レーザー治療後など色素沈着対策としてのトラネキサム酸内服

公開:2019年7月30日

更新:2021年1月26日

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シミのレーザー治療後に トラネキサム酸の内服を行なうことで その後に発生する「炎症後色素沈着」を軽減させることが Lasers in Surgery and Medicine に掲載されました。

https://doi.org/10.1002/lsm.23135

経験則的に認識がされていたことではありますが、
トラネキサム酸の内服を継続して頂くことで、炎症後色素沈着の予防・軽減が得られる。

今回 トラネキサム酸の応用の広さを再認識させて頂きました。

トラネキサム酸は 肝斑の治療薬 として有名になりました。

ネット上にあるトラネキサム酸の記事によっては トラネキサム酸は肝斑にしか効果が無い と書かれている場合もあり、人によって混乱の原因にもなっています。

プラスミンがメラニン産生を促進させる。

炎症が起きると プラスミンという酵素が活性化します。

活性化したプラスミンは 近くにいる メラニンを作る細胞「メラノサイト」を刺激し活性化。メラニン産生を促進させてしまいます。

この反応は肝斑だけに限った話ではありません。

肌で起こる微細な炎症。

肌をちょっと擦る 等 チョットした刺激によっても 小さな炎症が起きます。

プラスミンは その少しの炎症でも活性化は起き、メラニン産生を促進させています。

少しの刺激の積み重ねが シミ・くすみ そして肝斑の原因の一つと言えるでしょう。

シミの部位はプラスミンの活性が高い

シミの部位は 他の皮膚と比べて プラスミンの活性が高いことが知られています。

見た目で明らかな炎症が起きていなくても プラスミン活性が高いことは 興味深いことです。

更に 男女で比べると 女性よりも男性の肌のほうが プラスミン活性が高く、男性の方がシミができやすいということが言えます。

トラネキサム酸は プラスミンの活性を抑える。

トラネキサム酸は プラスミンの活性を抑える 「抗プラスミン剤」として働きます。

プラスミンの活性を抑えられることで、 メラニン産生が減少することになります。

微細な炎症を抑えることでメラニンが減る

トラネキサム酸の内服を続けていただくことで、この「微細な炎症」を軽減させることができます。

微細な炎症に伴って起きる 様々な肌トラブルに見舞われることも減りますし、何より メラニン産生の促進が軽減されていきます。

トラネキサム酸の内服で美白効果

日々のスキンケアでも 肌を擦る際に 微細な炎症は引き起こされていると考えたほうが良いでしょう。

過度に負荷がかかっていれば メラニン産生量が増えて くすみ シミの原因となります。

トラネキサム酸は その微細な炎症を軽減してくれます。

メラニン産生が減少し 結果として 肌の美白効果が期待できるのです。

シミ治療での相乗効果

レーザー等でシミの色に反応させて 除去を行いますが、シミの色が濃いほど 反応が良く 除去しやすい傾向があります。

きれいに取れるところもあれば、 徐々に薄くなってきたシミも出てきます。もともと薄いシミ程 治療回数が必要となる場合があります。

薄いシミ程取れづらい

薄いシミは 反応がその分減るため、レーザー等の出力を高めて行なう必要があります。

薄いシミのほうが取れやすいと思っていらっしゃる方も 実は多いので、カウンセリングの時に十分に説明をさせて頂きます。

肌の色が濃いと出力を上げづらい

肌のくすみや 色黒な場合には、シミと周囲の肌の色の差があまり大きくありません。

そのため、出力を上げて照射を行なうと 周囲の皮膚ごと反応してしまい 火傷のリスクが高まります。

シミの治療の際には 周囲の皮膚の色も考慮する必要があるのです。

肌の色を薄くすることで、シミとの差を作る

トラネキサム酸の内服を行なうことで 全体のトーンは明るくなっていきます。

薄いシミは 周囲の肌の色が明るくなり 色の差が大きくなればなるほど レーザー等の反応も良くなっていきます。

あともう少しの薄いシミも治療が可能となっていくのです。

まとめ

トラネキサム酸の内服は 肝斑の治療としてだけでなく レーザー等の治療後の炎症後色素沈着の軽減 としても活用できます。

それだけでなく より積極的なシミ治療として活用することで 更に薄いシミの改善に相乗効果を発揮してくれます。

また、抗炎症作用があることで、治療に伴う過度の炎症も低減できるなど 副作用の抑制に寄与してくれます。