就任。2022年 医療法人 松柴会 理事長就任。日本美容皮膚科学会 日本形成外科学会 日本抗加齢医学会 日本レーザー医学会 点滴療法研究会 日本医療毛髪再生研究会他所属。
様々な医療レーザー機器に精通し、2011年ルビーフラクショナル搭載機器を日本初導入。各種エネルギーベースの医療機器を併用する複合治療に積極的に取り組む.