しみ取り 治療法の選択

公開:2022年9月25日

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2013年12月の記事を現在(2022年9月)の治療内容に更新しました。

顔に気になるシミがある時には、それを取りたいと思うことがあるでしょう。
しかし、どのような方法を選択すればよいのか 判断に迷うことも多いと思います。

しみ治療には様々な選択肢があります。横断的に流れを知っておくと 迷う幅も少なくなると思います。

シミ取り。個数で治療法を選択

シミの治療の際には、顔全体のシミを取りたいのか、気になるシミだけの治療をしたいのかによって、アプローチの仕方が少々異なってきます。(特殊なシミを除く。通常言われるシミ「日光性色素斑」「老人性色素斑」が対象です。)

日光性黒子 日光性色素斑 老人性色素斑 : 加齢や紫外線からの影響によって 表皮細胞の光老化に伴いメラニンを過剰に産生することでできるシミです。紫外線の影響が長い時を経て「しみ」として出てきます。一般的にシミと言われた場合のほとんどが老人性色素斑です。

1~3個のシミを取る場合には、シミ取りレーザーの「スポット照射」。

気になるシミだけをまず治療したい!という場合には、Qスイッチレーザーまたは、ピコレーザーによる「スポット照射」での治療を行います。照射後しばらくは、被覆材を貼る必要がありますが、治療回数も少なくて済みます(ほとんどの場合は、1~2回程度)。日光性色素斑の改善には、欠かせない方法です。

しかし、数個のみの治療であれば、スポット照射で良いのですが、それ以上 多数のシミの改善には少々難しいと考えています。

従来は、この方法しかなかったので少しずつシミをとっていくしかなかったのですが、照射をすればすぐ取れるわけではなく 照射後しばらく濃くなることがあります。(炎症後色素沈着) 

多数のシミを一気に行うには、治療をする側にも勇気が必要です。また、照射後は、10日前後被覆材を貼る必要がありますので、ますますハードルは高くなります。

シミのスポット治療として、1~3個程度であれば、少ない回数で治療ができますので、良い選択となると思います。

薄いシミには ピコレーザー

シミを除去する効果として 総合的な評価は ルビーレーザーが一番高いですが、ピコ秒レーザーが開発できなかったため、炎症後色素沈着の発生リスクがあります。

ピコ秒レーザーは、パルス幅が短くなったことで 炎症後色素沈着のリスクが従来のナノ秒レーザーと比較し低減しました。(全くならないわけではありません。)

更に 薄いシミに対する反応が従来よりも改善されてきましたので、薄いシミにはピコレーザーが選択されます。

濃いシミ厚めのシミにはルビーレーザー

一方 しっかりとした色がある厚めのシミの場合には ピコレーザーでは十分な効果が出ません。

そこで、しっかりした濃いシミにはルビーレーザーを使用します。

また、ピコレーザーで除去できなかったシミにも ルビーレーザーは使用されます。

顔全体のシミを治療する場合には、ルビーフラクショナルを使用。

顔全体に散らばるシミを治療していきたい という場合、全てをシミ取りレーザーのスポット照射で行うことはリスクを伴います。

レーザーは万能ではなく 薄いシミほど効果が限定的になります。更に一定割合の方には、回復過程で炎症後色素沈着が起きる場合があり、回復期間中一時的に 照射前よりも濃くなる時があります。

治療部位すべてが炎症後色素沈着を起こしてしまえば、数ヶ月間憂鬱な日々を過ごさなければいけず 最終的に薄くなるにしても トラブルとなる可能性もあります。

光治療器(IPL,光フェイシャル,BBL)は、シミ取りレーザーでの治療に伴うリスクから 開発された治療法です。照射後に被覆材でカバーする必要がありません。回数はかかりますが、少しずつシミを薄くしていくことができます。

しかしながら、光治療はシミ取りレーザーと比較すると その効果はマイルドです。光治療では取りきれないシミには、スポット的にレーザーでの治療を行うことになります。

ルビーフラクショナルは 光治療(IPL,光フェイシャル,BBL)の手軽さで シミ取りレーザー並みの効果を併せ持つ治療法です。シミ取りレーザーを分割して照射することで、被覆材を必要とせず ミニマムダウンタイムを実現しました。

※ 現在当院では 光治療の取り扱いを終了し 顔全体のシミには基本的にルビーフラクショナルをお勧めしています。

シミの濃さによって治療法は変化します。

治療するシミの数によって治療法が異なってきますが、シミの色によっても治療法は少々異なってきます。

濃いシミと薄いシミのどちらが取れやすいでしょうか?

かなりの方が、薄いシミの方が取れやすいと思われていらっしゃるようですが、実際には逆なのです。

光は黒い方が吸収されやすい

濃いシミと薄いシミでは、薄いシミの方が早めに取れやすいと思われている方が非常に多いのです。

実際には、濃いシミの方が反応が出しやすいため、濃いシミの方から治療が進んでいきます。これは、使用する光,レーザーの波長にもよると思いますが、一般的に光はより黒いものへ吸収されやすいためです。白っぽいシミよりも 黒いシミの方が光は吸収されるため、それほど強い出力でなくても 反応を起こすことができます。

それに対して 薄いシミの場合には、周囲との差が乏しくなります。照射に伴う反応は少なくなるため、より高出力の照射が必要となります。

薄いシミは、少しずつ行う必要があります。

薄いシミの場合には、周囲の皮膚の色調と大きく異なるわけではありませんので、濃いシミよりも高出力で治療を行う必要が出てきます。

強すぎれば、火傷のリスクも出てきますので、反応を見ながら調整を行います。

一般的に 濃いシミや割とはっきり親しみの方が取りやすく 薄いしみの方が難しいのです。

特殊な”シミ”を理解する

ここまでは、いわゆるシミ「日光性色素斑,老人性色素斑」の治療法を書いてみました。

シミの個数や色合いによって治療法が少し変わることを理解していただければ幸いです。しかしながら、ほかの種類のシミが同時にある場合があります。

その代表的なものが、「肝斑」「後天性真皮メラノサイトーシス」です。

肝斑

今では、ドラッグストアなどで薬が売られるようになったり、CMなどでもよく見られるようになったため、有名になった感もある「肝斑」。

明らかな老人性色素斑でも 肝斑ではないかと心配されて来られる方もいらっしゃるぐらいです。

肝斑は 30~40代にかけて 主に両頬にもやっとした 輪郭が不明瞭な薄目のシミとして出てきます。ホルモンとの関係も示唆され、ピルの使用や 妊娠を契機に出てくることもあります。

また、日々のスキンケアの影響も強く 肝斑の出現部位がスキンケアの際に擦られやすい部位と一致するため、摩擦による慢性炎症に伴う色素沈着ではないか という意見もあります。

肝斑には通常のレーザー,光治療を行うわけにはいきません。

通常の照射では悪化させてしまう場合があるためです。そこで、メラニンの排出を促進させるように 特殊な照射方法(レーザートーニング,パルス幅を伸ばした光照射等)、さらにトラネキサム酸等の内服薬を並行して行ないます。

この際 内服薬が非常に重要な役目を担います。内服を前提に治療を進めていくことで、肝斑は改善されていきますが、怠ると場合によって悪化してしまうこともあるため、しっかりと服用を守るように心がける必要があります。

肝班があれば 肝班から治療します。

シミには種類があり、肝斑以外のしみも同時に存在している場合がほとんどです。その場合には治療する順番が非常に重要です。

まず肝斑の治療を進めていきます。 ある程度コントロールができた段階から、重なっている他のシミを治療していきます。

なぜなら、通常のシミの治療法は肝斑を悪化させてしまうためです。 すぐにシミを取り除くことができないため、少々歯がゆい気もするかもしれません。肝斑と重なっているシミは、肝班をコントロールして初めて治療を行うことができます。

もちろん 肝斑と重なっていないシミは 通常どおり治療を進めていくことができます。

後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)

後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)は、遅発性大田母斑とも呼ばれるアザの一種です。

主に両頬に1~3mm程の斑点が数箇所まとまって両頬に出現することが多いです。深い部位にあるため輪郭が多少ぼやけていて、ほかのシミよりも青や茶色など暗めの色をしています。メラニンを作る細胞「メラノサイト」様の細胞が 本来はいないはずの皮膚の奥「真皮層」でメラニンを作ってしまう状態です。

従来 ADMの治療は大変でした。

皮膚の奥でメラニンを作っていますので、光治療器やレーザートーニングでは残念ながら大きな効果を得ることは困難です。皮膚深くまで到達して治療するためには、通常、レーザーを使用するしかありません。

ADMは完全に治療することができることもわかっています。そのためレーザーで治療する価値が十分あります。深い部位にあるためレーザー治療を何度もしなければいけませんが、取り除くことが可能です。

通常レーザーによる治療は、3~6ヶ月毎に行うことが多いです。治療期間が場合により長期になることや、その度に3週間ほどガーゼなどで保護しなければいけません。

この点があるために社会生活に支障が出てしまうため、治療を躊躇してしまう方も多いのです。

また、両頬に出ることが多いことから 肝斑と混同されることも多く、また、重なって出ていることも珍しくありません。

肝斑と重なって出ている場合には、少々問題です。肝斑にはシミ取りレーザーを使用すると悪化します。それに対してADMはレーザーでなければ治療できません。この場合肝斑の治療を優先して行い、コントロールを行った上でADMの治療へと移っていく必要があります。どのような場合でも肝斑が存在する場合にはそのコントロールを優先する必要があるのです。

これらの点を改善させた治療法が、ルビーフラクショナルです。 

ルビーフラクショナルは、ダウンタイム1日 当日からメイク可能 回復が早いため毎月の治療ができます。

結果として治療期間の短縮につながるなど 社会生活への負担を軽減することで、治療へ敷居をだいぶ下げてきたことが大きな利点です。従来よりも治療を進めていきやすくなりました。

まとめ

シミの治療は、個数,濃さ、種類によってアプローチの仕方は異なります。もちろん生活スタイルによっても 選択する治療法は異なってくることでしょう。さらには、通常のレーザーの治療では、ガーゼなどの被覆材を貼る必要が出てきますから、これを許容できるかどうかも 大きな選択肢となります。

当院では、肌画像診断装置VISIAを用いて顔のシミを丹念に分析した上で シミの治療計画を立てていきます。定期的な検証を行い治療効果を判定していくことで、より効果的な美肌治療を提供していくことができると考えています。

当院のシミ治療に対する方針を 大まかにまとめてみました。参考となれば幸いです。