高GI食とニキビの関係
公開:2025年2月7日
投稿者:院長 佐藤
ニキビの治療を進める際に 食事の影響を心配されている方は少なくありません。
どのような点に気を付けたらよいか 悩ましいところではあります。
AAD(米国皮膚科学会)のガイドラインによると、以下のように述べられています。
- 現在のデータを考慮すると、ニキビの管理において特定の食事の変更は推奨されない。
- 新たなデータによると、高グリセミック指数(GI値)の食事はニキビと関連している可能性がある。
- 限られた証拠によると、一部の乳製品、特に脱脂乳はニキビに影響を与える可能性がある。
https://www.jaad.org/article/S0190-9622(15)02614-6/fulltext
高GI食とニキビの関係性について考えてみましょう。
GI値とは?
GI値(グリセミック指数)とは、食品に含まれる糖質が食後に血糖値をどれくらい上昇させるかを数値化したものです。
ブドウ糖を基準(GI値100)として、他の食品のGI値を相対的に表します。GI値が高い食品は血糖値を急激に上昇させ、低い食品は緩やかに上昇させます。
GI値と血糖値の関係
高GI食品を摂取すると、血糖値が急激に上昇し、インスリンが大量に分泌されて血糖値を下げようとします。
急激な血糖値の変動は、血管や臓器に負担をかけ、糖尿病などのリスクを高める可能性があります。
最新研究に基づく 高GI食とニキビの発生メカニズム
高GI食がどのようにニキビに影響を与えるのか、最近の研究から見ていきましょう。
(1) 高GI食による血糖値上昇
高GI食品を摂取すると、血糖値が急激に上昇し、インスリンの分泌が促進されます。
インスリンは、皮脂腺を刺激し皮脂の分泌が増加します。
(2) インスリン様成長因子-1(IGF-1)の関与
高GI食は、インスリンと並行して、インスリン様成長因子1 (IGF-1)などのサイトカインの分泌を促進させ皮脂の分泌を増加させます。さらに、IGF-1は皮膚細胞の増殖を促し、毛穴の閉塞を引き起こしやすくします。
(3) 炎症反応の増加
高GI食が引き起こす高インスリン血症は、炎症性サイトカイン(TNF-α, IL-1, IL-6)を増加させ、更にニキビの炎症をを悪化させる可能性が示唆されています。
(4) アクネ菌(C. acnes)の増殖
- 皮脂の増加により、C. acnesが増殖しやすい環境が作られ、炎症を助長します。
参考文献の要約
最新の研究を踏まえると、高GI食はニキビの発生を促進する可能性がありますが、完全な因果関係はまだ確立されていません。
しかし、食生活の改善がニキビの予防・改善に役立つ可能性は高いと考えられます。
したがって、バランスの取れた食事を心がけることで、ニキビの悪化を防ぐ一助となる可能性があります。
高GI食とニキビの関連を示すレビュー研究
Acne and diet: a review.
Conforti C, et al. International Journal of Dermatology (2022)
DOI: 10.1111/ijd.15862
要約
- 高GI食がニキビの発生を助長する可能性があることを示唆。
- 低GI食を摂取することで、ニキビの症状が軽減される可能性がある。
- ミルクやチョコレートもIGF-1を介してニキビを悪化させる可能性がある。
食事とニキビの関連性に関する研究
Associations between diet and acne lesions.
Daszkiewicz M. Roczniki Panstwowego Zakladu Higieny (2021)
DOI: 10.32394/rpzh.2021.0164
要約:
- 高GI食がニキビの発生を促す可能性を示唆。
- 低GI食を数週間継続すると、ニキビの発生が減少する可能性がある。
- しかし、チョコレートがニキビを悪化させるメカニズムは未解明。
(3) レプチン、アディポネクチン、グレリンの関与
Evaluation of leptin, adiponectin, and ghrelin levels in patients with acne vulgaris.
Ozuguz P, et al. Human & Experimental Toxicology (2017)
DOI: 10.1177/0960327116630355
要約:
- インスリン抵抗性と関連するアディポカイン(レプチン、アディポネクチン、グレリン)を測定したが、高GI食とニキビの直接的な関連は確認されなかった。
- しかし、インスリン抵抗性がニキビの病態に関与する可能性 は否定できない。
(4) 高GI食、インスリン、IGF-1の関連
Dietary glycemic index and glucose, insulin, insulin-like growth factor-I, insulin-like growth factor binding protein 3, and leptin levels in patients with acne.
Kaymak Y, et al. Journal of the American Academy of Dermatology (2007)
DOI: 10.1016/j.jaad.2007.06.028
要約:
- 49人のニキビ患者と42人の健康な対照群を比較。
- 高GI食を摂取するグループで、インスリンとIGF-1の増加が見られた。
- しかし、ニキビ患者と健康な対照群の間で顕著な差は確認されなかった。
まとめ
高GI食はニキビの悪化要因になりうる。因果関係はまだ確定していない
高GI食とニキビの関係については、まだ完全に確立された結論には至っていませんが、多くの研究が「高GI食がニキビの悪化に関与する可能性がある」ことを示唆しています。特に、インスリンとIGF-1の増加が皮脂腺を刺激し、炎症を促進する可能性があるため、食生活の見直しが推奨されます。
今後さらに多くの研究が進めば、より明確な結論が得られるかもしれません。しかし、現時点でできることとして、低GI食品を積極的に取り入れ、食生活を整えることがニキビ改善につながる可能性があるという点は意識しておくとよいでしょう。
検討すべき食事戦略
- 低GI食品(全粒穀物、ナッツ、野菜、豆類)を多く摂取する。
- 高GI食品(白米、白パン、甘い飲料)を減らす。
- オメガ3脂肪酸(青魚、アマニ油)を積極的に摂取し、炎症を抑える。
- 乳製品の摂取を控える(ミルクがIGF-1を増加させる可能性がある)