高周波(RF)とマイクロ波の違い たるみ治療をエネルギー別に考える
たるみ治療は「感覚」から「物理学」の時代へ
「切らずにたるみを治したい」
そう願う方のために、当院では現在、物理特性や作用機序が異なる4種類のエネルギー治療器を導入しています。
- Fotona6D(レーザー/光)
粘膜から表皮まで多層的にアプローチ - Sofwave(超音波/音)
真皮中層への強力な熱凝固 - XERF(高周波 RF/電流)
抵抗加熱による構造的引き締め - Re:vive(マイクロ波 MW/電磁波)
誘電加熱による造形と深部タイトニング
これらは単に「深さ」だけで使い分けているわけではありません。
例えば、フォトナ6Dのように1台で複数の層をカバーできる機器もあります.
それでも当院があえて4種類もの機器を揃えている理由は、一人ひとりのお顔の「組織の質(皮膚の厚み、水分量、脂肪の量)」に、最も相性の良いエネルギーをマッチングさせるためです。
中でも、特にお客様から混同されやすいのが、XERF(ザーフ)とRe:vive(リヴァイブ)の違いです。
- どちらも「電磁波で温める」という点では同じカテゴリーに属しますが、物理学的に見ると、その「熱の発生メカニズム」と「得意な仕事」は正反対と言っていいほど異なります。
本記事では、物理学の視点から、なぜこの2つが必要なのかを深掘り解説します。
この記事の目次
高周波(RF)とマイクロ波(MW)とは?

「物理学」と言うと難しく聞こえるかもしれませんが、実はどちらも私たちの生活に欠かせない身近な技術です。 熱の作り方の話に入る前に、まずはその「正体」を簡単に整理しましょう。
🔴 高周波(RF:Radio Frequency)
- 正体: 「電気」の仲間です。
- 身近な例: ラジオ、トランシーバー、地デジ放送など。
- 特徴: 周波数は「MHz(メガヘルツ)」という単位で、1秒間に数百万回振動します。美容医療においては、電極を当てて「体に電気を流す」ことで作用します。 (※XERFは6.78MHzと2MHzを使用)
🔵 マイクロ波(MW:Microwave)
- 正体:「電波」の仲間です。
- 身近な例: 電子レンジ、Wi-Fi、スマホの通信(4G/5G)など。
- 特徴: 周波数は「GHz(ギガヘルツ)」という単位で、高周波よりも桁違いに速く、1秒間に数十億回も振動します。美容医療においては、電気を流すのではなく、「波(電磁波)を浴びせる」ことで作用します。 (※Re:viveは2.45GHzを使用)
この2つは兄弟のような関係ですが、「振動の速さ(周波数)」が決定的に違います。この違いが、体の中で「熱が生まれる場所」の違いを生むのです。
「何が熱くなるか」決定的な違い

高周波とマイクロ波は共に電磁波の一種です。
同じ「電磁波」でも、周波数が変わると、体の中で「熱の発生源」が変わります。 ここが、治療効果を分ける最大のポイントです。
🔥 XERF(高周波):電気の通り道(構造)が熱くなる

物理原理:ジュール加熱(Joule Heating)
P ∝ I² · R
- 👨⚕️ 医師による翻訳: XERFは体に「電気(電流 I)」を流します。 電気は、脂肪(絶縁体)を避けて、電気が通りやすい**「繊維の網目(コラーゲンや筋膜)」**を選んで流れます。狭い道を電気が無理やり通る時の「摩擦(抵抗 R)」で熱が発生します。
👉 つまりどういうこと? お肉の脂身(脂肪)そのものではなく、「お肉の繊維(スジ)」だけが加熱されてギュッと縮まるイメージです。 緩んだ皮膚や筋膜といった「構造の網」を焼き縮めることで、顔全体を強力に引き締めます。
🌊 Re:vive(マイクロ波):水のある場所(中身)が熱くなる

物理原理:誘電加熱(Dielectric Heating)
P ∝ f · E² · ε”
- 👨⚕️ 医師による翻訳: Re:viveは電気を流さず、「波(マイクロ波 f )」を浴びせます。 この波は皮膚を通り抜け、奥にある「水分(水分子)」を1秒間に24億回も振動させます。電子レンジと同じ原理で、水分を含む脂肪層や組織そのものがダイレクトに発熱します。
👉 つまりどういうこと? 網だけでなく、「中身(脂肪や組織のボリューム)」そのものが加熱されます。 余分な脂肪を減らしたり、厚ぼったい組織を引き締めたりして、輪郭の形(ボリューム)を整えることができます。
2. XERF(ザーフ)の革新性:デュアル周波数による構造改革
従来のモノポーラRF(サーマクール等)は、主に6.78MHzという単一の周波数を使用していました。XERFはここに物理学的なブレイクスルーをもたらしています。
🔬 「6.78MHz」+「2MHz」の相乗効果

XERFは、従来の6.78MHzに加え、より波長が長く深部へ届きやすい2MHzを組み合わせた「デュアル周波数」を採用しています。
- 6.78 MHz(浅層~中層): 皮膚(真皮層)のコラーゲン密度を高める
- 2 MHz(深層~SMAS): さらに奥のSMAS(表在性筋膜)や靭帯まで電気を届ける
これにより、XERFは単なる皮膚の引き締めだけでなく、顔の土台となる構造(Structure)そのものを熱凝固させ、立体的なリフトアップを図る「構造的タイトニング機器」として機能します。
3. Re:vive(リヴァイブ)の特異性:2.45GHzの誘電特性

Re:viveが採用する2.45GHz帯のマイクロ波は、生体組織に対して非常にユニークな挙動を示します。
💡 脂肪層でのエネルギー「トラップ」現象
マイクロ波は、皮膚(表皮・真皮)を「透過」しやすく、その奥にある皮下脂肪層に到達した途端、急激にエネルギーが吸収されて熱に変わる性質があります。 これにより、皮膚表面は熱くないのに、奥の脂肪層だけが50℃以上の高温になるという、RFにはできない加熱が可能になります。
- TECクーリングシステム(強力接触冷却):
ハンドピース先端を-5℃に維持する強力な冷却システムにより、皮膚表面を強力に保護します。
✨ コケずに小顔を作る「線維性隔壁」への作用

Re:viveは脂肪を減らすイメージが強いですが、真価は「線維性隔壁(セプタ)」の再構築にあります。
脂肪をハンモックのように支えている「コラーゲンのネット」を熱で強力に縮めることで、脂肪のボリュームを適度に減らしつつ、中身が詰まった状態でギュッとパッキング(圧縮)します。 これにより、単に痩せるだけでなく、シャープで張りのある輪郭を作ることができます。
4. 結局、どちらが必要?
物理特性の違いは、そのまま「お悩み」への適応の違いとなります。
| 特徴 | XERF(高周波 RF) | Re:vive(マイクロ波 MW) |
|---|---|---|
| 加熱方法 | 電気の摩擦熱 (通路網を焼く) |
水分子の振動熱 (中身を温める) |
| 周波数 | 6.78 MHz + 2 MHz | 2.45 GHz |
| 原理 | ジュール熱 (電気抵抗による摩擦) |
誘電加熱 (水分子の回転) |
| 狙い | 「構造の強化」 皮膚と土台の密度を高める |
「造形・ボリューム調整」 不要な容量を減らし形を整える |
| こんな方へ |
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5. もっと深く知りたい方へ
ここでは、さらに専門的な知識を求める方のために、細胞レベルでの応答について解説します。
導電率(σ)と複素誘電率(ε*)
XERFの場合(導電率)
低周波(MHz帯)では、細胞膜がコンデンサのように電流を遮断しようとしますが、XERFの周波数帯では電流が細胞内外を通過できます。
脂肪組織は電気抵抗が高いため、電流は脂肪を避けて、抵抗の低い「線維隔壁(Septae)」に集中して流れます。これが、XERFが脂肪そのものではなく「構造」を引き締める物理的理由です。
Re:viveの場合(複素誘電率)
マイクロ波(GHz帯)では、議論の主役は誘電率になります。
2.45GHzは脂肪層内の結合水や組織界面で特異的な吸収パターンを示し、脂肪層全体を均一に加熱(Bulk Heating)することに長けています。
熱緩和時間とパルス制御
XERF(Wave Fit Pulse)
真皮やSMASは血流が豊富で熱が逃げやすいため、XERFは高出力のエネルギーを短時間(パルス状)に叩き込み、放熱される前にターゲット温度(約60℃)まで一気に引き上げる戦略をとります。
Re:vive(連続照射と蓄熱)
脂肪組織は熱が逃げにくい(断熱性が高い)ため、Re:viveは表面を冷却しながら連続的にエネルギーを加え、脂肪層に熱を「蓄積」させることで、麻酔なしでも深部温度を有効域まで上昇させます。
6. 「科学で読み解く」アプローチとは
以上の物理学的分析からわかるように、XERFとRe:viveは「どちらが優れているか」という比較対象ではなく、作用する物理現象そのものが異なります。
当院が4つのデバイスを揃える理由は、「組織の状態(Tissue Condition)」に合わせた最適解を導き出すためです。
- ボリューム過多・重みがある場合:
誘電加熱(Re:vive)による深部加熱で、脂肪層を引き締め、輪郭の「形」を整えるアプローチが有効です。 - 皮膚の緩み・弾力低下が主訴の場合:
ジュール熱(XERF)による全層加熱で、コラーゲン線維とSMASを強力に収縮させ、組織の「密度」を高めるアプローチが適しています。
もちろん、多くの患者様はその両方の要素を併せ持っています。
だからこそ、画一的なマニュアル治療ではなく、医師が患者様のお顔を触診し、「今のたるみの原因は、皮膚の伸びなのか、皮下組織の重みなのか」を診断することが何よりも重要になります。
物理学(Physics)と解剖学(Anatomy)に基づいた、あなただけのオーダーメイド治療。それが当院の目指す美容医療のスタンダードです。
7. 参考文献
本記事を作成するにあたり参考にした文献です。
ご参考になれば幸いです。
デュアル周波数RF(XERF)による深部リフト効果の検証
日本語訳題: 韓国における顔面光老化の後遺症治療における非侵襲的デュアル周波数モノポーラ高周波(RF)装置の臨床的安全性と有効性の評価:臨床研究
原題: Evaluation of the clinical safety and efficacy of a noninvasive dual-frequency monopolar radiofrequency device in the treatment of facial photoaging sequelae in Republic of Korea: a clinical study
出典: Medical Lasers 2025; 14(1): 23-30.
DOI: 10.25289/ML.24.035
要約: 従来の6.78MHzに加え、2MHzを組み合わせた「デュアル周波数」のXERFを用いた最新の研究です。
組織学的分析において、真皮のコラーゲンだけでなく、より深い「筋膜(fascia)」層の顕著な引き締めと肥厚が確認されました。
これにより、XERFが2MHzを併用することで、皮膚深層~SMASレベルからの構造的なリフトアップを提供できる科学的裏付けが示されています。
マイクロ波によるコラーゲン線維(セプタ)の再構築
日本語訳題: マイクロ波照射後の皮下脂肪組織の小葉間隔壁を構成するコラーゲンの再構築
原題: Remodeling of collagen constituting interlobular septa of subcutaneous adipose tissue following microwaves application
出典: Dermatologic Therapy. 2020; 33(4): e13362.
DOI: 10.1111/dth.13362
要約: 2.45GHzのマイクロ波が皮下組織にどのような影響を与えるかを、特殊な顕微鏡技術を用いて詳細に分析した研究です。
照射後、脂肪組織を支えている「線維性隔壁(セプタ)」において、古く硬くなったコラーゲンが減少し、新しくきめ細かいコラーゲンへの置き換わりが進むことが観察されました。これは、マイクロ波治療が単に脂肪を減らすだけでなく、脂肪層を支える「ネット」を再構築し、内部から引き締める効果を持つことを示しています。
マイクロ波による顎下のたるみ改善効果
日本語訳題: 顎下の皮膚たるみ治療のための革新的なマイクロ波技術
原題: An innovative microwave technology for the treatment of submental skin laxity
出典: Lasers in Medical Science 2025; 40:28.
DOI: 10.1007/s10103-024-04270-1
要約: 顎下のたるみ(SSL)に対して、2.45GHzのマイクロ波治療を行った最新の臨床研究です。
治療後、客観的な「たるみスコア(SMSLG)」が有意に改善しました。マイクロ波が脂肪細胞へのアプローチと同時に、真皮のコラーゲン収縮を誘発することで、外科手術を行わずに皮膚のタイトニング(引き締め)と輪郭の改善を同時に実現できることが示されており、副作用も最小限であると報告されています。
監修者情報(医師紹介)

監修医師:佐藤 雅樹 (さとう まさき)
ソララクリニック 院長
専門分野:美容皮膚科
2000年 順天堂大学医学部卒。順天堂大学医学部形成外科入局。 大学医学部付属病院等を経て、都内美容皮膚科クリニックにてレーザー治療の研鑽を積む。2011年3月 ソララクリニック開院 院長就任。2022年 医療法人 松柴会 理事長就任。日本美容皮膚科学会 日本形成外科学会 日本抗加齢医学会 日本レーザー医学会 点滴療法研究会 日本医療毛髪再生研究会他所属。
様々な医療レーザー機器に精通し、2011年ルビーフラクショナル搭載機器を日本初導入。各種エネルギーベースの医療機器を併用する複合治療に積極的に取り組む.
最終更新日