他のシミが混在した肝斑の症状によって治療方針が少々変わります。
両頬に 蝶,地図状 又は 筆でスッと書いたような 形で出ることが多いシミの一種 肝斑。
肝斑をそもそも判別することは 一般の方には特に困難な場合も多いと思います。最近は 日光性色素斑と明らかに思えるものまで 「肝斑ではないか?」と心配されてこられることも 大変多くなりました。
肝斑には 一昔前まではレーザー治療は「禁忌」と言われていました。通常の照射を行ってしまうと 肝斑が悪化してしまうことがあるためです。しかし、時代は代わり レーザーの低出力照射ですこしずつ薄くしていく方法が認知されるようになってきました。
肝斑で悩まれているような方には、当然ながら肝斑だけでなく 通常のシミも混在している事が多いです。肝斑とその他のシミの両方を治療する際には少々問題が出てきます。
肝斑と他のシミが混在する時 症状に応じて方針を少々変更する
肝斑は、通常のシミ治療に必要な高出力の治療を行うと 逆に濃くなり悪化してしまうことがあります。そこで、まず肝斑のある場所は 積極的なシミ除去を避けて 肝斑の治療を優先して行います。
肝斑が十分に濃い時には 肝斑治療を進めていくことで濃かった肝斑が薄くなっていきますので、効果の実感が高く モチベーションが続いてくれます。
しかし 薄い肝斑の場合には、肝斑が薄くなるほど肌が美白されるため、他のシミが相対的に目立ってきます。 多くの方は、肝斑とシミの見分けはつきませんので、効果の実感度が十分に得られないことになります。このため、肝斑のみの治療を優先している時には なぜシミを治療してもらえないのかと途中で脱落されてしまう=治療を断念してしまうことがあります。
これは 私共の治療に関する伝え方が十分でなかった と反省する点でもあります。
肝斑の治療では 肝斑のコントロールを優先し ある程度押さえ込めた段階で、他のシミの治療に移行するようにします。
回り道のように感じられることですが、肝斑悪化を起こさずに 次のステップに進むためには必要なプロセスなのです。
明らかな`肝斑`には 肝斑改善集中プランで対処
広範囲に及ぶ様な明らかな肝斑は 通常のシミ治療に移る前に 肝斑の治療を優先します。
この際に使用する治療が 「肝斑改善集中プラン」です。
レーザートーニングでメラニン排出を促進
肝斑改善集中プランは 大きく2種類の治療から成り立ちます。その一つがレーザートーニング。
摩擦の刺激などの影響でメラノサイトが活性化している状態のため、高い出力で照射すると悪化する傾向があります。そこで、低出力のレーザーを照射し メラニンの排出を促進させていきます。
肌の炎症を抑えるトラネキサム酸を直接浸透させる
肝斑改善集中プランの特徴は、積極的にトラネキサム酸を内と外から作用させることです。
肝斑では プラスミンという酵素が活性化していることがわかっています。プラスミンがメラノサイトも活性化させてしまうため、色素沈着として出てきてしまいます。このプラスミンを抑制する薬剤が 抗プラスミン剤「トラネキサム酸」です。
プラスミンを抑制する効果のあるトラネキサム酸の内服は、肝斑治療では必須です。内服に加えて トラネキサム酸を直接肌から導入させることで 目的の部位に高濃度で作用させることが出来ます。
これら2種類の治療を適切にバランス良く行うことで 肝斑の症状を軽減させていきます。
肝斑のコントロールをした上で他のシミの治療を行なう
肝斑治療の難しさは 肝斑だけを優先的に治療するため、他のシミの治療に入れるまで時間がかかる ということです。とても回り道に感じられてしまうのですが、とても重要なプロセスです。
肝斑改善集中プランを数クール必要な場合もありますが、このプランの良いところは、一度しっかり肝斑を改善された方の多くは、自然とその状態を維持できるように務められるようになる点です。
しっかり治療された方が全くもとに戻ったという経験は正直ないのです。肝斑をコントロール出来てきた段階で 次のステップ 残ったシミの治療に移行します。
他のシミの治療については、シミ取り・シミ治療総合ページでまとめていますので、そちらも参照ください。
薄い肝斑は、シミの治療を並行して行なう
肝斑を集中的に治療したい! とご希望される方が多いのですが、治療開始段階で薄い肝斑の場合には 肝斑集中プランで少しずつ更に薄くしていくこともできるわけです。
しかしながら 薄い肝斑が更に薄くなるので良いようにも感じるところですが、他のシミが残るので 肝斑は改善するも満足度が上がらない というジレンマに陥ることがあります。
薄い肝斑 限定的な範囲の肝斑の場合には ルビーフラクショナルを用いて注意深く肝斑の評価をしながら、他のシミの治療を進めます。肝斑に影響が出ないように注意深く出力調整をすることはもちろんのこと、窒素プラズマ治療や内服外用剤と併用してコントロールしながら、治療を進めることになります。
VISIA等の肌画像診断装置を随時用いて評価しつつ、少しでも影響が見られたら治療法を柔軟に変更することで、肝斑治療と他のシミの治療を両立できるようにしていきます。
まとめ
広範囲に及ぶ強い肝斑の場合には、本格的なシミ治療に移行する前に 適切にコントロールできるようにすることが重要です。回り道に思われるかもしれませんが、肝斑治療には必要なことでもあり 肝斑治療そのものを難しくさせている要素とも言えます。
限局的な肝斑の場合には 混合シミ改善治療を中心として 治療を進めていくことも勿論可能です。
広範囲に及ぶ肝斑の場合には 肝斑改善集中プランで前処理を行なうことが重要になります。