選択的光熱分解(Selective Photothermolysis)の理論と最新レーザー治療への応用

公開:2025年6月18日

更新:2025年6月19日

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選択的光熱分解理論とは、レーザー光を「適切な波長」「適切なパルス幅」「適切なエネルギー密度」で照射。標的とする組織だけを選択的に破壊し、周囲組織への熱影響を最小限に抑える理論です。

※Selective Photothermolysis=「選択的光熱分解理論」または「選択的光熱融解理論」と日本語訳されます。より詳しく

Photothermolysis= photo()+ thermo()+ lysis(分解・破壊)の合成語なので、「光熱分解」のほうが語源的に正しく学術領域で使用されることが多いですが、美容領域では「光熱融解」の用語が使われることが多いです。

選択的光熱分解とは?その基本理論と歴史背景

選択的光熱分解(Selective Photothermolysis)とは、特定の波長パルス幅(照射時間)・エネルギー密度を組み合わせて、標的とする組織だけに光エネルギーを吸収させ、熱変性(分解)を起こさせるレーザーの理論です。

1983年に米国ハーバード大学のR.R.ロックス・アンダーソン博士とJ.A.パリッシュ博士によって提唱され、科学誌「Science」に発表されました。この理論により、レーザー光を特定の色素(クロモフォア)に選択的に吸収させ、その部分だけを精密に加熱破壊しつつ周囲組織へのダメージを最小限に抑えることが可能になります。

歴史的には、選択的光熱分解理論の登場によって、それまで困難だったポートワイン血管腫(赤あざ)の治療や入れ墨・シミの除去が飛躍的に進歩しました。例えば、ポートワイン血管腫ではヘモグロビンに吸収されやすい585 nm(初期は 577 nm)のパルス色素レーザーが用いられ、病変血管だけを凝固させ正常皮膚を傷つけない治療が可能となりました。

入れ墨や太田母斑などの異所性のメラニン色素には、メラニン吸収の高い694nmルビーレーザーや1064nmNd:YAGレーザーのQスイッチ短パルスが用いられ、色素顆粒を選択的に破壊し瘢痕を残さずに除去できるようになりました。

このように選択的光熱分解の理論は、「標的がよく吸収する波長標的の熱緩和時間よりも短いパルス幅」で照射するというコンセプトで、レーザー治療の安全性と効果を飛躍的に高めたのです。

熱緩和時間(TRT)とは、加熱された組織が周囲に熱を拡散し温度が約37%低下するまでの時間のことで、ターゲットの大きさや性質で決まります。レーザーのパルス幅はこの時間より短いほど熱が拡散せず「熱閉じ込め(thermal confinement)」が達成され、標的内だけが十分加熱されます。

主要クロモフォアの波長別吸収

選択的光熱分解がもたらしたレーザー治療の進歩

選択的光熱分解の理論に基づき、1980年代以降さまざまな医療用レーザーが開発されました。

血管病変治療では、前述のパルス染料レーザー(585nm前後)などが代表で、血液中のヘモグロビンを標的に短パルスで照射し、赤ら顔や毛細血管拡張症、血管腫などを改善します。

脱毛レーザーでは、毛のメラニンを標的としてアレキサンドライトレーザー(755nm)やダイオードレーザー(810nm)、長パルスNd:YAGレーザー(1064nm)などが用いられています。これらは毛包のサイズに合わせてパルス幅がミリ秒単位と長めに設定され、毛根に十分熱を与えつつ表皮へのダメージを抑える工夫がなされています(いわゆる「光熱分解の延長理論ETSP)。

例えばレーザー脱毛では、表皮の熱緩和時間(約10ms)より長く、毛根・毛包の熱緩和時間(数十~数百ms)より短いパルス幅を選ぶことで、毛根のみを選択的に破壊し周囲皮膚の火傷を防ぎます。この調整には冷却技術の併用も重要で、表皮を冷却保護しながら毛根に高エネルギーを加えることで安全に脱毛効果を得ています。

色素性病変治療では、Qスイッチレーザーの登場が画期的でした。Qスイッチとはナノ秒(10-9秒)台の超短いパルスを発振する技術で、1980〜90年代にルビーレーザー(694nm)やNd:YAGレーザー(1064nm, 周波数二倍の532nm)に応用されました。

この超短パルスによりメラノソーム(メラニン顆粒)や刺青インク粒子の熱緩和時間(数〜数十ナノ秒)より短い照射が可能となり、粒子内部で急激に温度を上げ破裂させることができます。周囲組織への熱拡散がほとんど起こらないため、患部のみを選択的に破壊し瘢痕のリスクなく色素斑を除去できるようになりました。

この現象はしばしば「光音響効果(photo-acoustic effect)」とも呼ばれ、特に刺青除去ではインク粒子の破砕とマクロファージによる除去を促進します。

フラクショナルレーザーへの発展

2000年代に入ると、選択的光熱分解の応用としてフラクショナルフォトサーミリシス(Fractional Photothermolysis)の概念が登場しました。これはレーザー光を極小ドット状に分割し、皮膚の一部の点だけにマイクロレベルの熱損傷を与える手法です。

点在する「微小治療ゾーン(MTZ)」だけがレーザーで破壊され、周囲の正常組織が温存されるため治癒が早く、安全性が高まりました。

2004年にMansteinらが発表したこの技術により、フラクショナルCO2レーザーやフラクショナルEr:YAGレーザーなどが開発され、肌の若返り(リジュビネーション)やニキビ跡治療に革命をもたらしました。

フラクショナルレーザーは皮膚表面に無数の微小な穴(熱損傷柱)を開け、コラーゲンの再生を促進しつつダウンタイムを短縮できます。

また近年では後述するルビーフラクショナルやピコ秒レーザーのフラクショナル照射など、シミ治療用レーザーにもフラクショナル技術が応用され、難治性色素斑の治療効果向上と副作用低減に貢献しています。

皮脂腺を標的とした最新レーザー治療 – ニキビ治療への応用

選択的光熱分解の理論はさらに新しい分野へ応用が進んでいます。

その一つが皮脂腺をターゲットとするニキビ治療レーザーです。ニキビ(尋常性ざ瘡)の根本原因の一つは皮脂腺からの過剰な皮脂分泌ですが、従来は外用薬や内服薬で皮脂分泌を抑える以外に、レーザーではアクネ菌を減らす紫外線・青色光治療や炎症を抑える血管レーザー程度しか直接的なアプローチがありませんでした。

そこで登場したのが、特定の波長のレーザーで皮膚内の皮脂腺そのものを破壊するという新発想の治療です。

1726nm前後の波長が皮脂(皮脂腺内の脂質)に対して非常に高い吸収率を持つことがわかり、米国では2022~2023年頃にこの波長のレーザー装置がFDA承認されました。

1726nmは水に対して約2倍、メラニンに対して約26倍も皮脂に吸収されやすい波長であり、皮脂腺にエネルギーを集中させ周囲組織へのダメージを抑えつつ皮脂腺を選択的に破壊できます。これはまさに選択的光熱分解の応用で、ターゲットを「皮脂腺の脂質」という新たなクロモフォアに設定したものです。

しかし皮脂腺は真皮の中層〜深層に存在し、表皮の下にあります。また1726nmは水への吸収もゼロではないため、表皮の熱障害を防ぐ工夫が不可欠です。そこで最新の装置では強力な接触冷却や空冷を用いて表皮を冷やしながら多数回のパルス照射を行います。

1発で高出力を当てるのではなく、マルチパルス照射で徐々に皮脂腺を加熱して目標温度に達するまで繰り返すことで、皮膚表面を守りつつ十分な熱を奥深く届ける技術です。実際、臨床試験では3か月後の炎症性ニキビ病変数が平均71%減少し、治療後の生検組織では表皮および真皮の構造を温存したまま深部の皮脂腺だけが破壊・変性していたことが報告されています。

痛みへの配慮として、パルス照射プロトコルを工夫することで無麻酔でも耐えられる方法も開発されつつあり、患者様の負担軽減と安全性確保が図られています。

当院でも最新機器である1726nmレーザー装置の導入を検討しています。一部機器は本邦で十分な評価が得られなかったためです。

この「皮脂腺の選択的光熱分解」によるニキビ治療に注目しています。従来の対症療法とは異なり皮脂腺そのものを縮小・不活化させることで、長期的なニキビの改善・再発予防が期待できる最先端の治療法です。

選択的光熱分解の理論が新たな波長領域とデバイスの開発につながり、ニキビ治療の選択肢が拡大している好例と言えるでしょう。

当院のレーザー機器と選択的光熱分解理論の関係

ソララクリニックでは、上記の理論に基づいた多彩なレーザー機器を用いて患者様の皮膚治療を行っています。それぞれの機器がどのように選択的光熱分解の考え方を活かしているかをご紹介します。

ピコ秒レーザー(532nm/1064nm)による色素病変治療

ピコ秒レーザーによるLIOB概念図(光熱分解理論の応用)

当院では532nmおよび1064nmの波長を出力できるピコ秒レーザーを導入しています。

ピコ秒レーザーは、発振パルス幅がわずか数百ピコ秒(1ピコ秒=1兆分の1秒)と非常に短く、従来のナノ秒Qスイッチレーザーを凌ぐ最新技術です。選択的光熱分解の原理に則り、超短時間で標的色素だけを加熱・破壊できるため、周囲への熱拡散がさらに減少し副作用のリスクが低減します

532nmはメラニンやヘモグロビンへの吸収が強く浅い層のシミ・そばかす、赤みを帯びた病変(毛細血管拡張や赤い刺青)に適し、1064nmは皮膚深部まで届く波長で太田母斑や青黒い刺青など真皮深くの色素に効果を発揮します。

ピコ秒レーザーの超短パルスは光音響効果(フォトメカニカル効果)により色素顆粒を微粒子レベルに粉砕し、マクロファージによる貪食・排出を促します。その結果、治療効果が向上するとともに、特に色素沈着を起こしやすい肌質(アジア人など色素肌)でも安全に治療できるという報告があります。

従来のレーザーでは難しかった薄いシミ・取りきれなかったシミにも、ピコ秒レーザーならより少ない回数でアプローチ可能となっています。

また、一部のピコ秒レーザーにはフラクショナルレンズMLADLA)を装着し、微小な点状の高エネルギー領域を作り出すことでピコ秒フラクショナル照射が可能です。これにより表皮を剥かずに真皮にレーザー誘導光学ブレイクダウン(LIOB)を起こし、ニキビ痕や毛穴の改善、肌質の向上効果も得られます。

ピコ秒レーザーは選択的光熱分解理論の究極系とも言える存在で、当院でも通常のシミだけでなくやADM治療、肝斑の新たな治療法として活用しています。

仙台のシミ取り治療全般については、各種レーザーの特性等を網羅したシミ治療総合ページが参考になると思います。

MLA(マイクロレンズアレイ)
光を多数の「極小スポット」に分割する「虫めがねの集合体」。
DLA(ディフラクティブレンズアレイ)
回折格子で仮想レンズを作り同様の効果を得る「ホログラムレンズ」。

どちらも 肌内部に微小ホットスポット(LIOB)を形成し、コラーゲン再生を刺激しつつ、表皮の火傷や長期の色素沈着を抑えます。

ルビーフラクショナル(694nm)による色素性疾患治療

ルビーフラクショナルは、その名の通り694nmのQスイッチ・ルビーレーザーをフラクショナル(格子状の点照射)で照射する最新の治療手法です。当院では難治性色素斑(ADM〈後天性真皮メラノサイトーシス〉や扁平母斑)広範囲のそばかすなどに対し、このルビーフラクショナルレーザーを採用しています。

ルビーフラクショナルについての詳細はこちらを参照ください。

694nmルビーレーザーの特徴は、メラニンへの吸収が非常に高く他の組織成分に吸収されにくい波長である点です。そのため色素細胞や色素顆粒だけを選択的に破壊しやすく、正常組織への影響を最小限にできます。

従来のQスイッチ・ルビーレーザーではスポット照射で高出力を当てるため1回で大きな効果が得られる半面、照射部位に炎症後色素沈着(PIH)が生じたり、カサブタ保護のテープが必要になる欠点がありました。

しかしフラクショナル照射では、無数の微小スポットにビームを分割し間隔を空けて照射するため、一度に皮膚全体を傷つけず部分的な損傷と自然治癒を繰り返す形になります。

その結果、照射後の色素沈着リスクを大幅に軽減でき、テープ保護も不要でダウンタイムを最小限に抑えた治療が可能となりました。

例えばADM(両頬の茶あざ)は従来だとQスイッチレーザー後に濃くなるリスクが高い難治疾患でしたが、ルビーフラクショナルはそのリスクを抑えつつ徐々に薄くしていくのに適しています。ただし肝斑を併発するケースでは刺激で肝斑悪化の恐れもあるため慎重な適応判断が必要です(トラネキサム酸内服併用などでリスク対策)。

ルビーフラクショナルは選択的光熱分解とフラクショナル技術の融合により、安全性と効果のバランスを追求した色素治療と言えるでしょう。当院でも患者様の状態に合わせ、必要に応じてピコレーザー等と使い分けながらシミ治療を行っています。

Fotona Dynamis(1064nm & 2940nm)の幅広いパルス幅調整と応用

当院が導入しているFotona SPダイナミスは、1台で2種類のレーザーを搭載した多機能プラットフォームです。Nd:YAGレーザー(ネオジムヤグ, 波長1064nm)とEr:YAGレーザー(エルビウムヤグ, 波長2940nm)を組み合わせており、皮膚の様々な悩みに対応できます。

選択的光熱分解の観点で注目すべきは、このFotonaのNd:YAGレーザーが持つ非常に広いパルス幅可変範囲です。ミリ秒(ms)オーダーのロングパルスから、従来のQスイッチには及ばないもののマイクロ秒~サブミリ秒のショートパルスまで調整可能で、さらにFotona独自の超ロングパルス(例: 0.3〜60秒PIANOモード)も搭載しています。

これにより、ターゲットの大きさや深さに応じて最適なパルス幅を選択し、熱エネルギーの伝え方を制御できるのが大きな強みです。

具体的には、1064nmは皮膚深達性が高く、コラーゲンや水にもある程度吸収されますがメラニン・ヘモグロビンへの吸収は中程度です。そのため、血管治療では直径の小さな浅い血管には短めのパルス(数ミリ秒以下)で瞬間的に加熱し、大きく深い血管には長めのパルス(10〜50ms以上)でゆっくりと加熱するといった調整が可能です。

脱毛でも産毛や細い毛には短いパルス、太く深い毛には長いパルスと使い分けることで、毛質を問わず安全に対応できます。またFotonaの長パルスNd:YAGは、緩やかな超ロングパルスで真皮全体を加温しコラーゲン産生を促すスキンタイトニング(引き締め)治療にも用いられます。

一方、パルス幅をごく短くすれば、表在性色素斑への一定の効果や、FRAC3と呼ばれる微少凝固点を多数作るモードでニキビ治療・美肌治療に応用することもできます。

パルス幅と熱浸透深度の概念図(選択的光熱分解)

このように「短いパルス=小さな・浅い標的に」、「長いパルス=大きな・深い標的に」と調整できることは、まさに選択的光熱分解の理論を臨床で最大限活かす工夫と言えます。

Fotonaのもう一つのレーザー、Er:YAG 2940nmは水への吸収が極めて高く、主に皮膚表面の蒸散(アブレージョン)に使われます。

2940nmはフラクショナルモードで照射すればフラクショナルレーザーによる肌の入れ替え治療(ニキビ痕や小ジワの改善など)が可能です。FotonaのEr:YAGもパルス幅を調整でき、短いパルスでは表皮を瞬時に蒸発させるシャープなアブレージョン、長めのパルスでは真皮に熱を浸透させながら凝固層を作る作用が得られます。これにより、従来のCO2レーザーのような深い焦げを残さずにフラクショナル治療ができ、ダウンタイムや色素沈着リスクを軽減できます。

総じて、Fotona Dynamisは「波長×パルス幅」の組み合わせ自由度が非常に高いため、一人ひとりの皮膚状態・治療目的に合わせたオーダーメイド治療が可能です。選択的光熱分解の理論を実践レベルで極めると、こうした多彩なパラメータ調整ができる機器に行き着くとも言えます。

例えば、表在性のシミ取りから深部のたるみ治療、血管拡張の改善、ニキビや毛穴治療、さらにはいびき治療や婦人科レーザー(粘膜治療)にまで、Fotonaは一台で対応できる汎用性を持ちます。当院ではFotonaを用いて複数の施術を組み合わせる「コンビネーション治療」も行っており、様々な肌悩みに総合的にアプローチしています。

これは一見魔法のようにも思えますが、その根底には全て「適切な波長で、適切な時間だけ、適切な対象に熱ダメージを与える」という選択的光熱分解の原理があるのです。

Fotonaレーザーは多岐にわたる治療が可能なため、一つのページにまとめることはできませんが、代表的なたるみ治療プログラム「フォトナ6D」は、選択的光熱分解理論を極めた施術の一つと言えるのではと思います。

おわりに:理論を理解した安心・安全な治療を

選択的光熱分解は、美容皮膚科領域のレーザー治療を語る上で欠かせない基礎理論です。

この考え方のおかげで、私たちはシミ一つ取るにも科学的根拠に基づいた安全な手法を選択でき、患者様にとって負担の少ない治療を提供できます。ソララクリニックでは、この理論を熟知した専門医が機器を厳選し、日々アップデートされる最新技術も積極的に取り入れています。

一般の患者様には難しく感じられる内容もあったかもしれませんが、「レーザーにはそれぞれ得意分野があり、当院ではそれを見極めて最適なレーザーで最適な治療を行っている」とご理解いただければ幸いです。

肌のお悩みはぜひお気軽にご相談ください。当院のレーザー治療が持つ理論的裏付けと最先端技術によって、安心・安全かつ効果的な美容医療をご提供いたします。

参考:PDLの波長は年代によって変化。

時期・装置 主波長 主な用途 備考
初代 PDL(1980年代) 577 nm PWS ほか血管病変 キセノンランプ励起の色素レーザー。当初は 577 nm/0.3 ms が標準だった
改良型 PDL(1990年代以降の主流) 585 nm595 nm PWS、苺状血管腫、酒さなど わずかに長波長化し、深達性と安全性を両立。現在の「スタンダード PDL」
577 nm OPSL/ダイオード
イエローレーザー」
(2010年代~)
577 nm 毛細血管拡張、赤ら顔など 色素ではなく半導体光学励起レーザー。連続または高出力パルスで使用

 

引用文献

選択的光熱分解:パルス光の選択吸収による精密マイクロサージャリー

原題 Selective Photothermolysis: Precise Microsurgery by Selective Absorption of Pulsed Radiation

Science 220 (4596): 524-527, 1983 Anderson RR, Parrish JA
DOI: 10.1126/science.6836297  PMID: 6836297

要約 パルス幅≦熱緩和時間という条件下でクロモフォアに吸収ピークを合わせれば標的組織のみを破壊できることを示し、レーザー皮膚治療の礎を築いた。

選択的光熱分解の拡張理論

原題 Extended Theory of Selective Photothermolysis

Lasers in Surgery and Medicine 29:416-432 (2001) Altshuler GB, Anderson RR, Manstein D, et al. DOI 10.1002/lsm.1136 

要約 選択的光熱分解の3条件(波長・パルス幅≦TRT・フルエンス) を髪や血管など「色素が偏在しターゲット構造が大きい」場合にどう拡張するかを理論化。

  1. 色素とターゲットが離れていても熱拡散で選択破壊は可能、
  2. 最適パルス幅は TRT の 1〜10 倍まで許容、
  3. 長パルス化で表皮保護と高フルエンス照射が両立

を数理モデルと in vitro 髪束加熱実験で実証。これによりロングパルスダイオード/Nd:YAG 脱毛の安全域が説明された。

 

フラクショナル光熱分解:微小熱損傷パターンを利用した新しい皮膚再構築コンセプト

原題 Fractional Photothermolysis: A New Concept for Cutaneous Remodeling Using Microscopic Patterns of Thermal Injury

Lasers in Surgery and Medicine 34 (3): 263-276, 2004 Manstein D et al.
DOI: 10.1002/lsm.20048  PMID: 15054829

要約 レーザービームを多数のマイクロドットに分割し、MTZ を形成して表皮温存と高速治癒を両立。肌質改善や瘢痕治療のダウンタイムを劇的に短縮した。

 

1,726 nm レーザーと温度制御マルチパス照射による皮脂腺選択的光熱分解を用いたニキビ治療

原題 Treatment of Acne with a 1,726-nm Laser Using Temperature-Controlled, Multipass Irradiation to Achieve Selective Sebaceous Gland Photothermolysis

Lasers in Surgery and Medicine 57 (4): 312-321, 2025 Altshuler GB et al.

要約 リアルタイム温度モニタリングで真皮を 45–48 ℃に制御しながら 3 回治療。炎症性病変を平均 71 % 改善し、組織学的に皮脂腺のみが変性。

ピコ秒レーザーによる非タトゥー皮膚病変除去の医療応用—包括的レビュー

原題 Medical Applications of Picosecond Lasers for Removal of Non-Tattoo Skin Lesions—A Comprehensive Review

Applied Sciences 15 (2): 433, 2025 Kim MJ, Lee S, Park JH
DOI: 10.3390/app15020433

要約 200 報超の臨床研究を整理。ナノ秒 Q スイッチ比で色素破砕効率 1.5–2 倍、PIH 60 %→15 % に低減。MLA/DLA 併用で LIOB を誘導し瘢痕・毛穴治療にも拡大。

 

ピコ秒・ナノ秒パルスによるタトゥー色素破壊のパターン解析

原題 Pattern Analysis of Laser–Tattoo Interactions for Picosecond and Nanosecond Pulses

Scientific Reports 7: 11336, 2017, DOI: 10.1038/s41598-017-01724-1  PMID: 28905914

要約 数値シミュレーションで ピコ秒パルスは光音響メカニズムが卓越し、短いほど破砕効率が高い と証明。