エクソソームと 幹細胞培養 上清液は、 何が違うのかExosomes and Stem Cell Conditioned Medium
中身と取り出し方、
エクソソームについて調べていると、「幹細胞培養上清液」「ヒト幹細胞培養液」「順化培養液」など、よく似た名前がいくつも出てきます。どれも幹細胞を育てるところから始まるので、エクソソームと同じものに見えるかもしれません。
当院では、エクソソームと上清液を使い分けています。点滴などにはエクソソームの製剤を、肌への導入にはプランによって、その製剤か、上清液を含む美容液を使っています。
このページでお伝えすること
- 幹細胞培養上清液(上清液)とエクソソームは、同じものではありません。上清液は幹細胞を育てた液から細胞を取り除いたもので、エクソソームは、その液に含まれる、膜に包まれたごく小さな粒の一種です
- エクソソームの製剤は、上清液から粒を集めて精製したものです。当院のエクソソーム点滴でも、この製剤を使っています
- 2026年10月8日の国の作業部会の資料は、上清液をそのまま「エクソソーム治療」として投与する例が指摘されていると書いています。受ける前には、使うのが上清液そのものか取り出した粒か、元の細胞や確かめ方の説明があるかを見ておいてください
この記事の目次
上清液と エクソソームは、 同じものなのか
同じものではありません。幹細胞培養上清液は、幹細胞が育つあいだに液の中へ出したものを、まとめて含む液です。エクソソームは、その液に含まれる粒の一種です。エクソソームの製剤は、この粒を集め、ほかの成分を除いて作ります。
図に出てくる言葉
| 言葉 | どんなものか |
|---|---|
| 幹細胞 | 体のさまざまな組織にある、ほかの細胞のもとになる細胞です。脂肪や骨髄、へその緒(臍帯)や臍帯血、歯の神経(歯髄)などから取り出して育てます |
| 培地 | 細胞を育てるための液で、栄養などを含みます |
| 培養上清液 | 幹細胞を育てた後、細胞を取り除いた液です。細胞が出した物質が、液に溶けた形と、粒に入った形の両方で含まれます |
| 細胞外小胞 | 細胞が外へ出す、膜に包まれたごく小さな粒の総称です(英語の略で EV)。エクソソームはその一種です |
| エクソソーム |
上清液から細胞外小胞を取り出し、精製したものです |
上清液にもエクソソームの製剤にも、細胞は入っていません。
上清液の呼び方と、化粧品での表示
上清液は、「順化培養液」や「馴化培地」とも呼ばれます。どちらも「じゅんか」と読み、細胞を育てたことで、細胞が出したものを含むようになった液という意味です。英語では conditioned medium といい、細胞が出す物質の全体を、論文ではセクレトーム(secretome)といいます(参考文献1)。「臍帯血幹細胞培養上清液」「歯髄幹細胞培養上清液」のように、元の細胞の名前を頭に付けることもあります。
化粧品の全成分の表示では、次のような名前で書かれています(いずれも当院で扱っている化粧品の表示から)。
- 上清液:「ヒト脂肪細胞順化培養液エキス」「ヒト骨髄幹細胞順化培養液」など
- エクソソーム:「ヒト脂肪由来間葉系細胞エクソソーム」など
商品の説明では「ヒト幹細胞培養液」とあるものも、全成分の表示を見ると「〜順化培養液」と書かれていることがあります。
エクソソームは、細胞外小胞の一種
細胞外小胞は、タンパク質や脂質、マイクロRNAなど、細胞どうしの情報のやりとりに使われる物質を包んで、ほかの細胞へ届けています(参考文献2)。
エクソソームは本来、細胞の中の決まった経路を通ってできた小胞を指す言葉です。国際細胞外小胞学会の指針(MISEV2023)は、その経路を確かめるのが難しいことから、論文では総称の「細胞外小胞(EV)」を使うよう勧めています(参考文献3)。このページでも、論文や国の資料を引くところでは「細胞外小胞」、製剤や治療の名前では「エクソソーム」と書いています。
幹細胞そのものを使う治療とは、法律での扱いも違う
幹細胞を育てて体に入れる治療は、細胞に培養などの手を加えたもの(法律では「細胞加工物」)を使う医療にあたります。こうした医療は、輸血や、国の承認を受けた製品を承認どおりに使う場合などを除いて、再生医療等安全性確保法の対象となり、医療機関は計画を国に提出してから行います(参考文献4)。
上清液とエクソソームは、細胞を含みません。細胞外小胞を医師の指示のもとで調製して使う医療は、この法律の対象外とされていて(参考文献5)、上清液も、いまは対象になっていません。法律での扱いは、国の作業部会で見直しが進んでいます(国や学会の資料での扱い)。
当院では、幹細胞そのものを使う治療は行っていません。
エクソソームの製剤が作られるようになった流れ
幹細胞を使う治療の働きは、当初、体に入った幹細胞が組織に根づき、ほかの細胞に変わることによると考えられていました。その後の研究で、入れた細胞は長くは生き残らないことが分かり、働きは細胞そのものよりも、細胞が出すさまざまな物質によるものと考えられるようになりました(参考文献1・6)。
なかでも、細胞外小胞に包まれて運ばれる物質の役割が大きいとされ(参考文献6)、細胞外小胞を取り出して製剤にする研究と開発が進んでいます(参考文献2・7)。上清液もエクソソームも、細胞を使わない治療の候補として研究されています(参考文献1)。液に溶けた部分も一緒に働いているという報告もあり、中身の違いは次の章でご説明します。
中身・取り出し方・ 確かめ方は、 どう違うのか
上清液から細胞外小胞を取り出すと、中身の構成が変わり、調べる項目も増えます。作る工程の管理が品質の土台になる点は、どちらも同じです。
表は横にスライドできます →
| 項目 | 幹細胞 |
エクソソーム |
|---|---|---|
| 中身 | 細胞が出した物質(液に溶けているタンパク質など、細胞外小胞)と、培地の成分 | 上清液から取り出した細胞外小胞が中心 |
| 作り方 | 幹細胞を育てた液から、細胞を取り除く | 上清液から細胞外小胞だけを集め、ほかの成分を除く |
| 主に |
元の細胞、培地、無菌操作など、作る工程の管理 | 上清液と同じ項目に加えて、粒の形と大きさ、数、目印になる分子 |
細胞が出す物質は、粒の中にも液の中にもある
脂肪由来の幹細胞が出した物質を、まるごとのものと、細胞外小胞の部分とに分けて調べた研究があります(参考文献6)。細胞とマウスを使ったこの研究では、組織の再生にかかわる物質は、小胞の中と液に溶けた部分の両方にあり、著者らは、それらが一緒に働いていると考えています。
小胞の中身も一定ではありません。元の細胞がどの組織から来たか、周りにどんな細胞があるかによって変わることが、総説で指摘されています(参考文献2)。
上清液と、そこから精製した粒を比べた研究
中国・四川大学のグループは、ラットの脂肪組織から作った上清液と、そこから精製した小型の細胞外小胞の中身を比べています(参考文献8)。タンパク質の量をそろえて比べると、精製したもののほうが粒が多く、上清液には液に溶けた成分が多く含まれていました。粒の大きさは、精製したものでは138nm(1nmは1mmの100万分の1)付近の狭い範囲にそろい、上清液では30〜5,000nmと幅広く散らばっていました。
どちらのほうが粒が多いかは、比べ方で逆になります。脂肪組織1gあたりで数えると、上清液のほうが約1.6倍多くなっていました。この研究の材料は、育てた幹細胞ではなくラットの脂肪組織なので、ヒトの製剤にそのまま当てはまるとは限りませんが、取り出す前と後で中身がどう違うかの例として紹介しました。
取り出し方と、確かめ方
上清液から細胞外小胞を取り出す方法には、遠心分離やろ過など、いくつかの種類があります(参考文献3)。総説(参考文献9)は、標準となる取り出し方がまだないことを大きな課題に挙げ、臨床で正しく評価するには方法をそろえる必要があると述べています。
細胞外小胞は性質が複雑で、測れる項目だけでは品質をとらえきれません。そのため、原料と作る工程を管理して品質を保つことが重視されます(参考文献10)。日本再生医療学会のガイダンス(参考文献5)は、上清液も含めた「細胞外小胞等」について、原料の段階から一貫した無菌操作と、ほかの成分の混入を防ぐ手だてを求めています。培地も、動物由来の成分を含まないものを使うよう勧めています。
エクソソームの製剤では、取り出したものが本当に細胞外小胞なのかも調べます(参考文献3・5・11)。
- 膜に包まれた粒としての形と大きさがあるか
- 目印になる分子(CD9・CD63・CD81 など)があるか
- 粒の数はどれくらいか
一般に調べる項目と、当院の製剤で製造元が行っている検査は、エクソソーム点滴の安全性のページでもご紹介しています。
国や学会の 資料での扱い
国や学会の資料には、上清液と細胞外小胞をまとめて扱うものと、分けて扱うものがあります。2026年10月8日に国の作業部会で示された案は、エクソソームを含む細胞外小胞を、再生医療等安全性確保法の対象にすべきとしています。上清液を法律でどう扱うかは、この案には書かれていません。
| 時期と資料 | 上清液と細胞外小胞の扱い |
|---|---|
| 2021年11月 国の |
エクソソームを含む細胞外小胞を「エクソソーム等」と呼び、このときは法律の対象にしないとした |
| 2024年4月 日本再生 |
細胞外小胞と、それを含むとされる細胞培養上清などを、まとめて「細胞外小胞等」として扱う |
| 2024年7月 厚生労働省の |
上清液と、そこに含まれる可能性のある細胞外小胞などを、まとめて「エクソソーム等」と呼ぶ |
| 2025年度 国の |
細胞外小胞と培養上清の両方を、法律の対象にすべきとした |
| 2026年 国の |
今後の対応の案として、エクソソームを含む細胞外小胞を法律の対象にすべきとした |
表の出典は参考文献5・12〜14です。「エクソソーム等」という同じ言葉が、2021年のとりまとめでは細胞外小胞を、2024年の事務連絡では上清液までを指しています。
細胞外小胞の見方は、2021年から変わってきた
2021年の作業部会のとりまとめは、エクソソーム等を「細胞断片」として整理し、「ヒトへの投与物としての明確な定義づけが困難」であることなどから、このときは法律の対象にしないとしました(参考文献12)。2025年度の研究班の報告書では、細胞外小胞について「国内外での臨床応用の取り組みが進展している」と書かれ、「最終的な人への投与物としての一定の定義付けが可能である」とされています(参考文献14)。
資料が課題に挙げていること
2026年10月8日の作業部会の資料(参考文献14)は、細胞外小胞を使う医療の研究開発が国内外で進んでいるとしたうえで、いま何が問題なのかを示しています。上清液については、中にも細胞外小胞が含まれると考えられることにふれ、そのまま「エクソソーム治療」として投与する例が指摘されていると書いています。
研究班の報告書にも、「培養上清をEVs と称して投与する事例が指摘されており、安全性上の懸念が社会的に顕在化している」とあります。資料と報告書が課題に挙げているのは、次の2つです。
- 安全性や科学的な妥当性が十分に確かめられないまま提供されるおそれ
- 何がどう作られ、どう投与されているかを、国がつかめていないこと
研究班は、細胞外小胞を法律の枠組みに位置づけ、実態の把握とリスクの調査ができるようにすべきだとしています。
同じ報告書には「EVs 及び培養上清の安全な提供及び普及の促進が望まれる」ともあり、上清液を使うこと自体を否定しているわけではありません。法律の対象にする案の経過と、国と学会の安全性への考え方は、エクソソーム点滴の安全性のページにまとめています。
受ける前に 確かめたいこと
どちらの治療を受けるにしても、次の点は聞いておいてください。
- 使うのは上清液そのものか、取り出した細胞外小胞か
- 元の細胞(どの組織の幹細胞か)と、作っている施設
- 作り方の管理(培地に何を使っているか、無菌操作など)
- エクソソームの製剤なら、粒の大きさや数、目印になる分子をどう確かめているか
- 国内で承認された医薬品ではないこと、起こりうる副作用、費用の説明があるか
作り方の管理と粒の確かめ方は、学会のガイダンス(参考文献5)が求めている項目でもあります。名前だけでは中身が分からないこともあるので、気になる点は医師に尋ねて、説明に納得してから受けるのがよいと思います。
当院の場合
当院のエクソソーム点滴は、全身のエイジングケアや、肌・髪のコンディションを整えたい方が受けている治療です。
点滴で使う製剤
当院のエクソソーム点滴で使う「M2Pエクソソーム™」は、脂肪由来の幹細胞を育てた上清液から、エクソソームを取り出して精製した製剤です。東京都港区の細胞加工施設「AZACLI LAB」で最終加工されたものを使っています。元の細胞やドナーの条件、製造元が公開している規格と検査の内容は、エクソソーム点滴のページにまとめています。
上清液から切り替えた経緯
以前は、上清液を点滴や注射で使うメニューもありました。研究が進み、いまは、上清液の働きには細胞外小胞が大きくかかわっていると考えられています。その粒を集めて精製した製剤も出てきたので、2023年にエクソソーム点滴を始めるのに合わせて、上清液から切り替えました。血管に入れる点滴では、粒の大きさや数、目印になる分子といった規格で中身を確かめられる製剤を使いたいと考えたためです。
肌への導入と育毛の治療
肌への導入では、いまも上清液を使っています。ヒアルロン酸導入の「アンチエイジング」プランで使う医療機関専用の美容液に、ヒト臍帯血順化培養上清液が入っています。同じヒアルロン酸導入でも、「エクソソーム」のプランでは、エクソソームの製剤を使います。育毛治療で使う製剤については、HARG+療法と育毛エクソソーム療法のページでご説明しています。
エクソソーム点滴にするか、肌への導入から始めるかは、診察でご希望を伺って一緒に決めていきます。
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よくある質問
違いと呼び方
エクソソームと幹細胞培養上清液は、同じものですか?
別のものです。エクソソームは、上清液の中にあるごく小さな粒(細胞外小胞)の仲間です。上清液には、この粒のほかに、細胞が液の中へ出したタンパク質なども入っています。
エクソソームの製剤は上清液を原料にして作るので、元は同じ液です。上清液は液ごと、製剤は粒だけを集めて使います。
「ヒト幹細胞培養液」「順化培養液」は、上清液のことですか?
化粧品の説明で使われる「ヒト幹細胞培養液」は、上清液のことです。同じものが、全成分の表示では「〜順化培養液」の名前で載っている場合もあります。
なお「培養液」という言葉は、細胞を育てる前の液(培地)を指して使われることもあります。育てる前の液には、細胞が出したものはまだ入っていません。
「エクソソーム上清液」とは何ですか?
エクソソームを含む上清液そのものなのか、上清液から取り出したエクソソームなのかは、名前だけでは分かりません。説明でこの言葉を見かけたら、どちらを使うのかを聞いてみてください。
国や学会の資料では、液は「細胞培養上清液」や「培養上清」、粒は「細胞外小胞」や「エクソソーム」と呼ばれています。両方をまとめて「エクソソーム等」「細胞外小胞等」と呼ぶ資料もあるので、前後の説明を読まないと区別がつかないこともあります。
臍帯血・脂肪・歯髄など、元の細胞によって違いはありますか?
あります。たとえば、脂肪・骨髄・胎盤・へその緒に由来する幹細胞の上清液を調べた研究では、含まれるタンパク質の顔ぶれが、元の組織ごとに違っていました(参考文献15)。ただ、どんな働きにかかわるタンパク質かで見ると、細胞の移動や、細胞が死ぬのを抑えることなど、似ているところもありました。
当院の点滴で使う製剤は脂肪由来の幹細胞の上清液から作られていて、ヒアルロン酸導入の美容液には臍帯血由来の上清液が入っています。元の細胞が何かは、受ける前に聞いておいてください。
当院の治療
当院のエクソソーム点滴は、上清液を使っているのですか?
上清液そのものは使っていません。原料は脂肪由来の幹細胞の上清液で、そこからエクソソームを集めて精製したもの(M2Pエクソソーム™)を点滴に使っています。
製剤の規格や検査については、「製品規格と、安全性への取り組み」(エクソソーム点滴のページ)でご覧いただけます。
幹細胞培養上清液の点滴は受けられますか?
いまは、上清液を点滴で使うメニューはご用意していません。以前はありましたが、エクソソーム点滴を始めた際に切り替えました。幹細胞に由来するもので点滴に使っているのは、エクソソームの製剤だけです。
上清液は、肌への導入で使っています。ヒアルロン酸導入のうち、「アンチエイジング」のプランの美容液に入っています。
上清液とエクソソーム、どちらを選べばいいですか?
当院では、使い方で分けています。点滴では、エクソソームの製剤を使います。肌への導入では、上清液を含む美容液のプランと、エクソソームの製剤を使うプランがあります。どれにするかは、診察でご希望を伺って決めています。
受ける前に
上清液を使った施術や化粧品の後でも、献血はできますか?
日本赤十字社のよくある質問への回答では、ヒト幹細胞培養上清液など、美容関連で使われるものについて、使用後の献血を以前と同じくご遠慮いただく、と案内されています(参考文献16)。いつまで控えればよいかは示されていません。
使い方(注射か、肌への導入か、化粧品か)による区別も書かれていないので、献血会場の問診で、何をいつ、どう使ったかをお伝えください。
上清液やエクソソームは、国に認められたものですか?
2024年7月の厚生労働省の事務連絡の時点で、有効性と安全性が示されて薬事承認を受けた医薬品は、上清液でもエクソソームでも、海外を含めてありません(参考文献13)。
法律の面では、どちらもいまは再生医療等安全性確保法の対象外です。2026年10月8日の作業部会で、エクソソームを含む細胞外小胞を対象にする案が示されましたが、上清液を法律の対象にするかどうかは、この案では示されていません(参考文献14)。詳しい経過は、エクソソーム点滴の安全性のページでご説明しています。
参考文献
このページの説明は、法律、厚生労働省・日本再生医療学会の資料、日本赤十字社の公表内容、国内外の論文をもとにしています。タイトルをタップすると、どんな資料なのか、このページのどの説明の根拠なのかをご覧いただけます。
1間葉系幹細胞のセクレトーム:再生医療における、細胞を使わない治療戦略に向けて
要約:
本論文は、間葉系幹細胞(MSC)を使う治療の働きについての考え方の移り変わりと、細胞が出す物質の全体(セクレトーム)を治療に使う可能性をまとめた総説です。
当初、MSCを使う治療の効果は、移植した細胞が組織に定着し、さまざまな細胞に分化する能力によるものと考えられていました。その後の研究で、移植した細胞は長く生き残らないことが明らかになり、治療の利点は、細胞が作り出す多様な生理活性物質による可能性があると考えられるようになりました。著者らは、培養上清(conditioned media)やエクソソームといったセクレトーム由来の製品は、製造・保管・取り扱い・保存期間の面で細胞より利点がありうる一方、安全性と有効性を確かめるには、製造と品質管理についての規制上の要件が必要だと述べています。
本ページでは、セクレトームという呼び方、幹細胞の働きについての考え方の変化、上清液とエクソソームがどちらも細胞を使わない治療の候補として研究されていることの根拠として参照しています。
2総説:細胞を使わない治療のための、間葉系幹細胞由来のエクソソーム
要約:
本論文は、間葉系幹細胞(MSC)が出す細胞外小胞(エクソソームと微小小胞)が、MSCを使う治療の中で果たす役割と、細胞を使わない治療への応用をまとめた総説です。
細胞外小胞は、近くや離れた場所にある細胞どうしの情報伝達、細胞のシグナル、細胞や組織の代謝の変化にかかわり、けが・感染・病気に対する組織の反応に影響しうるとしています。MSC由来のエクソソームの中身には、サイトカインや成長因子、シグナルにかかわる脂質、mRNA、遺伝子の働きを調節するマイクロRNAが含まれます。この中身は一定ではなく、MSCがどの組織に由来するか、その働きの状態、すぐ近くにある細胞によって変わり、腫瘍細胞と一緒に培養すると変化するようだとも述べています。細胞を使わない治療に使えるかどうかは、エクソソームの製造の品質・再現性・効力にかかっている、としています。
本ページでは、エクソソームの中身、中身が元の細胞や周りの環境によって変わること、細胞外小胞を製剤にする研究が進められてきたことの根拠として参照しています。
3細胞外小胞の研究に必要な最小限の情報(MISEV2023):基礎から先端の手法まで
要約:
本論文は、国際細胞外小胞学会(ISEV)が、細胞外小胞(EV)の研究で示すべき最小限の情報をまとめた指針の2023年版です。2014年版・2018年版を改訂したもので、学会の作業部会と1,000人を超える研究者の意見をもとにまとめられています。
細胞の培養液・体液・組織などから細胞外小胞を作り、ほかの粒子と分け、性質を調べる方法について、それぞれの利点と限界を整理しています。呼び方については、「エクソソーム」は細胞の中のエンドソームという経路を通ってできた小胞を指す言葉で、その経路を確かめるのは難しいことから、一般には総称の「細胞外小胞(EV)」と、その操作上の呼び分けを使うよう勧めています。
本ページでは、エクソソームと細胞外小胞の呼び方、細胞外小胞の取り出し方と確かめ方の根拠として参照しています。
4再生医療等の安全性の確保等に関する法律
要約:
再生医療等を安全に提供するための手続きなどを定めた法律です。「細胞加工物」を「人又は動物の細胞に培養その他の加工を施したもの」と定め、細胞加工物などを用いる医療技術のうち、政令で定めるものを再生医療等技術としています。承認を受けた再生医療等製品を、承認された用法などの範囲で用いる場合は除かれ、細胞加工物を用いる輸血や造血幹細胞移植なども、政令(施行令)で除かれています。
再生医療等を提供しようとする病院・診療所の管理者は、あらかじめ再生医療等提供計画を厚生労働大臣に提出しなければならない、と定めています。
本ページでは、幹細胞を育てて体に入れる治療が、細胞加工物を用いる医療としてこの法律の対象になることの根拠として参照しています。
5日本再生医療学会「細胞外小胞等の臨床応用に関するガイダンス(第1版)」
要約:
「細胞外小胞(Extracellular Vesicles; EVs)もしくはエクソソームまたはこれらを含むとされる細胞培養上清など(細胞外小胞等)」を臨床で使うときの、品質とリスクの考え方をまとめた学会の指針です。細胞外小胞を医師の指示のもとで調製し、自院で使う医療は再生医療等安全性確保法の対象外とされていて、委員会の審査を受けないため、行う医師が品質とリスクを理解したうえで安全を確保すべきだとしています。
原料・材料の段階から一貫した無菌操作と、ほかの成分の混入を防ぐ対策、動物由来の成分を含まない培地の使用、培地に加える成分の安全性と最終製品への残り方の評価を挙げています。細胞外小胞として使うものについては、細胞外小胞としての形と大きさを持つ粒子があることと、目印になる分子(CD9・CD63・CD81 など)があることを示すよう求め、投与の量の目安には粒子の数とタンパク質の量がよく使われるとしています。
本ページでは、上清液と細胞外小胞をまとめて扱う資料の例、細胞外小胞を使う医療が法律の対象外とされていること、作り方の管理と確かめる項目の根拠として参照しています。
6脂肪由来間葉系幹細胞のセクレトームは、細胞外小胞の中身と溶けたタンパク質の相乗作用によって骨格筋の再生を促す
要約:
本研究は、脂肪由来の間葉系幹細胞が出す物質(セクレトーム)を、外から加えた成分を含まないよう食塩水の中で集め、まるごとのセクレトームと、細胞外小胞の部分とに分けて、その働きを調べたものです。細胞を使った試験と、マウスの筋肉の損傷モデルで調べ、タンパク質とマイクロRNAの中身も解析しています。
組織の再生を促す因子は、細胞外小胞の中と、液に溶けた部分の両方に分かれて存在し、それぞれが再生の過程の異なる面に働いていました。著者らは、細胞外小胞と溶けた分子が相乗的に働いて筋肉の再生を促していると考察しています。背景として、MSCの再生の働きは、細胞そのものよりも、細胞が作る分子、特に細胞外小胞に包まれた分子によると考えられるようになった、と述べています。
本ページでは、幹細胞の働きについての考え方の変化と、細胞が出す物質が小胞の中にも液の中にもあることの根拠として参照しています。
7臨床で使うヒト細胞外小胞製剤の製造
要約:
本論文は、幹細胞や前駆細胞に由来する細胞外小胞を治療に使うために、研究室から患者に届けるまでに必要な、製造・安全性・有効性の試験の考え方をまとめた総説です。著者らの生物製剤の製造の経験にもとづき、間葉系間質細胞(MSC)由来の細胞外小胞の治療を進める戦略を中心に論じています。
細胞外小胞の治療の開発は、元の細胞の種類と対象の病気によって左右されること、規制に沿って安全で有効な治療を設計する必要があること、それぞれの治療で効力の裏にある作用のしくみを明らかにすることが大きな課題であることを述べています。
本ページでは、細胞外小胞を取り出して製剤にする研究と開発が進められてきたことの根拠として参照しています。
8脂肪組織に由来する、細胞を使わない2種類の治療材料の比較:小型細胞外小胞と培養上清
要約:
本研究は、ラットの脂肪組織を培養して作った培養上清(脂肪組織抽出液)と、そこからさらに精製した小型の細胞外小胞について、中身と、細胞や生体での働きを比べたものです。
タンパク質の量をそろえて比べると、小型の細胞外小胞のほうが粒子の数が多く、粒子の大きさは138nmに狭い山を作っていました。培養上清には溶けた因子が多く、粒子の大きさは30〜5,000nmと幅広く分布していました。脂肪組織1gあたりの粒子の数は、培養上清のほうが約1.6倍多くなっていました。この研究は細胞や生体での働きも比べています。
本ページでは、このうち中身の違いの部分だけを、同じ組織から作った上清液と小胞の違いの根拠として参照しています。材料はラットの脂肪組織で、育てた幹細胞から作ったものではありません。
9間葉系幹細胞からの取り出し方:細胞溶解物・セクレトーム・エクソソームの手順の見直しと、治療の可能性の比較
要約:
本論文は、間葉系幹細胞から、細胞を壊した液(細胞溶解物)、細胞が出す物質(セクレトーム)、エクソソームを取り出す方法を整理した総説です。
細胞を使わない治療として多くの臨床試験が進められている一方、うまくいかない結果もあることにふれ、エクソソーム・セクレトーム・溶解物の取り出し方に標準の方法がないことを大きな課題に挙げています。セクレトームを臨床で使うには、細胞を傷めない回収、時間の最適化、複数回の回収、培養条件の最適化、品質管理を含む包括的な方法が望ましく、臨床試験で正しく評価するために、方法の標準化と統一が欠かせないとしています。
本ページでは、取り出し方にまだ標準の方法がないことの根拠として参照しています。
10日本における細胞外小胞の調製と臨床応用についての基本的な考え方
要約:
本論文は、日本再生医療学会の立場から、日本で細胞外小胞を調製し臨床に使うときの基本的な考え方を示したものです。医師の裁量だけにもとづく治療への懸念と、確かな科学的根拠にもとづく治療を積極的に進めることの2点を、学会の立場として表明しています。
細胞外小胞は性質が複雑で、規格や特性の評価から得られる品質の項目が限られるため、最終製品の品質は、原料と製造工程を管理することで確保することが重要だと述べています。また、細胞外小胞は生きた細胞の成分を含まず、特定細胞加工物にあたらないため、医師の裁量で行う個別の治療は再生医療等安全性確保法の対象外となり、安全性と有効性の科学的根拠が十分に評価されないまま治療が行われることへの懸念を示しています。
本ページでは、細胞外小胞の品質を、原料と作る工程の管理で保つという考え方の根拠として参照しています。
11治療に使う、間葉系間質細胞(MSC)由来の小型細胞外小胞の定義
要約:
本論文は、細胞治療や細胞外小胞にかかわる国際的な4学会(SOCRATES・ISEV・ISCT・ISBT)の会員が、間葉系間質細胞(MSC)由来の小型細胞外小胞を治療に使うための、共通の基準を提案したものです。
MSCの多様さと調製の違い、小胞の作り方と分け方の違い、品質を確かめる標準の試験がないこと、働きを調べる試験の再現性が限られることから、研究結果に食い違いや論争が生じていると指摘しています。そのうえで、製剤に含まれる小型細胞外小胞の元の細胞を特定できること、脂質の膜に包まれた小胞があること、小胞が物理的・生化学的に保たれている程度を、数値で示せる指標で定義すべきだと提案しています。
本ページでは、エクソソームの製剤で確かめる項目の根拠として参照しています。
12厚生労働省「再生医療等安全性確保法の見直しに係るワーキンググループとりまとめ」
要約:
再生医療等安全性確保法の施行後の見直しについて、2021年に作業部会がまとめた報告書です。「新規医療技術(エクソソームを含む細胞外小胞)への対応」の項で、エクソソーム等は細胞断片として整理されるもので、ヒトへの投与物として明確に定義づけることが難しいことや、諸外国の規制の状況も考え合わせ、現時点では同法の対象としないとし、今後の医療技術の進展を踏まえて必要に応じて検討する、としています。
本ページでは、2021年の時点での細胞外小胞の扱いと、この項の「エクソソーム等」が細胞外小胞を指していることの根拠として参照しています。
13厚生労働省 事務連絡「幹細胞培養上清液及びエクソソーム等を用いる医療について(周知)」
要約:
「ヒトの幹細胞の培養上清液及び当該上清液に含まれる可能性のある細胞外小胞等の細胞の分泌物(以下「エクソソーム等」という。)」を用いた医療について、現時点で、諸外国を含め有効性・安全性が示され、薬事承認を得て製造販売されている医薬品はないことを伝えた連絡です。
そのため、行う場合は、実施する医師・歯科医師の責任のもと、特に安全性に留意する必要があるとし、品質やリスクの管理については、日本再生医療学会のガイダンスも参照するよう求めています。
本ページでは、上清液と細胞外小胞をまとめて「エクソソーム等」と呼ぶ資料の例と、承認を受けた医薬品がまだないことの根拠として参照しています。
14厚生労働省「エクソソームを含む細胞外小胞及び細胞培養上清液の法令上の取扱いについて」(第8回 再生医療等安全性確保法の見直しに係るワーキンググループ 資料2)
要約:
2026年10月8日の作業部会で示された資料です。2021年のとりまとめ、改正法の附則、厚生労働科学研究の研究班(研究代表者:日本再生医療学会の岡田潔氏)の2024年度と2025年度の報告書の抜粋をまとめたうえで、細胞外小胞と細胞培養上清液の法令上の扱いについて、現状と課題、対応の方向性、今後の対応(案)を示しています。
現状と課題では、研究開発が着実に進む一方で、安全性や科学的妥当性が十分に評価されないまま医療提供されるリスクがあること、製造管理の体制を含めて投与状況の全容を十分に把握できないこと、細胞培養上清液の中には細胞外小胞が含まれることが想定される一方、上清液をそのまま「エクソソーム治療」として投与する事例が指摘されていて、その実態把握も重要であることを挙げています。今後の対応(案)は、エクソソームを含む細胞外小胞を再生医療等安全性確保法の対象とすべきとしています。抜粋された2025年度の報告書は、細胞外小胞と培養上清の両方を同法の対象とすべきとし、細胞外小胞は国内外で臨床応用の取り組みが進み、投与物として一定の定義付けが可能であること、未承認・未検証のまま医療提供されるリスクを制度として把握・監督できる枠組みが必要なこと、培養上清を細胞外小胞と称して投与する事例が指摘されていること、法的な枠組みに位置づけて実態把握とリスク調査を可能にすべきこと、細胞外小胞と培養上清の安全な提供と普及の促進が望まれることを挙げています。
本ページでは、2026年10月8日の案の内容、資料が挙げている課題、研究班の報告書の見解の根拠として参照しています。
15脂肪・骨髄・胎盤・ワルトンジェリーに由来する間葉系幹細胞のセクレトームの、タンパク質の比較解析
要約:
本研究は、脂肪・骨髄・胎盤・へその緒のゼリー状の組織(ワルトンジェリー)に由来するヒトの間葉系幹細胞の培養上清を集め、含まれるタンパク質を質量分析で調べて比べたものです。
タンパク質の構成には、元の組織ごとに異なる特徴がありました。一方で、働きの解析では、細胞の移動や、細胞死を抑える働きにかかわるものなど、共通する特徴も見られました。
本ページでは、元の細胞によって上清液の中身が違うことの根拠として参照しています。
16日本赤十字社「よくあるご質問(献血について)」
要約:
献血についてのよくある質問への回答です。「プラセンタ注射を受けた場合、献血は可能ですか。」への回答で、2026年10月1日からプラセンタ注射剤の使用歴による献血の制限を見直したことを説明したうえで、美容関連で使用されるヒト幹細胞培養上清液等や胎盤由来コラーゲン製剤は対象外で、これまでと同様に使用後の献血はご遠慮いただく、としています。
この回答には、献血を控える期間や、注射・肌への導入・化粧品といった使い方の区別は書かれていません。
本ページでは、上清液を使った後の献血の扱いの根拠として参照しています。
費用と、 主なリスク・ 副作用
M2Pエクソソーム™を使う治療は、自由診療(保険適用外)です。料金は1バイアル(1本)39,600円、2バイアル77,000円で、点滴で使う場合はフィルター代1,100円が加わります(いずれも税込)。料金の内訳は、エクソソーム点滴のページでご案内しています。
主なリスク・副作用は、針を刺したところの赤み・内出血・軽い痛み、ごくまれなアレルギー反応(アナフィラキシーなど)です。ヒトの細胞に由来する製剤のため、治療の後は献血をお控えいただいています。18歳未満の方と、妊娠中・授乳中の方には行っていません。がんの治療中の方と、がんの寛解から5年たっていない方も、主治医の許可がある場合を除いて行っていません。
ヒアルロン酸導入の料金と主なリスク・副作用は、ヒアルロン酸導入のページでご案内しています。
未承認医薬品等に関する注意事項
本ページに記載されている「M2Pエクソソーム™」を用いた治療は、医薬品医療機器等法(薬機法)において承認されていない未承認医薬品等を用いた自由診療です。
- 未承認医薬品等であることの明示:本治療に用いるエクソソーム製剤は、国内において薬機法上の承認を得ておりません。
- 入手経路等の明示:東京都港区の細胞加工施設「AZACLI LAB」(セルソース株式会社の技術供与)で最終加工された製剤の提供を受け、当院医師の責任と判断の下で導入・使用しています。
- 国内の承認医薬品等の有無の明示:現在、国内において同一の性能を有する他の承認医薬品等は存在しません。
- 諸外国における安全性等に係る情報の明示:エクソソーム等を用いた医療について、諸外国を含め有効性・安全性が示され、薬事承認を得て製造販売されている医薬品はありません(厚生労働省医政局研究開発政策課 事務連絡、2024年7月31日)。本製剤についても、未知の副作用が起こる可能性は否定できません。
- 医薬品副作用被害救済制度の対象外であることの明示:未承認の医薬品等による健康被害は、医薬品副作用被害救済制度などの公的な救済の対象になりません。
ヒアルロン酸導入で使う機器の、未承認医薬品等に関する情報(国内の承認機器の有無・諸外国における安全性情報など)は、ヒアルロン酸導入のページでご案内しています。育毛の治療で使う製剤と機器についても、HARG+療法と育毛エクソソーム療法のページでご案内しています。
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監修者情報(医師紹介)

監修医師:佐藤 雅樹
ソララクリニック 院長
専門分野:美容皮膚科
2000年 順天堂大学医学部卒。順天堂大学医学部形成外科入局。 大学医学部付属病院等を経て、都内美容皮膚科クリニックにてレーザー治療の研鑽を積む。2011年3月 ソララクリニック開院 院長就任。2022年 医療法人 松柴会 理事長就任。日本美容皮膚科学会 日本形成外科学会 日本抗加齢医学会 日本レーザー医学会 点滴療法研究会 日本医療毛髪再生研究会他所属。
様々な医療レーザー機器に精通し、2011年3月にルビーフラクショナル搭載機器を導入し、15年以上この治療を続けている。各種エネルギーベースの医療機器を併用する複合治療に積極的に取り組む。
※当院の治療はすべて自由診療(保険適用外)です。標準的な費用は各ページの料金表または料金表ページをご覧ください。治療に伴うリスク・副作用は診察時にもご説明します。
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