毛穴が詰まる本当の理由 Treatment for ACNE

異常角化による「フタ」とニキビの初期メカニズム

思春期のお子さんのニキビや大人ニキビに悩む方へ、「毛穴が詰まる本当の理由」を医学的に分かりやすく解説します。

ニキビは毛穴の詰まりから始まる皮膚のトラブルですが、単なる汚れや皮脂だけが原因ではありません。その背後には異常角化という肌細胞の変化があり、これが毛穴の中に「フタ」を作ってしまうのです。

本記事ではニキビ初期段階のメカニズム(異常角化・微小面皰・毛穴のつまり)を紐解き、正しいケアや受診のポイントを紹介します。

ニキビ全般の基礎知識については「ニキビ治療専門外来」ページも参考にしてください。

ニキビは毛穴の詰まりから始まる

ニキビの第一歩は毛穴が詰まることです。

毛穴の出口が塞がり皮脂が中に溜まることで、いわゆる白ニキビ・黒ニキビ(面皰〈めんぽう、コメド〉)ができます。

ニキビの原因は一つではなく、以下の4つの要因が複合的に関与します。

  • 過剰な皮脂の分泌(皮脂腺の活発化)
  • 毛包内の異常な角化(毛穴内部で角質細胞が過剰に増殖・蓄積)
  • アクネ菌(Cutibacterium acnes)の増殖(毛穴内での細菌繁殖)
  • 炎症反応(免疫による炎症が皮膚で起こる)

これらが絡み合ってニキビは発症しますが、中でも毛穴の詰まり(角栓の形成)こそが全ての始まりです

毛穴が塞がることで皮脂や菌がこもり、ニキビの“芯”が形づくられます。まずは、この毛穴を塞ぐ「フタ」の正体を見ていきましょう。

異常角化がもたらす「角栓」というフタ

毛穴の詰まりの直接の原因は、毛穴内部で形成される角栓と呼ばれる栓です。

角栓は皮脂と古い角質(角質細胞)が混ざり合って固まったものです。正常な肌では、毛穴内部の角質細胞は日々一枚ずつ剥がれ落ちて排出されます。

しかし異常角化が起こると、角質細胞が過剰に増えてうまく剥がれ落ちずに蓄積してしまいます。そこに皮脂が絡み、まるで毛穴にフタをするように角栓が形成されます。

角栓が毛穴の出口を塞ぐと、皮脂や汗の排出が滞り毛穴が内部から膨らみます。この状態が面皰(コメド)です。毛穴の蓋が透明なまま膨らめば白ニキビ(閉鎖面皰)に、蓋が開いて中の皮脂が空気に触れると酸化して黒ニキビ(開放面皰)になります。

いずれも初期段階のニキビで、まだ炎症は起きていません。

◆ポイント 

異常角化による角栓形成が「毛穴のフタ」となり、ニキビの種(芯)を作ります。汚れが毛穴に詰まっているわけではなく、皮膚自体が作り出した角質の栓なのです。

このフタを取り除かない限り、毛穴の中では皮脂や菌が溜まり続け、やがて炎症(赤ニキビ)へと進行してしまいます。

微小面皰:目に見えないニキビの芽

毛穴のフタである角栓は、最初は肉眼では見えないほど小さい段階から生まれます。この段階を微小面皰(びしょうめんぽう、マイクロコメド)と呼びます。

微小面皰はニキビの一番早い段階の病変で、いわば「ニキビの芽」です。この芽が成長すると白ニキビ・黒ニキビになり、さらに炎症を起こして赤ニキビ(丘疹・膿疱)へと発展します。

興味深いのは、ニキビができやすい人の肌では一見ニキビの無い場所にも微小面皰が潜んでいることです。研究では、肉眼では綺麗に見える皮膚を採取して分析すると、毛穴の中に小さな角栓構造(微小面皰)が多数見つかることが報告されています。

つまり、ニキビ肌では常に「ニキビ予備軍」が毛穴内に存在しているのです。

目に見えない段階からニキビは始まる

微小面皰の内部には、すでに皮脂や角質の塊だけでなくアクネ菌も存在します。

顕微鏡レベルでは、微小面皰の中に多数の細菌塊や菌が産生する酵素(リパーゼ)が確認されています。さらに毛穴周囲ではごく初期から炎症のシグナルも確認されており、ニキビは目に見えない段階から始まっていることが分かっています。

これが「毛穴が詰まる本当の理由」を理解する鍵であり、単に表面を洗うだけでは防ぎきれない理由でもあります。

◆ポイント

微小面皰という「見えないニキビの芽」が肌に潜んでおり、毛穴内部で角栓・皮脂・菌が密かに蓄積しています。ニキビは突然ポンとできるのではなく、下地となる準備段階があるのです。

この芽を早めにケアすることが、ニキビ悪化を防ぐポイントになります。

異常角化を引き起こす要因とは?

では、そもそもなぜ異常角化が起こり角栓ができてしまうのかを見てみましょう。毛穴の中で角質が過剰に蓄積する背景には、主に以下のような要因があります。

ホルモンバランスの変化(特にアンドロゲン)

思春期にニキビが増える最大の理由がこれです。

男女ともに皮脂腺が男性ホルモンの刺激を受け活発化します。その際に毛穴周囲の角化細胞も増殖を促され、毛穴の壁が分厚く角質過多になります。

さらに皮脂量が急増すると皮膚表面のリノール酸が減少し、毛穴内部の角質細胞の粘着性が高まるとも言われます。

このように成長期のホルモン変化は、皮脂と角質の双方に影響して毛穴詰まりを招きます。

皮脂の質的変化と炎症物質

皮脂の組成にも注目しましょう。思春期や大人ニキビの肌では、皮脂中の遊離脂肪酸(オレイン酸やサピエン酸など)の割合が変化します。

このうちサピエン酸オレイン酸は、毛穴の角化細胞に作用して炎症性サイトカイン(IL-1αなど)を放出させ、角化を促進することが報告されています。

つまり、皮脂そのものが角栓づまりを悪化させる炎症反応を引き起こすのです。

また皮脂中の遊離脂肪酸が増えると角質細胞同士の結びつきが強まり、剥がれにくくなることも分かっています。

アクネ菌(C. acnes)の存在

アクネ菌は本来誰の肌にもいる常在菌ですが、毛穴が塞がり皮脂が溜まると大量繁殖します。増殖したC. acnesは炎症誘導物質(例えばIL-1β)を放出させたり、肌の免疫を刺激してさらなる角化異常を誘発します。

さらに近年の研究では、C. acnesが作るバイオフィルム(菌の膜状コロニー)が角質細胞を互いに糊付けして角栓形成を助長する可能性も指摘されています。こうした菌の影響で毛穴のフタがより強固になり、ニキビの始動が加速します。

遺伝的要因や肌質

ニキビ体質には遺伝的な傾向もあります。

家族に重度のニキビ経験者がいる場合、毛包の角化傾向が強かったり皮脂腺の反応性が高かったりすることがあります。

また、オイリー肌の人は乾燥肌の人に比べて毛穴内部に皮脂が潤滑油となり角質が滞留しやすいため、相対的に角栓ができやすい傾向があります。

逆に乾燥が強すぎると角質のターンオーバーが乱れて詰まりを起こすこともあり、肌状態のアンバランスが角栓形成につながります。


こうした要因が重なり、毛穴の中で「角質細胞が増えすぎる」+「うまく剥がれ落ちない」状態、すなわち異常角化が起きてしまいます。その結果として角栓が形成され、ニキビの第一段階がスタートするのです。

早期ケアの重要性皮膚科でできること

ニキビは初期の毛穴詰まりの段階で対処するのが理想です。

毛穴のフタ(角栓)を放置すると、そこに皮脂や菌が蓄積して炎症を招き、赤く腫れたニキビや化膿したニキビへと進行しやすくなります。

逆に、微小面皰〜白ニキビの段階で角栓を取り除いたり皮脂分泌をコントロールしたりできれば、ニキビの悪化を防止できる可能性が高まります。

皮膚科でできる早期治療

皮膚科でできる主な早期治療には次のようなものがあります。早めの対処が被害を最小限度に抑えます。

角質を正常化する外用薬

医師が処方するレチノイド様作用外用薬(アダパレン)は、毛穴内部の角質の生まれ変わりを促進し、詰まりにくい毛穴環境に整える効果があります。いわば「毛穴の角栓予防薬」であり、微小面皰の段階から有効です。

毛穴の詰まりを取る処置

皮膚科では面皰圧出といって、白ニキビ・黒ニキビの角栓を専用の器具で押し出す処置を行うこともできます。

自己流でつぶすのとは異なり、清潔な環境で行うため炎症や色素沈着のリスクを抑えつつ毛穴のフタを除去できます。

過剰な皮脂・炎症を抑える治療

毛穴詰まりに伴う皮脂分泌亢進や軽い炎症には、過酸化ベンゾイル(BPO)外用薬や抗炎症作用のある外用薬が用いられます。BPOは毛穴内部で酸素を放出して菌を殺菌するとともに角質剥離を促す作用もあり、初期の詰まり改善に有用です。

また必要に応じて抗生剤の外用・内服で菌をコントロールし、炎症拡大を防ぎます。


このように、皮膚科ではニキビの初期段階から総合的なケアが可能です。

「まだ白ニキビだから…」「思春期だから様子を見よう」と放置せず、気になるニキビがあれば早めに専門家に相談しましょう。

特に繰り返すニキビや、思春期のお子さんのニキビが悪化している場合などは、早期に適切な治療を行うことでニキビ跡(瘢痕)の予防にもつながります。


仙台のソララクリニックでは、通常の保険診療では困難な重度のニキビに対して、各種レーザー等を使用した複合治療を行っております。一般皮膚科での診療で十分なコントロールが得られなかった場合には、当院をご検討いただければと思います。

当院のニキビ治療全般については、ニキビ治療専門外来ページを参照下さい。

よくある質問 FAQ

ニキビ治療に関するよくある質問をまとめました。
参考になれば幸いです。

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ニキビの直接の原因は毛穴内部で起こる角栓詰まりであり、必ずしも汚れの蓄積ではありません。確かに皮脂や汚れを落とさず不衛生にしていると悪化しますが、きちんと洗顔していてもニキビができるのは珍しくありません。

思春期ニキビの多くは、ホルモンの影響で皮脂分泌と角質の異常が起こる内的な要因によるものです。洗顔は大事ですが、それだけでニキビを完全に防げるわけではない点に注意しましょう。

自分で押し出すのはおすすめできません。

確かに白ニキビ(閉じたコメド)や黒ニキビ(開いたコメド)は中身を出せば一時的に平らになります。しかし指や爪でつぶすと肌を傷つけて炎症を悪化させたり、色素沈着やニキビ跡の原因になります。

また、押し出しても毛穴の奥に根が残り再発することも多いです。ニキビの芯を取りたい場合は、皮膚科で行っている面皰圧出(めんぽうあっしゅつ)という清潔な処置を受ける方が安全です。

ご自宅では無理に触らず、洗顔と保湿で清潔に保ちながら治療を併用しましょう。

基本的なメカニズムは共通しており、どちらも毛穴のつまり(角栓)から始まります。ただし誘因には違いがあります。

思春期ニキビはホルモン急増による皮脂過剰・毛穴角化が主な原因で、額や鼻など皮脂腺の多い部分にできやすい特徴があります。

一方、大人ニキビ(20代以降)はホルモンバランスの乱れに加え、ストレスや睡眠不足、乾燥、メイクなど生活習慣や環境要因が重なって発生します。場所も口周りや顎などにできやすい傾向があります。

いずれの場合も毛穴の中で起きる異常が根本にありますが、その異常を引き起こす背景が年代で多少異なると考えると良いでしょう。

早めの受診をおすすめします。

特に赤く腫れる前の白ニキビ・黒ニキビの段階で適切な処置や薬を使えば、ひどくなるのを防げる可能性があります。「たかがニキビ」と放置すると、炎症が進んで痕が残るケースもあります。

市販薬でケアしても改善しない場合や、繰り返しできてしまう場合は皮膚科で相談しましょう。皮膚科では症状に合わせて毛穴のつまりを取る処置や詰まりにくくする薬(塗り薬)を出すことができます。

特に思春期のお子さんの場合、早期に治療することで心理的な負担も減らせます。無理に我慢せず、専門医に頼るのは賢明な選択です。

毎日のスキンケアで毛穴づまりを最小限に抑えることは可能です。

まず基本は適度な洗顔。皮脂が多いからといってゴシゴシ洗ったり一日に何度も洗顔するのは逆効果です。朝晩2回、たっぷりの泡で優しく洗い、しっかりすすぎましょう。
(重症ニキビの方は洗いすぎていることが多いです。)

次に保湿も重要です。乾燥すると角質が硬くなり剥がれにくくなるため、洗顔後は脂性肌向けのさっぱりした保湿剤でも良いので水分を補給してください。
(重傷ニキビの方では保湿するとニキビができると思っている事が多いですが、間違いです。)

また、ノンコメドジェニック(non-comedogenic)と表示されたコスメを選ぶのも有効です。これは「コメド(面皰)をできにくくする処方」の製品です。

更に言えば、週に1〜2回程度(適度な範囲で)市販の角質ケア(酵素洗顔やスクラブ剤)を取り入れると毛穴の出口の古い角質を除去でき、詰まり予防に役立ちます。

ただし重症ニキビの方の多くは、角質ケアをやりすぎている傾向が非常に高いです。やりすぎは逆にニキビを悪化させます。一度立ち止まる勇気が必要です。

ある程度は予防に役立ちます。

食生活では、皮脂分泌やホルモンに影響を与える高糖質・高脂肪な食事を控え、バランスの良い食事を心がけましょう。

チョコレートや揚げ物を食べた翌日にニキビが増える…と感じる人もいますが、これはこれらの食品が直接毛穴を詰まらせるわけではなく、皮脂の質や量に影響している可能性があります(高GI食品や乳製品がニキビを悪化させたとの報告もあります)。

一方、睡眠やストレスも見逃せません。睡眠不足や強いストレスはホルモンバランスを乱し、皮脂分泌や肌のターンオーバーを悪化させます。

規則正しい生活と十分な睡眠は肌の新陳代謝を整え、結果的に毛穴詰まりの予防につながります。また適度な運動で血行を良くすることも肌の調子を整える助けとなります。

完全に防ぐことは難しくとも、健康的な生活習慣はニキビの「なりにくい肌」作りに寄与すると言えるでしょう。

はい、一部の化粧品は原因になりえます。

厚塗りのファンデーションや油分の多いクリームは毛穴を塞ぎ、皮脂と混ざり合って角栓を形成しやすくします。

実際、コメドジェニックな成分(面皰を形成しやすい成分)を含む化粧品は「化粧品性ざ瘡」と呼ばれるニキビの原因になることがあります。

ただし近年はノンコメドジェニック処方のファンデーションや日焼け止めも増えており、それらを選べばリスクを下げられます。

メイクをする場合は、帰宅後になるべく早めに丁寧なクレンジングで落とし、肌にメイクが残らないようにしましょう。また厚塗りより薄付きで肌負担の少ないメイクを心がけ、時には肌を休ませるノーメイクデーを作るのも大切です。

※ 注意 ノーメイクデーは、「化粧を休む」という意味であり、所謂肌断食のような保湿もしない基礎化粧もしないという意味ではありません。保湿は十分に行うべきです。

監修者情報(医師紹介)

監修医師 佐藤雅樹(仙台 ソララクリニック院長)

監修医師:佐藤 雅樹 (さとう まさき)

ソララクリニック 院長

専門分野:美容皮膚科

2000年 順天堂大学医学部卒。順天堂大学医学部形成外科入局。 大学医学部付属病院等を経て、都内美容皮膚科クリニックにてレーザー治療の研鑽を積む。2011年3月 ソララクリニック開院 院長就任。2022年 医療法人 松柴会 理事長就任。日本美容皮膚科学会 日本形成外科学会 日本抗加齢医学会 日本レーザー医学会 点滴療法研究会 日本医療毛髪再生研究会他所属。 
様々な医療レーザー機器に精通し、2011年ルビーフラクショナル搭載機器を日本初導入。各種エネルギーベースの医療機器を併用する複合治療に積極的に取り組む.

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参考文献

当ページを作成するにあたり参考にした文献を掲載します。

ご参考になれば幸いです。

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原題: Inflammatory events are involved in acne lesion initiation.

出典: J. Invest. Dermatol. 121(1):20-27 (2003).

DOI: 10.1046/j.1523-1747.2003.12321.x

要約: ニキビの最も初期の病変である微小面皰において、毛包上皮の過剰増殖とともに周囲に炎症細胞(CD4+T細胞やマクロファージ)が増加していることを発見した研究。

臨床的に病変がないように見える毛包でも微小な炎症反応が起きており、従来考えられていた「毛穴の詰まりが起こってから炎症」の順序ではなく、炎症が非常に早期から関与していることを示しています。

原題: Modeling acne in vitro.

出典:J. Invest. Dermatol. 106(1):176-182 (1996).

DOI: 10.1111/1523-1747.ep12329907

要約: 試験管内でヒト毛包漏斗部を培養するモデルにおいて、IL-1α(インターロイキン1アルファ)を添加すると毛包漏斗部が著明な過角化を起こし、コメドと類似した状態になることを示した研究。

この効果はIL-1受容体拮抗剤により抑制でき、毛包自体もIL-1αを産生し得ることが示唆されました。さらに13-cisレチノイン酸(イソトレチノイン)の添加で細胞増殖が低下し角化が正常化する所見も報告され、IL-1が毛穴の過角化(角栓形成)の誘因となりうることを裏付けています。

原題: Expanding the microcomedone theory and acne therapeutics: Propionibacterium acnes biofilm produces biological glue that holds corneocytes together to form plug.

出典: J. Am. Acad. Dermatol. 57(4):722-724 (2007).

DOI: 10.1016/j.jaad.2007.05.013

要約: アクネ菌(現Cutibacterium acnes)が形成するバイオフィルム(菌体膜)が、生物学的な接着剤のように角質細胞同士を貼り付けて角栓(プラグ)を形成させるという仮説を提唱した報告。

従来の「角質の過剥離による詰まり」モデルを拡張し、菌の関与する新たな面皰形成メカニズムを示唆しています。これはニキビ治療において、抗菌作用だけでなくバイオフィルム対策の重要性を示唆するものでもあります。

原題: High bacterial colonization and lipase activity in microcomedones.

出典: Exp. Dermatol. 29(2):168-176 (2020).

DOI: 10.1111/exd.14069

要約: 肉眼では見えない微小面皰を皮膚表面から採取し詳細解析した研究

微小面皰内部は脂質に富んだ内容物と角質細胞の殻で構成された嚢状構造を示し、その中に多数のP. acnes菌体と高いリパーゼ(脂肪分解酵素)活性が検出されました。

採取直後の微小面皰でも酵素活性が保持されていたことから、目に見えない段階でも毛穴内部では菌が繁殖し皮脂を分解していることが明らかになりました。

つまり微小面皰は既に炎症の火種を内包していると考えられ、初期段階での対処の重要性を支持する所見です。

原題: The primary role of sebum in the pathophysiology of acne vulgaris and its therapeutic relevance in acne management.

出典: J. Dermatolog. Treat. 35(1):2296855 (2024).

DOI: 10.1080/09546634.2023.2296855

要約: 皮脂分泌とその組成変化こそがニキビ病態の中心的役割を担うという視点から、治療戦略への示唆を述べた総説。

【皮脂腺から分泌される皮脂の増加・質的変化 → 毛包の角質異常や炎症 → ニキビ発症】という因果関係を強調し、皮脂産生の抑制や皮脂成分の正常化がニキビ治療の鍵であると論じています。

実際に新規治療として皮脂産生を減らす外用薬(例えば男性ホルモン受容体をブロックする製剤)の有効性にも触れ、「皮脂=悪者」ではなく「皮脂を制御する」アプローチの重要性を提起しています。

原題: Association of different cell types and inflammation in early acne vulgaris.

出典:Front. Immunol. 15:1275269 (2024).

DOI: 10.3389/fimmu.2024.1275269

要約: ニキビ初期の炎症過程に関与する細胞種(免疫細胞)の役割を総合的にレビューした論文。

ニキビは初期段階から炎症が中心的役割を果たす疾患であり、微小面皰〜面皰の段階で既に自然免疫系と適応免疫系の細胞が協調して応答していることが解説されています。

例えば、毛包周囲に好中球やマクロファージ、T細胞が集積し始めるタイミングが非常に早いこと、C. acnesに対する免疫応答が炎症の引き金となることなどが述べられています。

初期炎症を標的とした新たな治療の可能性にも言及し、「ニキビ=毛穴の感染症」から「ニキビ=炎症性疾患」へという現代的理解を裏付ける内容です。

原題: Microcomedones in non-lesional acne prone skin: New orientations on comedogenesis and its prevention.

出典: J. Eur. Acad. Dermatol. Venereol. 34(2):357-364 (2020).

DOI: 10.1111/jdv.15926

要約: ニキビ好発患者の一見正常な皮膚から微小面皰を検出・追跡した観察研究

皮膚表面をシリコンテープで繰り返し剥離して微小面皰を採取し分析したところ、角化マーカー(ケラチンK75/K79)や皮脂分泌の指標が明らかになりました。

さらに、局所治療によって微小面皰の数(密度)を減少させると臨床的なニキビ病変数も有意に減少し、その効果が長期(48週間)持続することを示しています。

【微小面皰指数の低下=ニキビ新生の抑制】という相関が得られたことで、微小面皰を継続的に抑えるケアがニキビ再発予防につながる可能性が示唆されました。

これは「ニキビの芽」を監視・管理する新しい予防概念につながる発見です。

原題: Understanding innate immunity and inflammation in acne (Global Alliance to Improve Outcomes in Acne).

出典: J. Eur. Acad. Dermatol. Venereol. 29(Suppl 5):3-11 (2015).

DOI: 10.1111/jdv.13190

要約: 世界の専門家グループ(Global Alliance)によるニキビ治療ガイドラインの一部で、ニキビにおける自然免疫と炎症に焦点を当てた総説です。

従来の毛穴詰まり・菌増殖だけでなく、皮膚の生来の免疫応答がニキビ発症に重要な役割を果たすことを強調しています。

例えば、毛包の角化を促すIL-1や炎症性サイトカインの関与、TLR(トール様受容体)を介した皮膚の防御反応などについて言及され、初期段階からの抗炎症的アプローチの必要性が示唆されています。

この総説は、その後のニキビ治療においてベースにある微小炎症を軽減する戦略(例:レチノイドによる角質正常化+抗炎症、BPOによる殺菌+抗炎症)の重要性を裏付ける理論的根拠となりました。

原題:The Role of Skin Immune System in Acne.

出典: J. Clin. Med. 11(6):1579 (2022).

DOI: 10.3390/jcm11061579

要約: 皮膚科学と免疫学の観点から、ニキビ発症における皮膚免疫システムの関与を詳細にレビューした論文です。

近年の知見として、ニキビ病変にはすべて何らかの炎症が伴っていること、毛包の開口部閉塞(角栓形成)自体も炎症誘導の一部であることが述べられています。

また環境要因(エクスポソーム)が皮脂腺や免疫に影響してニキビを悪化させるメカニズムや、皮膚常在菌と免疫の相互作用(例えばC. acnesに対するTLR2経路の活性化)が解説されています。

ニキビ=慢性炎症性皮膚疾患」であるとの位置付けを裏付け、総合的な治療には抗菌・抗角化だけでなく抗炎症・免疫調節も重要であることを示唆しています。

原題: The role of microcomedones in acne: Moving from a description to treatment target?.

出典: J. Dtsch. Dermatol. Ges. 22(1):9-16 (2024).

DOI: 10.1111/ddg.15272

要約: ニキビの極初期病変である微小面皰(microcomedone)に注目し、それを治療の主要ターゲットとすべきだと論じた最新レビューです。

微小面皰は従来「ニキビの前段階」として記述されるのみでしたが、本稿では「微小面皰を抑制・除去することがニキビ予防・治療の鍵になる」と提唱しています。

具体的には、レチノイド剤や過酸化ベンゾイルによる面皰形成抑制効果、物理的デバイスやピーリングによる角栓除去の有用性などに触れ、毛穴の詰まり始め(微小面皰段階)への介入がその後の炎症性ニキビを減少させるエビデンスを整理しています。

今後のニキビ治療は見えている症状だけでなく、見えない毛穴内部の変化にまでアプローチする必要性を説いています。